爆殺魔


リサ・マークルンドの「爆殺魔」はスウェーデン産のミステリだ。スウェーデンのミステリというと、かのマルティン・ベック・シリーズを思い出すけれど、たいそう珍しい感じがする。本書はそのスウェーデンで推理作家協会賞(ポロニ賞と言うらしい、初耳だ)を受賞したというふれこみで紹介されている。

2004年の夏季オリンピックをひかえたストックホルムで、オリンピック競技場が何者かによって爆破された。しかも、同時に爆殺されたのがオリンピック組織委員会委員長とあって、メディアは騒然となる。オリンピック妨害のテロではないかとの憶測が流れるなか、クヴェルスプレッセン紙の女性記者であるアニカ・ベングツソンは個人的な怨恨のせんで事件を追う。そこへ第二の爆殺事件が発生し、またもオリンピック競技場とその工事関係者が被害にあったことからアニカの旗色は悪くなる。しかし、アニカの取材から被害者の意外な素顔を明らかになっていったとき、アニカ自身が標的として狙われることになるのだった・・・。

意識して選んでいるわけではないのだが、女性作家による女性主人公のミステリが多い。ついでに翻訳者も女性というパターンが目につく。それもひとつの時代の流れなのだろう。しかし本編はミステリという意味ではそれほど成功しているとは思えない。謎解きという意味では、犯人のほうから勝手に姿を現すかたちになっているし、肩すかしをくったような気がする。むしろ、女性上司でもあるアニカが職場の男性との軋轢、あるいは夫との関係で悩む姿に多くのページをさいているし、また犯行の動機にも職場での処遇が関係しているなど、作者の関心の方向はそちらにある。ただ、物語のところどころで犯人のものと思われる手記が紹介されているのだが、この手記に意外な仕掛けが用意されており、その点は褒めて良いと思う。

今回はその手記で紹介される言葉を引用しておきましょう。

悪意は悪意で太るのだ。それ以外のものでは満足しないのだ。


書名 爆殺魔
作者 リサ・マークルンド
翻訳 柳沢由実子
出版社 講談社
ISBNコード 4-06-273503-2