本職はジャーナリストというジョン・コラピントの小説第一作「著者略歴」です。「ヒッチコックの最高傑作に比肩するスリラー」というふれこみは、いくらなんでも誉めすぎだと思うけれど、なかなかユニークな作品ではある。
キャル・カニングハムは作家志望とはいうものの、原稿を書くための努力らしきこともせずに、女遊びのほうが忙しい。ところが、ルームメートの法学生スチュワートがひそかに小説を書いていることを知り、留守中にその原稿を盗み見てしまう。なんとそれはキャル自身をモデルにした小説だった。しかし、スチュワートはその原稿を公表する前に交通事故でなくなり、キャルはその原稿を自分の作品と偽って発表し、一躍文壇の寵児となり、成功をおさめる。だが、盗作の事実を知る一人の女がキャルのまえに現れることによって・・・。
盗作をした人物が主人公だから、当然脅迫者とどのように対峙するかが、物語の焦点となる。そして、おおかたの読者が予想する誘惑にキャルもかられることになるのだが、ここからが作者コラピントの腕の見せどころとなる。なかなか着想豊かだし、おもしろいアイデアだと感心するのだが、最後はそうとう先を急いだ展開で、強引な点が気にかかる。平均点以上には間違いないが、一押しとは言い難い。
ところで、残念ながら作品のなかで気のきいたセリフは登場しなかったが、わたしのような根っからのアップルファン(この感想もわたしにとって四台目のMac、iBookで書いている)にはうれしいジョーク(?)が登場してくる。キャルを強請る女レスは、スチュワートが原稿を書いていたノートパソコンを持っているのだが、それに関するネタだ。
彼女はエデンの園に忍び入った蛇だ。しかし、りんご(アップル)を食べるようにそそのかすのではなく、恐ろしいことが詰まった果実、つまり、一口でもかじろうものなら、たちまちぼくを奈落の底に突き落とすアップルのパワーブックを携えてやってきのた。
パワーブックだなんて、スチュワートは学生のくせに贅沢なパソコンを持っていたのですね、羨ましい。
| 書名 | 著者略歴 |
| 作者 | ジョン・コラピント |
| 翻訳 | 横山啓明 |
| 出版社 | 早川書房 |
| ISBNコード | 4-15-208403-0 |