〜Endless Waltz〜

  

恋が全部両思いだったら、誰も傷つかずに済むのに。 誰も争わずに済むのに。 誰も悲しまずに済むのに。 なんて考えたことはありませんか?? でも、そんなにうまくいかないのが恋というもの。 彼の場合も、その例にもれず・・・・・・ 「ふ〜。」 拓人(たくと)はベットに横になり軽く息を吐いた。 ここはイルムザーンにある空中庭園、 その庭園に存在する館の一室。 拓人の長くて短い旅の終着点だった。 実は拓人は元々この世界の住人ではない。ある日突然この世界に迷い込んでしまったのである。 そして拓人を元の世界に戻してくれるという「暁の女神様」に会うために、 三人+一匹(?)の仲間たちとここまで旅をしてきたのだった。 楽な旅ではなかった。 モンスターと戦ったり、危険な洞窟に潜ったり・・・・何度命の危険にさらされたことか。 でも、楽しいことも多かった。 苦労の末、魔宝を手に入れたときの達成感。どこかしら憎めないライバルたちとの戦い。 それに・・・・・・・・ 「やっぱり彼女たちがいてくれたから・・・・・」 拓人は天井を見上げ呟いた。 ここまで拓人を支え続けてくれた彼女たち。 彼女達とこれまで過ごした時間が、まるで昨日のことのように思い出される。 「そうや。ぎょうさん食べてもタダやからなあ。こんなオイシイとこ他にあらへん。」 いっつも元気で、食べることが何よりも大好きなアルザ。 ちょっと、いやかなり食費の面で苦労させられたが。 「…私は影の民。私がいると不幸が訪れますよ・・・。」 影の民という不思議な一族の楊雲。 自分の霊力(ちから)にコンプレックスを持っていたけど、 今なら少しは自分の霊力(ちから)を好きになってくれてるんじゃないかと思う。 「え〜と・・・それじゃ毛糸が足りなくなってきたので、巻き取るの手伝っていただけますか?」 自分の殻に閉じこもっていて、素直に人を信じられなくなっていたウェンディ。 そういえば、手袋を編んでもらったっけ。 アルザ、楊雲、ウェンディ、彼女達がいたからここまで来ることができた。 ただ・・・彼女達とも明日でお別れなんだよな。 俺は元の世界に帰りたくてここまで旅を続けてきた。 でも、これでいいのか?と迷っている自分がいる。 この世界を捨てて、彼女達と別れて、そこまでして帰るべき場所なのか?と。         ♪♪♪ コンコン・・・・・・ ドアをノックする音で、拓人は現実に引き戻された。 「あの・・・拓人さん。」 「あっ、その声はウェンディだね。待ってて、今開けるよ。」 ガチャ ドアが開いて、寝巻き姿のウェンディが入ってきた。 白い大きなシャツから伸びる足が目に眩しい。 「声、聞いただけでわかっちゃうんですか?」 「なにが?」 「その…私の声。」 「あ、そりゃここまで一緒に旅してきた仲間だしね。」 「仲間・…」 『仲間』という単語に声のトーンを落とすウェンディ、 しかし拓人はその微妙な違いにはちっとも気づいていなかった。 「で、どうしたの?なんか用?」 「あっ、えっと・・・・・はい。」 「まあ、中に入りなよ。」 拓人はウェンディを部屋の中へと誘った。 ウェンディもおずおずと部屋の中へと入ってくる。     ♪♪♪     「どうして…帰っちゃうんですか?」 「ちょ、ちょっとウェンディ!?」 拓人は急なウェンディの行動にびっくりした。 拓人の胸に体を預け、見上げてくるウェンディ、 その手は拓人の服を握り締めている。 「やっと…やっとすべてを信じられる人に出会えたのに… やっと…一生分の勇気を使ってみようと思ったのに…。」 「・・・・・・・・」 「私…人からこんな優しくしてもらった事って、今までなかった…。」 「ウェンディ…」 今まで押しとどめていた感情が破裂したかのように 思いの丈をぶつけてくるウェンディ。 その瞳(ひとみ)には涙が浮かんでいる。 でも、拓人にはただ聞いてやる事しかできなかった。 自分自身答えが出せないでいるというのに、何を言う事ができるのだろう。 