「カンパネルラ」が、この手の絵本にしては御好評をいただいたので小生調子にのって パロル舎に次の企画を持ちかける。題して「箱の本」

ヒトと箱が出会ってから、最後に恐い事になる、というプロットは、じつは10 年近く前(1993年頃)に考え出したものだ。当時、子育てとサボテン栽培に没頭し、 ろくに仕事もないダメイラストレーターには時間だけはあった。そんな中とにかく絵本が出したかった小生は、 売り込み用にいくつかのダミー本を作っている。そのほとんどが完全に大人を対象としたものであるのに対して、 この「箱の本」だけは我が子に向けて作ったのだ。本好きの3才児がたのしめて、しかも大人の鑑賞にも耐えられる ものとはどんなものか・・・そんなことを考え乍ら作ったのが上の写真の本。中身は太フェルトペンによる単純な スミ線画である。左ページに絵、右ページに縦書きで「はことであう」「はこにはいる」などの文がただ一行ずつ、 まん中に配置されている。
少なくともこの時点で我が子は「オモシロイ!」と喜んでくれた。そしてその本はその後彼の落書き帳となった。 彼なりのアレンジをしたのである。それは彼がこの内容に興味をもった証拠だと確信した。
然しその後に行った初個展を経て、小生はとあるくだらない大賞をとったりして、賞とりの魔力、 ざっくりとした大作の魅力にとりつかれて永い脇道に入り込んでしまい、無駄に月日は流れるのである。

九年の時を経て、やっとこの企画が日の目を見る事とあいなるわけである。デザインは「カンパ」 の時の北村武士さんにかわって、ムサ美建築科時代の同級生の工藤央氏(デザイン事務所『東京図鑑』主宰) にお願いした。1984年にイラストレーターの看板を掲げてからずっと仕事をまわして僕を助けてくれている恩人で、 自分の本を出す時には絶対彼に頼むと心の中で予定していたのである。勿論、北村さんに、 このとんでもない非礼をあらかじめお詫びしておいた事は言うまでもない。
最終的にタイトルが弱いということで、いくつか候補をあげ、「箱少年」に落ち着いた。「箱男」 をちょっと意識して。それから各見開きに「はことであう」など一行のみを横糸風に入れるはずであったところ、 それぞれに独立したエピソードを縦糸として加える事にした。これで大分本としての厚味が出たと思う。
2002年10月の個展「収束する平行線」にギリギリセーフ!当日の昼頃、なんとか見本版が何冊か届き、 後は印刷所からパロル舎に届き次第少しずつタクシーで持って来てもらうといった自転車操業でのりきった。 小生自身も地下鉄でなん十册か運ぶと言う良い経験をさせてもらった。なにせ出版記念、先行販売、サイン入りとDMに歌ってあるのだから、 間に合わなければ洒落にならないのである。

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