先頃TVで、映画化された「ボーン・コレクター」が放映(ちなみに映画の方は駄作)されていたが、その原作者であるジェフリー・ディーヴァーの最新作が「青い虚空」だ。たしか、9月初旬刊行と案内されていたのが、なぜか11月にずれこんだものだ。二ケ月待つかたちになったが、さすがにジェフリー・ディーヴァー、面白いミステリに仕上がっている。ただし、お馴染みのリンカーン・ライムのシリーズではなく、ハッカーの世界を舞台に、追う者追われる者の知恵比べを描いている。
自らのホームページで護身術について書いている女性が何者かに殺される。捜査の結果、ハッカーの存在が浮かび上がってきた。コンピュータ犯罪課はそのハッカーに対抗するために服役中のハッカー、ワイアット・ジレットの協力を要請する。そしてジレットの協力もあって、<フェイト>と名乗るハッカーの存在が浮かび上がってきた。<フェイト>の正体を追う警察であったが、<フェイト>は次の獲物に狙いを定めていた。
当然クライマックスは、フェイトとジレットの対決になると思わせておいて、予想外の展開が待っている。<フェイト>に協力する謎の人物<ショーン>の正体も意表をついている。日常的にメールを使い、こんなホームページを作成していても、それとハッカーの世界がまったく別物であることを痛感する。最新のDNA技術を題材にした小説を読んでも、虚実の境目は、実際に正しいかどうかはともかく、それなりに見当をつけて読んでいるのだが、このハッキングの世界ではその虚実の見当すらはっきりしない。そのためか、二人のハッカーの騙し合いも、なんだかすっきりしない印象が残る。ディーヴァーらしい作品だが、いつもの切れ味がないと言えば良いだろう。また、本編では、ジレットと別れた妻の関係がどうなるかも興味の対象ではあるが、ジェフリー・ディーヴァーは男女のことは下手ですね、ホント。
ところで今回紹介するセリフは、物語の本筋とは関係ないが、患者の確認を丁寧におこなう看護婦の言葉だ。
「必ず再確認。私の父は大工だったの。いつも言ってたわ。『測るのは二度、切るのは一度』って」
| 書名 | 青い虚空 |
| 作者 | ジェフリー・ディーヴァー |
| 翻訳 | 土屋晃 |
| 出版社 | 文藝春秋社 |
| ISBNコード | 4-16-766110-1 |