鐵は金の王哉
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 かなり以前から鉄鋼関係者の間で、「鐵は金の王哉」という言葉が言われるているそうである。むろんこれは鉄の旧字体である「鐵」の漢字の構成を見て言った言葉である
 さらに新字体の「鉄」の字は「金を失う」と書くから縁起が悪いということでかどうか知らないが、我が国の最大の鉄鋼メーカーの「新日鉄」は「新日鐵」と表記する。ちなみに「新日鉄」と表記するとイヤがるという話しを聞いたことがある。
 今回は別に漢字の話をしようというのではない。
 私は、仕事がら鉄とのつきあいは深い[(社)日本鉄鋼協会会員だったりもする]が、「鐵は金の王哉」という言葉は、まさにそう思うことである。
 鐵の優れている点はいろいろある。まず第1に、資源量が豊富であるということである。地殻中の構成元素で最も量が多いのが鉄(Fe)である。
 次にすばらしいと思うのが、鉄鉱石を製錬して金属鉄を取り出すのに使用する炭素(コークス)が、最重要の合金元素として作用するのである。
 通常、金属は、純粋な状態ではあまり使用に十分な性能は発揮せず、添加元素を加えて所定の性能に調整して合金として使用されることが多いが、鉄の場合、還元剤として使用する炭素がそのまま最も重要な添加元素として作用し、しかもそれだけで十分な性能を発揮するのである。むろんステンレス鋼などのいわゆる特殊鋼の例外はあるが、使用されている鉄鋼材料の大半は、炭素鋼である。
 そして、この炭素鋼が多く使用されるということが、第3の利点、リサイクルの容易さを生むわけである。
 資源が有限だと言うことが問題になりだした近年、このリサイクル性の問題はとても重要な事である。
 よく、アルミもリサイクル性がよいと評されるが、それは誤解である。アルミは、炭素鋼とちがって、使用目的によって合金元素の種類が違うのである。たとえばアルミ缶は、フタと胴で材質が異なっている。よって、これを混ぜてリサイクルするのは困難なのである。
 つまり、炭素鋼の場合は炭素の濃度が違うだけで、同じ炭素という元素が入っているだけで、しかも製鋼プロセスには炭素量を調整する過程が含まれるので、極端に言えば、そのまま、鉱石から鉄を取り出すプロセスにリサイクルのためのスクラップ材を投入できるのである。  ところが近年、この炭素鋼のリサイクルのために、やっかいな問題が出てきている。その原因は自動車にある。どういうことかというと、最近の自動車は大量の電線が使われているのが問題なのである。
 電線は通常、銅が使われているが、この銅がやっかいものである。というのは、現在の製鋼プロセス「高炉−転炉」方では、元素と酸素の結合力(酸素親和力)の違いを利用して鉄を残すようにしているのだが、銅と鉄は似たような酸素親和力を持っているために、銅の混入した鉄スクラップをこのプロセスに戻した場合、銅を除去出来ないのである。リサイクルを繰り返すほどに鉄鋼材料に銅が蓄積されていくということである。
 むろん銅が混入しても特性に影響がなければそれでもいいのだが、銅が混じると炭素鋼は腐食しやすくなるという問題が出る。
 このため、鉄スクラップに銅が混じらないように対策しなければならないのである。
 しかし、銅の元が電線であるから、からみついて、なかなか分離できない。そこで、発想を変えて、鉄に混じっても問題のない金属で電線を作っては?と思うのは当然のことであろう。では、そんな都合の良い金属があるのかろいうことになるのだが、それが有るのである。
 それが、アルミで電線を作ることである。アルミは、鉄に比べてかなり酸素親和力が高く、転炉に鉄と一緒にスクラップとして入れても、酸素吹き込みでスラグに入ってしまう。さらにアルミは、脱酸剤として、意図的に転炉の中に加えることがあるくらいで、有害ではないことがわかるであろう。
 しかも、アルミは、同じ電気抵抗の電線にするには太くしなければならないが、それでも銅の電線よりは軽くなるはずで、そのため、高圧送電線としての使用実績もある。
 ということで、自動車の電線を全てアルミにしたら?と思うのだが、なにか問題でもあるのだろうか。
 今回はいつもと違って技術解説になってしまったが、まぁ、良いだろう。


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