アイルランドといえば、先のサッカーW杯でのアイルランドの驚異的な粘りがとても印象に残っているが、そのアイルランドの首都ダブリンを舞台にしたミステリの登場である。作者ポール・カースンはダブリン在住の医師とのことだが、「氷の刃」はその知識を活かした医学物のミステリだ。
ダブリンの公園の一角で女子高校生が刺殺体で発見される。特捜班のジム・クラーク警視らは捜査の結果、一人の麻薬中毒患者を容疑者として検挙する。しかし、その被害者が米国から招へいされた著名な心臓外科医の娘であったことから事件は政治的な色彩をおびてきた。一方、その心臓外科医が勤める病院では、白血球がなくなるという顆粒球減少症の患者が続けて発生していた。これに疑問を持った血液疾患専門医フランク・クランシーが患者たちの病歴を調査し、ある共通点が存在することに気がついていた。やがて、この二つの事件の裏にある企みがあることが浮かび上がってくるのだった・・・。
このように一見無関係の二つの事件を平行して描きながら、やがて二つの事件の関係が読者に明からにされるという手法は珍しいものではないが、そつなくまとめているといった印象が強い。どんな秘密が解き明かされるのか興味を持ちながら読み進んだが、意外に単純な構造でもう一工夫あってもよかったと思う。ジム・クラーク警視というキャラクターも面白い過去の経歴を用意しながら、充分活かされていない。及第点はあげられるけれど、物足りなさも残るといったところだろうか。
そのジム・クラーク警視は過去にテロの標的になり、片足を失っているのだが、その事件の犯人に関するくだりで、こんなことをいう。
「担当捜査班が有力容疑者たち、つまりわたしが死ぬことで得をする可能性が高い連中を検討した。そのリストにじっくり目を通すのに四時間かかった」
この警視、アイルランド人なのにワインばかり飲んでいるのがちょっと不満です。やはりアイリッシュ・ウィスキーじゃなくちゃあね。
| 書名 | 氷の刃 |
| 作者 | ポール・カースン |
| 翻訳 | 真野明裕 |
| 出版社 | 二見書房 |
| ISBNコード | 4-576-02101-X |