警告


パトリシア・コーンウェルの検屍官ケイ・スカーペッタを主人公とするシリーズは最近では年末に新刊が発売されることが多い。例年だと、帰省の列車の中で読む本の定番になったいたのだが、今年は発刊とともに買って読んだ。題名は「警告」。

フランスを出発し、リッチモンド港に立ち寄った船のコンテナーから腐乱死体が発見される。そして現場には謎のメッセージも残されていた。事件の解決のためスカーペッタはフランスにまで出向くことになるのだが・・・。
正直言えば、この事件のほうはかなり安直な仕上がりだ。前作でコーンウェルはスカーペッタの伴侶ともいうべきFBI心理分析官ベントン・ウェズリーに非業の最期を与えるという驚愕の展開を用意していた。「警告」でもウェズリーの死から立ち直ろうとするスカーペッタやおなじみの登場人物、刑事マリーノや姪のルーシーの姿が丁寧に描かれている。さらにはスカーペッタやマリーノと敵対する新しい警察副署長の存在など、ミステリーというより人間ドラマに焦点をあてている。

ところで姪のルーシーはATF(アルコール・たばこ・火器局)のエージェントをしている。以前は同じ捜査関係の職についているといっても、コンピューター・システムをつくりあげたりと、支援部門にいたのに、最近では第一線の捜査を担当している。「警告」でもおとり捜査を展開し、犯人達との銃撃戦にも巻き込まれることになる。ATFの捜査官で、将来スカーペッタといい仲になりそうな(すでにいい仲か?)ジェイ・タリーがルーシーを評していう。

「ある意味で、ルーシーを気の毒に思いましたよ。彼女がいるところでは、必ずあなたのうわさがでるので。あなたと関係なく、ルーシー自身もすばらしい才能をもっているのに」
「私にはあの子のできることの、十分の一もできないわ」
「だれだってそうですよ」
「今度のことが彼女とどう関係あるの?」
「あなたという存在のために、ルーシーはイカロスのように、太陽の近くを飛ばずにはいられないのだと思います。神話のように、空から落ちないといいのですが」

なかなか鋭い見方だ。スカーペッタとルーシーの愛情と葛藤、その関係の変化はこのシリーズを最初から読んでいるファンにとっては一つの楽しみだ。夏に出版されたコーンウェルの新シリーズ二作目「サザンクロス」は散々な出来だった。コーンウェルが書いていなければとうてい最後まで読む気にはならなかっただろう。いっそのこと、ルーシーを主人公にした新シリーズを書いたらいいのにね。

最後に、これだけ人気のシリーズになっても文庫本で発行する講談社の姿勢には拍手をおくりたい。


書名 警告
作者 パトリシア・コーンウェル
翻訳 相原真理子
出版社 講談社
ISBNコード 4-06-264736-2