ジャン・バークの「骨」はMWA最優秀長編賞受賞というふれこみの一作だ。新聞記者のアイリーン・ケリーを主人公にしたシリーズ物としては七作目ということだが、読んだのは今回が初めてである。いままでは扶桑社から何作か出版されているようだ。

被害者の遺体を発掘するために、連続殺人事件の犯人ニック・パリッシュを同行しシエラ・ネバダ山中に入った捜査隊。はたしてパリッシュの証言通りに遺体は発見される。さらに、パリッシュはほかの遺体があることをほのめかすのだが、それは巧妙に仕組まれた罠だった。捜査隊に同行した新聞記者のアイリーン・ケリーは孤立無援のなかでパリッシュの魔手から逃れ九死に一生をえる。しかし、それから半年後、行方のしれなかったパリッシュが再びアイリーンの前に姿をあらわす・・・。

前半はシエラ・ネバダ山中でのサバイバル・ゲームといった冒険小説の雰囲気を持っているし、後半はアイリーンをつけ狙うパリッシュとの対決を描いたサスペンス小説と、それぞれの楽しみ方ができ、一気に読ませるのはさすがMWA最優秀長編賞といって良いだろう。ただし、どちらかと言うと後半の部分が弱いように感じる。犯人パリッシュの狙いがはっきりしないこともあって、主人公との真っ向から対決といった構図になっていないのが物足りないからだろうか。

むしろ、アイリーンをはじめとしてシエラ・ネバダ山中で助かった人々が、自分が助かったことに罪悪感を持ち、トラウマとなっている点などを丹念に描いており、著者の関心のありようをうかがわせ興味深い。

ところで、本作では人間の死体を捜索する犬が重要な役どころを担っているが、それに関する解説を紹介しておこう。

「人間はだれでも特有のにおいを発散している。一卵性双生児は例外かもしれないが、われわれの体臭は自分だけのものだ。このにおいは体外に放出されている。生きている人間からは、毎分四万個もの割合で、ラフトと称する古くなった皮膚細胞が剥がれ落ちている。このラフトがバクテリアを保持していて、固有のガスを発散させているんだ」

そうか、そういうことなのですね。我々はラフトをばらまきながら生きているわけだ。とは言え、最近ではデオドラント効果をうたった商品も多く、あまり過敏なのもどうかと思うのだが。


書名 骨(上・下)
作者 ジャン・バーク
翻訳 渋谷比佐子
出版社 講談社
ISBNコード 4-06-273471-0
4-06-273477-X