「だから・・・拓人さんが他の人と一緒にいるときは… いつも悲しい気持ちになってた・・・。」 「でもそれは…同じパーティーのメンバーなんだから…」 「わかってます。仕方ないことだって…。」 「でも、拓人さんて、誰にでも優しいのかな…って。」 「そ、そんな事ない。」 「え・・・?」 「ウェンディだから…俺は優しくなれたんだと思う。」 「私…だから?」 拓人の言葉にはっとするウェンディ。 心の中に暖かい何かが広がっていくのがわかる。 そして、自分の中の想いを振り絞るようにして・・・・・ 「私も…」 「えっ?」 「私も、いつのまにか拓人さんのこと、目で追うようになって・・・・。 自分の気持ちに気がついたときにはもう…」 「ウェンディ・…」 「拓人さんのせいですからね。こんな気持ちになったの・…」 「・・・・・・・」 「さっき拓人さん、私のこと『仲間』って言ったけど…」 「・・・・・・・・」 「私…ただの仲間じゃイヤ。」 「ウェンディ・・・・・」 拓人の服を握り締めている手にぎゅっと力がこもる。 服を通してお互いの鼓動が聞こえてしまいそうなぐらいに近づいた二人。 拓人の瞳にウェンディの姿が、 ウェンディの瞳に拓人の姿が映る。 「拓人さん・・・・・・・・・」 ウェンディがそっと瞼(まぶた)を閉じる。 頬をほんのり桜色に染めて… ドキン!!! 一段と強く心臓がはねる。 (こ、これは・・・・・・も、もしや・・・・・・・) 鈍感の上に『超』がつくような拓人だが、 今の状況がわからないほど子供でもない。 ドキドキドキドキ・・・・・・・・・・・ もう心臓は早鐘のように鼓動(リズム)を刻んでいる。 (い、いいのか?で、でも俺はこの世界と別れを・… でもウェンディがここまでしてるのに何も…よ、よーし) しばらくの葛藤の後、ようやく決心を固め、 そっとウェンディの唇に自分の唇を重ね・・・・・     ♪♪♪ コンコン・… られなかった。 「拓人〜、うちやけど入ってもいい??」 「あ、ああ。」 ドアを開けて入ってきたアルザが見たものは、 真っ赤になって背を向けてる拓人とウェンディの姿だった。 「あれ、ウェンディやないか?どうしたん・・・・・・」 と、そこまで言って気がついたらしい。 何しろ、考えてる事はアルザも一緒だったのだから。 (「ウェンディ、あんたもしかして・…」 「え〜、アルザさんも拓人さんのこと・・・・・・なんですか??」) そっとウェンディに話しかけるアルザ。 どうやら想像どおりらしい。 「そ、それで、アルザは俺に何か??」 一人、何にも気づかない拓人はアルザに話しかける。 恥ずかしさが残ってるのか、流石に声はうわずっていたが。 このあたりが「鈍感の上に『超』がつく」などといわれたりする所以である。 「べ、別にたいしたことやないんやけど・…明日でお別れになるかもしれへんしな。」 流石にウェンディが見ている前で愛の告白、というわけにはいかないらしい。 「あ、ああ、そうだな。それで何か話があるんだろ?」 「そ、そうそう・・・・・・・・・そうや、拓人と別れる前に、パーッとやろうかな、と思って、ははは。」 そんなこと言うつもりはなかったのだが、 とっさの言い訳に食べることが出てくるところがアルザらしい。 「ほ、ほらギーフィーの肉を持ってきたんやで。」 そう言って、(普段から)持っていたギーフィーの肉を取り出す。 「そ、そう・・・・・でもそれだけじゃたりないな。 食堂に行って何か取ってくるよ。」 アルザの態度を変に思いながらも、ドアのノブに手をかけようとしたとき… コンコン・・・・ またもドアがノックされた。 拓人がドアを開けるるとそこには・・・・・    ♪♪♪ 「や、楊雲!?」 「・・・・夜分遅くに申し訳ありません。そ、その・・ちょっと拓人さんにお話が・・・・・」 ドアの向こうにいたのは楊雲だった。 もしかして・・・・・彼女も・・・・・・ 「は、話?じゃ、じゃあ部屋の中に入って待っていてくれるかな?ウェンディ達もいるから。」 「・・・えっ、そ、そのできれば二人きりのほうが・・・・・」 楊雲が真っ赤になってその言葉を紡いだときには、 拓人はもういなかった。 