ふむ、このブラッド・メルツァーの「大統領法律顧問」は難しいなぁ、評価が。図書館で借りてきたのであまり気にならないが、自腹で2800円出していたら、損をしたと思うだろう。つまり、ありていに言えば物足りないのだ。デビュー作の「最高裁調査官」は文庫本での出版だったが、いつの間にかハード・カバーに昇格している。でも、わたしだったら次回作はまた文庫本へ格下げですね。
大統領の法律顧問のオフィスに務めるマイケル・ギャリックはなんと大統領の娘ノラとデートをすることになる。シークレット・サービスをまいて出かけたゲイ・バーでマイケルは彼の上司、大統領法律顧問であるエドガー・サイモンの姿を見つける。サイモンのあとをつけた二人はサイモンが何者かに大金を渡しているのを目撃する。が、この出来事を相談したオフィスの同僚が殺される。FBIも捜査に乗り出すなか、マイケル自身も容疑者として疑われる。しかし大統領は二期目の選挙戦の最中で、ノラをこの事件に巻き込むわけにはいかない。そんなジレンマの中で、マイケルは自らの潔白を証明し、真相をつきとめることができるか・・・。
こんな具合で、舞台はなかなか魅力的な設定であるし、出だしは快調なのだが、中盤からいやに中だるみするのですね。マイケル一人があれやこれや疑心暗鬼になって思い悩むだけで、事件の進展が遅い。グズグズしているうちにいつの間にかクライマックスになっているとの印象がある。結末も何だがすっきりしない。物足りないないという所以です。
文句ばかり書いては失礼だから、良いところも紹介しておこう。「最高裁調査官」でもそうだったように、マイケル、ノラの若い恋人同士の会話は生きがいい。また、知的障害者である父親とマイケルの交流のシーンは涙ものだ。また、モンローがケネディに会うときに使ったという秘密の通路など、ホワイトハウスの細かな様子も興味深いものがある。ホワイトハウスについてはこんな逸話が出てくる。
ホワイトハウスの内部は、暖房、換気、冷房設備によって、ふつうより空気圧が高めに調節してある。その理由はだたひとつ。万が一、生物兵器や神経ガスの攻撃をかけられた場合、有毒な空気を外へ押し出して、大統領を救うためだ。当然、スタッフのあいだでは、だからこそホワイトハウスはもっともプレッシャーの高い職場なのだ、という冗談が定着している。
| 書名 | 大統領法律顧問 |
| 作者 | ブラッド・メルツァー |
| 翻訳 | 中原裕子 |
| 出版社 | 早川書房 |
| ISBNコード | 4-15-208392-1 |