スコッチに涙を託して


原題は「A DRINK BEFORE THE WAR」だから、戦いの前の一杯ぐらいの意だろう。それを「スコッチに涙を託して」とは随分と甘ったるいタイトルにしたものだ。まあ、嫌いではないけれどね。
デニス・レヘインという人の書いたハードボイルド小説で、パトリック・ケンジー、アンジェラ・ジェナーロという男女の私立探偵コンビの活躍を描いた作品だ。

「彼らは選挙で選ばれた人間だ。彼らが真実をすべて明らかにする日は、売春婦がただで寝る日さ」

とは、主人公パトリックのセリフ。二人の上院議員から、重要書類を盗んで失踪した掃除婦を探してほしいという依頼が舞い込んだのだが、その話に裏があるのではと思った二人の会話の中に出てくる。無論、とんでもない事件に発展するのだが、政治家が本当の事を言わないのは洋の東西を問わない話らしい。
 主人公パトリックは父親に虐待された経験を持ち、一方のアンジェラは暴力亭主と別れられずにいる。そしてお互いに好意以上の感情を抱いているという設定だ。昔から男女の探偵コンビのお話はたくさんあるけれど、最近は背景がひねってある、素直じゃないね。でもこの小説の登場人部はやたらと軽口をたたく傾向があって、その点では伝統的はハードボイルド小説である。

「親父はトッド・アベニューのボーンズで飲んでいた。そこでした飲まなかった。よくいっていたよ『バーを浮気するようなやつは女にも劣る』って」

 なんてセリフもあって酒好きは思わずニヤリとしたくなる。でも、これは女の人には怒られそうなセリフだなあ。


書名 スコッチに涙を託して
作者 デニス・レヘイン
翻訳 鎌田三平
出版社 角川書店
ISBNコード 4-04-279101-8