「・・・・・・・・・・・・・・・拓人さんの馬鹿・・・・」 「ふ〜、まさか三人とも尋ねてくるとはなぁ。 まあ、明日でお別れかもしれないし、話したい事ならいっぱいあるし、 それに…パーッとやるなら多いいほうがいいか。」 拓人は食堂で適当に食べ物をあさっていた。 この館、不思議な事にどんな食べ物でもそろっているのである。 (空に浮いているし、誰も住んでないってのに・・・・・ほんと、不思議なところだな。ここは。) 「こんなところでいいかな、っと」 適当に食べ物と飲み物(といっても調理しないでいいものは果物ばっかりだったが) を両手に抱え、拓人は自分の部屋へと戻っていった。 「ただいま〜・・・・・・・・・・っておい、何でおまえがここにいる?」 拓人の部屋には、新たに人が二人増えていた。 「なによっ、私がいちゃいけないって言うの?」 「すいません、ちょっとお話したいと思いまして。」 拓人になにかと突っかかってくるお姫様に、そのお付きの侍女さん。 レミットとアイリスである。 「い、いや、別に悪くはないけど。子供はもう寝る時間じゃないのか?」 「こ、子供扱いしないでよっ。私だってもう立派な…」 「はいはい、わかってるよ、お姫様。 そうだ、レミットとアイリスさんも一緒にバーっとやりませんか?」 「しょ、しょうがないわね。付き合ってあげてもいいわよ。」 「是非。ご一緒させていただきます。」 二人とも、ホントは二人っきりで話がしたかったので来たのだが… いかんせんそれを言い出せるような状態ではなかった。 「じゃあ、とりあえず空中庭園到着にかんぱ〜・・・・・」 ガンガン・・・・・・ またもやノックに邪魔される。どうも今日は間が悪いらしい。 「・・・・・・・・・・またかよ。・・・・はぁ、開いてるから入ってこいよ。」 ガチャ ノブのまわる音とともに、勢いよくドアが開いた。 「お〜い、拓人、どうだ、今夜は一緒に盃でも・・・・・ って、な、なぜ貴様らがここにいるんだっ!!」 ドアを開けて入ってきたのは、 自称『永遠のライバル』である魔族、カイルであった。 「それはこっちのセリフよ、バカイル!!!何であんたまでくるのよっ!!!」 カイルと仲が悪い・・らしい(ほんとはどうなのだろう?)レミットが早速つっかかる。 「うるさいぞ!!ガキンチョ!!俺はただ我がライバルとだな…」 「・・・・いつおまえのライバルになったんだ???? ふ〜、まあいいや。おまえも一緒にどうだ?」 「なんでこの俺様がこいつらと・・・・・…まあいい、今日は特別だしな。」 「じゃあ改めて・・・・・・かんぱーい!!!!」 「かんぱーい♪」 こうして暢気(のんき)な拓人と複雑な気持ちの五人+一人の宴(うたげ)が始まったのである。     ♪♪♪ 「やっぱりだなぁ。『友情よりも愛情』とか言う話があるが、 友情は大事だよな。ライバルとの戦いの後に芽生える友情…く〜っ!!やはり男はこうでないと。」 「おねえちゃ〜ん。ギーフィーの串焼き追加ね〜。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・ぱくぱく・・・・・・・・美味しい・・・・」 宴とはある意味不思議なものである。 最初は少し重かった雰囲気も、しばらくするとすっかりと軽くなっていた。 まあ、宴というよりはカイルが持ってきたお酒のせいかもしれないが。 「拓人〜、なにそんな隅っこでじっとしてるんや〜。」 周りの雰囲気に圧されて、隅っこでじっと肴をつまんでた拓人に、 後ろからアルザの腕がまわされる。 (おおっ、アルザの胸が背中に・…) 想わず頬が緩む拓人。 「うっ、酒くせぇ・・・アルザ〜、何で酒飲んでるんだよぉ。」 「結構うまかったで。」 「美味い不味いの話じゃないだろ〜。」 「まあいいじゃねえか、今夜ぐらいは。なあ。」 すっかり出来上がったカイルがフォローを入れる。 「事の元凶が言うんじゃねぇ!!!!!」 「それに、もうみんな飲んじまってるぞ。」 