子どもが事件の重要な目撃者で、その事実を知った犯人から目撃者である子どもをいかに守るかという物語は、映画やミステリではお馴染みの設定である。そこに、特異な手口による連続放火殺人事件をからめたのがリドリー・ピアスンの「炎を記憶」である。
閃光とともに火災が発生、極度の高温と燃焼速度のあまりの速さに全ての証拠が焼き尽くされるという放火殺人事件が起きる。しかも、火災調査官へ送られてきた奇妙なメッセージ。はたして、同じ手口で二人目の被害者が発生する。既知の爆発物では説明のつかない新しい手口に消防局や警察の捜査も行き詰まる。そんなおり、継父に虐待されている少年ベンは、手に火傷をおった怪しい男の車のなかで奇妙な物を発見するが・・・。
孤独な少年ベンと彼を助ける女占い師エミリーの関係、主人公ボールトの家庭内の問題などで、物語に肉付けをしているものの、なんといっても物語の中心はこの放火の手口にあって、それをいかに解明し、犯人を絞り込んでいくかが焦点と言える。その意味ではベンが犯人につかまって以降の展開も多少強引で、盛り上がりに欠けるだろう。物語に子どもを持ち込んだのが余計で、むしろ連続放火事件だけで押したほうが良かっただろう。
ところで、犯人が使ったと思われる梯子の跡から犯人を絞り込むさいのボールトと鑑識課のバーニー・ロフグリンとの会話。
「つまり、梯子に乗ってた人間の体重を当てられるって言うのか?」
「推定だ」ロフグリンがぴしゃりと言った。「あまえは当てるのかもしれんが、おれは推定するんだ。言っておくがな、ルー、おれたちは測量し、テストし、模擬実験を行い、分析し、吟味する。当てるだと? おれが何をやって給料もらってると思ってるんだ?」
このロフグリンにもっと活躍を場を与えたら面白かっただろうと残念。
なお、この物語の舞台はシアトルでありまして、主人公が野球を見に行ってイチローがヒットを打つシーンでもあればと期待したいところですが、残念ながら本作は97年に書かれた作品ですから、そんなシーンはありません。
| 書名 | 炎の記憶 |
| 作者 | リドリー・ピアスン |
| 翻訳 | 橋本夕子 |
| 出版社 | 角川書店 |
| ISBNコード | 4-04-214903-0 |