殺しの四重奏
ヴァル・マクダーミドの「殺しの四重奏」を読む。CWAゴールド・ダガー賞受賞の前作「殺しの儀式」に続いて、心理分析官トニー・ヒルと女性警部キャロル・ジョーダンが登場する。
前作では、読者にひょっとしてこいつが真犯人ではと思わせる巧みな伏線が印象に残った。今回は一転して、元オリンピック選手にしてTV界の大スターが犯人であると、タネは最初から読者に明かされている。そんな訳だから、その大スターをいかに追いつめていくかが、話の中心となっている。
新設されたプロファイリング・チームの演習として十代の少女達の行方不明事件を取り上げる。そこで一人の新人女性捜査官が大スターであるジャッコ・ヴァンスとの関連に気づくのが発端なのだが、一方でプロファイリング・チームと警察との不信感、女性上司であるジョーダンとその部下達との軋轢も丹念に書き込まれている。最近はやりのサイコ・ミステリーだが、この種のミステリーのなかで、この作者は抜きんでているように思う。
ただ結局この「殺しの四重奏」は物語の前半であって、本当の結末は次回作に持ち越されそうなエンディングだ。どうもこういうのは後味が悪くていけない。
ところで、一点腑に落ちなくて、ひっかかるところがあるのだ。
「なかなかいい。だが、ちょっとずれているね。いちばん単純な理論を採用すべきだという”オッカムのかみそり”の原則を支持する者としては、もっと直接的な理論を取るな。借金だ」そう言って、トニーはスクリーンに目を戻した。
プロファイリング・チームの演習時のヒルのセリフなのだが、このオッカムのかみそりの原則って、いったい何だろう? (後日、このネタ判りました。十四世紀の神学者オッカムのウィリアムの唱えた原理で「通常、他のすべての条件が同じなら、もっとも単純な解決法が正しい解決法である」というものだそうだ)
| 書名 | 殺しの四重奏 |
| 作者 | ジョン・マクダーミド |
| 翻訳 | 森沢麻里 |
| 出版社 | 集英社 |
| ISBNコード | 4-08-760307-5 |