女性検死官といえばパトリシア・コーンウェルのケイ・スカーペッタがあまりに有名だが、最近もう一人、ジェシカ・コランなる検死官もいて最近ではなかなかの活躍だ。作者はロバート・ウォーカーで、最新作は「ハートのクイーン」。
実は正確にはケイ・スカーペッタは検屍官と表記されており、ジェシカ・コランは検死官と表記されている。実際に検査するのは屍(しかばね)だから、表記としては検屍官というのが正しいと思うのだが、漢字表記について講談社と扶桑社で考え方が違うのでしょうか。それとも、後発の扶桑社が少し区別をしたかったからでしょうか。
この「ハートのクイーン」ではニューオリンズを舞台にゲイをねらった殺人事件が続発する。なぜか心臓を抜き取られ、あとにはレースで編んだハートのクイーンが置かれていた、というもので血生臭いことおびただしい。この犯人が取り出した心臓を何に使っていたかというと、これまた仰天なのだが、これを書くのはルール違反だからやめておこうか。実はこのシリーズの第一作めは被害者から血を抜き取るという事件で、その犯人マティサックは逮捕されるものの、以来、主人公コランの宿敵という構図になっている。そして、前作の最後でマティサックが脱獄したことになっている。というわけで、最新作ではハートのクイーン殺人事件だけでなく、マティサックと対決に決着をつけることになる。
米国のミステリーを読んでいると操作の手順の妥当性について大変に神経質で、ミランダ告知(例の黙秘権があるというやつと、弁護士を呼ぶ権利があるというやつ)がつとに有名だ。が、ここに登場する刑事アレックス・シンスボウは「そ・・・そんなこと言って脅迫したってむだよ。あたしだって黙秘権があるんだから」
「ここではそんな権利は通用しない! みんな、トイレの水と一緒に流れていったんだ! さっさと吐かんか!」と、まあ強面でのぞんでいる。
ただし、この種の猟奇殺人のたどり着くさきとして、ついに心霊により捜査をする人物まで準主役として登場してくる。この捜査官と刑事の対立など盛りだくさん。だからというわけではないだろうが、前三作ではジェシカ・コランに毎回新しい恋のお相手が登場するのだが、今回はそこまで手が回らなかったようだ。それでも、こんなてんこ盛りを最後まで読ませる豪腕を作者は発揮しているが。サイコにはサイコといってしまえばそれまでだが、超能力まででてくると、ミステリーというよりホラーだろう、と言いたくなる。 作者のロバート・ウォーカーにはこれ以上、超能力に肩入れしてほしくないなあ。
| 書名 | ハートのクイーン(上・下) |
| 作者 | ロバート・ウォーカー |
| 翻訳 | 瓜生知寿子 |
| 出版社 | 扶桑社 |
| ISBNコード | 4-594-02813-6 4-594-02814-4 |