拓人が周りを見回すと・・・・・・・ 「きゃは、アイリス〜、このジュースおいしいね〜」 「ひ、姫様っ、それはお酒です〜」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・美味・・・」 「このバカイルが〜!!!!!」 拓人の叫びが響き渡る。 こうして、酒の魔力も加わってか、宴の席はさらに混沌としていくのだった・・・・・・・・・    ♪♪♪ 「なあなあ拓人、好きな娘っている?」 宴もたけなわになったころ、アルザが拓人に尋ねてきた。 当然、すっかり出来上がっている。 「ぶっ!!な、なんだよ。いきなりだなぁ。」 「ほらほら、ホントのこというてみ〜。」 拓人はそっとウェンディのほうを見る。 ウェンディと少しばかり視線が合った。 「・・・い、いるよ。」 少し照れた感じでこたえる拓人。 頬が赤いのは酒のせいだけではないようである。 「それで〜、誰なんや〜、拓人の好きな娘って。」 「そ、それは・・・・・・・」 急に沈黙が重くのしかかる。 みんな拓人の言葉の先が気になってしょうがないらしい。 まあ、一人は他とはちょっと気になり方が違かったが。 「・・・・・・・・・・・・ウ、ウェ・・」 「はっ!!ま、まさかウチというものがありながら別の女にっ!!」 「なんなんだっ!その『ウチというものがありながら』ってのはっ。」 「・・・・・・・ウチの初めてを奪ったくせに・・・・・・」 ぶっーーーーーーーー!! 拓人はおもわず飲んでたお酒を吹き出した。 「た、拓人さん…そ、そんな・…」 ウェンディが呆然とした顔で拓人を見つめる。 「ちょ、ちょっと待てウェンディ。ご、誤解だってば・…」 「ほ〜、どんな誤解なんだ???」 カイルが詰め寄って聞いてくる。どことなく殺気立っているような… 「だ〜か〜ら、初めてってのは・・・・・そ、その・・・キスのことで… それに、こっちが奪われたんだぞっ。」 必死に真実を伝える拓人であったが、いかんせん、酔っ払いが相手では…・ねぇ。 「拓人、男なら言い訳せずにだなぁ。」 「えーい、黙れ酔っ払い。レミット、おまえならわかってくれるよな。」 まったく話を聞かないカイルを無視し、拓人はレミットに助けを求めた。 「大人って不潔よ。ひっく・・・私だって拓人のこと・・・・なのに・・・拓人のばか〜!!!!ひっく」 (・・・・・・聞いちゃいねえ・…誰だレミットにまで酒を飲ませたのは・・はぁ) レミットも、すっかり酔っ払っていて、まったく役に立ってくれそうににない。 「じゃ、じゃあ楊雲。君なら…ぐぇぇぇ」 楊雲に助けを求めようとして彼女のほうを向いたとたん、 拓人は胸に激しい痛みを感じた。 「・・・・・・・・・・・拓人さんの・・・・馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿・・・・・」 楊雲のほうを見ると、なんと壁に向かって藁人形に釘を打ちつけている彼女の姿が… 「や、やめてくれぇ!!!!・・・・はあはあ・・・」 何とか楊雲から藁人形を取り上げた拓人。 (こうなったら・…最後の良心にかけるしか…) 「アイリスさんっ」 「そうですわ。キスぐらい・・・・・拓人さんも若い健康男子ですし…つい暴走してしまう事も・・」 「アイリスさん・…全然フォローになってないんですけど…」 「・・・・・ところで、拓人さん。一目惚れって信じます???」 「ひ、一目惚れですか???」 「そうです〜。どう思いますか??」 ずずっと近寄ってくるアイリス。その表情はいたって普通に・… (よ、酔ってる〜、素面(しらふ)に見えるのに・…) 「あ、あるんじゃないですかねぇ。」 アイリスの迫力に圧(お)され、思わず後ずさりながら答える拓人だった。 「そうですよね〜。一目惚れってありますよね。」 妙ににこにこしながらアイリスさんが頷く。 (まったく、どいつもこいつも・・・・・・あれ?ウェンディは?) ふと気がついて周りを見渡すとウェンディの姿がどこにもなかった。     ♪♪♪ 「拓人さんのバカ…信じてたのに・…」 ウェンディは庭に出て星空を眺めていた。 「あの時『好き』って言ってくれたけど…それは他の人たちが告白する前だったし・・ アルザさんとはキスしたって言うし、楊雲さんにはプレゼントしたって言ってたし…」 『ウェンディだから…俺は優しくなれたんだと思う。』 (拓人さんはそう言ってくれた。でも・・・・・信じられない。 信じたいのに…信じるのが怖い・・・・) ウェンディは空を見上げた。星の輝きがかすんで見える。 「やだ・・・・涙が・…」 「はあはあ・・・こんなところにいたんだ。」 「えっ?」 突然後ろから聞こえてきた声に振り向くと、 ウェンディを探し回っていたのだろう、肩で息をしている拓人がいた。 「探したよ。突然いなくなっちゃうから。」 「・・・・・アルザさんたちを放っておいていいんですか?」 つい嬉しさよりも嫉妬が勝(まさ)って、こんな言葉が口に出てしまう。 「だからキスの事なら誤解だって。」 「キスしたのは事実じゃないですか、それに、楊雲さんにはプレゼントしたって言うし… やっぱり『誰にでも優しい』んですよね。拓人さんは。」 (拓人さんの事、信じられないなんて…いやな娘だ。私・・) 頭ではわかっていても、感情が納得してくれない。 まして、やっと『信じる』勇気を手に入れたばかりのウェンディでは。 「やっぱり私は『ただの仲間』・・・・・」 「ウェンディ!!!!」 びくっ!! 拓人の声に思わず肩をすくめてしまう。 「確かにアルザとはキスしたよ。たとえ向こうからされたにしたって。 それに楊雲にプレゼントしたのも事実だ。でも、ホントに好きなのはウェンディなんだ。」 「・・・好きでもない人とキスするんですか?」 「うぐっ・・・・だからそれは俺が奪われたんだって。アルザや楊雲は好きだけど、 それは友達としての好きであって…だから・・その・・・・・なんというか・・こ、恋人としての好き っていうのは・・・・・」 しどろもどろになりながらも必死に説得する拓人。 「・・・・・・ぷっ、もうわかりました。拓人さんの一生懸命な姿見てたら・・ 信じて・・・いいんですよね。」 「あ、ああ。もちろんだよ。」 やっとウェンディに信じてもらえてほっと胸をなでおろす拓人だったが、 次の一言でまた心臓が跳ね上がってしまう。 「でも・・・・・まだ信じる勇気が…」 「えっ!?」 「・・・・信じる勇気が出る魔法、かけてくれませんか??」 「・・・・・??????」 何のことだかわからない拓人の目の前でウェンディはそっと瞼を閉じる。 「ウェンディ・・…」 すぐに理解したのか、ウェンディの肩をそっとつかむ拓人。 月明かりの下で、二人の影が一つに・… 「拓人〜、帰ってくるのが遅いわよぉ〜、ひっく。」 ぐきっ 後ろから急に首を締められて拓人の腰が悲鳴を上げた。 「うがががが・・・・・」 「まったく〜、つまみひとつ取ってくるのにいつまでかかっとるんや。」 拓人が振り向くとアルザとレミットがいる。 どうやら首を締めてきたはレミットのようである。 身長差のせいで、レミットの体重がもろに腰にかかったらしい。 「ア、アルザにレミット・・・・・・・!?」 「ほら、とっとともどるでぇ。」 「そーよ、プリンセスを待たせるなんて失礼よ、ひっく。」 そのまま問答無用で拓人を引きずっていくアルザ。 「ちょ、ちょっと、アルザ・・俺はウェンディと話が・…うがっ!!!!」 「なんやうるさいなぁ〜もう。これでも呑んどき。」 なにか言いたげな拓人の口に一升瓶が突っ込まれる。 「ふがふが〜(ウェンディ〜)」 「・・・・・・・・・・・・・・た、拓人さんの大バカ〜!!!! ・・・・・くすん。いいわ、私も飲んでやるんだからぁ〜!!!」 月明かりの下、ウェンディの叫びがむなしく木霊(こだま)するのだった。     ♪♪♪ 「拓人〜、もう朝よ〜。早く起きなさいってば〜。」 パタパタパタ・・・ 「拓人ってば〜、あれっ??」 次の日、拓人を起こしに来たフィリーが見たものは、 拓人の部屋せましと広がる泥酔した面々だった。     ♪♪♪ 「・・・・・・・・あの状態でよく帰ってこられたよなぁ。」 拓人はあのときの事を思い出して苦笑いした。 あのときの事はよく覚えてない。 かなりひどい二日酔いだったらしく、 覚えてる事といえば頭の痛みと、おぼろげに見た暁の女神様の姿ぐらいだろうか。 (まあ、そのおかげであんまり別れが辛くなかったのが救い…かな?) 後悔はもちろんある。 しっかりと自分で答えを出せなかったこと。 だが、「人を見る」という暁の女神様がこちらの世界に帰してくれたのだから、 これが拓人の本心だったのかもしれない。 そして・・・・もうひとつ。 ウェンディと別れてしまったことだ。 彼女と一緒にいられるなら帰れなくても・…そう思った事は一度ではない。 (でも・・・・終わっちまった事だな。) 拓人はベットに横たわり・…そのまま眠りへと落ちていった。 「・・・・・・さん。寝てるんですか?」 「ん・・・・・・?」 懐かしく、そしていとおしい声に呼びかけられ、拓人は瞼を上げた。 「・・・・・・ウェンディ!?どうして?」 「来ちゃいました。暁の女神様にお願いして。」 「だ、だって・…君は向こうの世界の人間で、も、もう帰れないかもしれないんだぞ。」 思わず口にしていた。 ウェンディにまた会えた、という喜びとともに、 なぜこんな事をしたんだ?という戸惑いが拓人の心を占める。 「・・・・・・拓人さんと、一緒にいたかったんです。 世界よりも、なによりも、あなたが一番大事だから。」 そう言ってにっこりと微笑むウェンディ。 (そう・・・・だよな。俺も・・・・何よりもウェンディの事が…) 「・・・だめ・・ですか???」 「そんな事ない、嬉しいよ。今日からはずっと一緒だ。」 「拓人さん・…私、とっても嬉しいです。」      ♪♪♪ 「それで・・・・まず最初にお願いがあるんですけど。」 「ん、なに???」 ウェンディのほうを向くと、そっと目を閉じたウェンディの顔があった。 「ウェ、ウェンディ・・…」 「あの・・・・その・・・・この前二度も邪魔されちゃいましたし・…」 「そ、そそそ、そう言えばそうだったね。じゃ、じゃあ・・」 「は、はい・・・」 (今度は大丈夫だよな?『三度目の正直』っていうし・・・・) また早鐘のように鼓動(リズム)を刻む心臓の音を聞きながら、 拓人はそっとウェンディの唇に・… ドンガラガッシャーン!!!!! 『二度ある事は三度ある』 「きゃぁ!!!」 「今度は何なんだー!!!!」 思わず叫んでしまう拓人。まあ、無理もない。 隣の部屋を見るとそこには・・・・・・ 「よ、よお。久しぶりだな。」 「元気やったか?拓人。」 「・・・・・・・お久しぶりです。拓人さん。」 「痛たたた・…バカイル、あんたのせいでこんな目に・・」 「姫様〜、重いです〜」 崩れた家具に埋もれた見覚えのある面々達が… 「カイルさんにアルザさん、楊雲さんに、レミットさん、アイリスさんまで・…」 「何でおまえ達まで来てるんだ!?」 せっかくのいいときを邪魔されたせいか、 ちょっと荒いしゃべり方になって拓人は尋ねた。 「ふっ、ライバルを追ってくるのは自然な事ではないか。」 「まだうちは諦めてないさかいな。それに、こっちの食いもんにも興味が・・」 「・・・・・・・・・わたしも・・・まだちゃんと想いを告げてませんでしたし…」 「わ、私は、べ、別にあんたを追ってきたわけじゃ…ただ遊び相手がいなくて暇だったからよっ。」 「私は姫様の侍女なので。・・・・でもちょっとは自分の…・」 「みなさん・・・・・」 「はあ・・・・まったくこいつらは・…」 拓人はおもいっきり疲れた様子で、 でも、どこか嬉しそうに呟いた。 まだまだ退屈とは無縁の日々がまってそうだ。 外では、これからの季節を象徴するかのような 暑い日差しが燦燦(さんさん)と街を照らしていた。                                 〜Fin〜


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