破壊天使


のっけから何ですが、最近は文庫本も高いなあ。このロバート・クレイスの「破壊天使」は上下巻二冊の文庫本なのだが、レジで2000円以上を要求されてびっくりしてしまった。一冊300ページあまりなのだが、この厚さで税込みで1000円を超えるとは。同じ講談社で、ほぼ同じ厚さのジャン・バークの「骨」は700円以下なのだが、ここらの本の値段の仕組みはわれわれ読者にとって不透明ですね。

その爆弾は出動した爆発物処理班が作業しているさなかに爆発し、一人の隊員が犠牲となった。捜査にあたるのはロサンゼルス市警のキャロル・スターキー刑事。彼女自身、かつて爆発物処理班に属し、爆発事故に遭遇、九死に一生をえたという経歴の持ち主だった。心身ともにその事故の傷跡が癒えないスターキー刑事だったが、その捜査の結果、ミスター・レッドと名乗る爆弾魔の存在が浮かび上がってきた。そして、FBIまで捜査にのりだしてくるのだが、この事件にはもう一つの裏があった。そのことに、スターキー刑事が気づいたとき・・・。

映画やミステリをジェットコースターになぞらえる表現は最近では当たり前になってしまい、本書の紹介にもそんな言葉が使われているが、たしかに物語は導入部からテンポよく進む。が、それ以上に、スターキー刑事とミスター・レッドとの単純な対決という構図ではなく、事件にもう一つ仕掛けを用意してある点が成功している。インターネットのチャットを利用したミスター・レッドとの駆け引きなど最新技術も盛り込みながら、緊迫感あるクライマックスまで読み応えのある一冊となっている。

この本のもう一つのテーマは、スターキー刑事が過去の爆発事故のトラウマをどうふっきれるかという点にあるのだが、前半はかなり破滅型でまわりで一緒に仕事をする方としてはつきあいにくい相手でしょうね。わたしなら敬遠します。そんな具合だから、周囲と衝突するシーンはあっても、ユーモアのある会話はあまり登場しないのだが、唯一の例外がこれから紹介するものだ。爆発物を処理するロボットを調整している隊員とスターキーの会話。

「このいまいましい機械が、どうしても右に曲がっちまうんだ。真っすぐに進ませようとするたびに、こん畜生は右にずれていっちまう。どこが悪いのか見当がつくかい?」
「共和党員なのよ」

それに作者がMacファンなのかどうか判らないが、FBIに協力するハッカーは”真っ青なパワーマック”を使っているし、ミスター・レッドはiBook(一世代前のシェル型)を持ち歩いている。ミスター・レッドがスターキーの自宅に忍び込むシーンでこんな表現がある。

ジョンはDOSマシンとマッキントッシュの両方を用意してきたが、それでもスターキーがDOSマシンを使っていると知るとがっかりした。だらしない家の様子と同じで、彼女の評価を下げる材料だ。

ここだけは、わたしもマック・ユーザーの一人として犯人の気持ちが良く理解できましたね。


書名 破壊天使
作者 ロバート・クレイス
翻訳 村上和久
出版社 講談社
ISBNコード 4-06-273473-7
4-06-273474-5