最近凝っている音楽
(01/03/31)

私のアトリエ(・・・というほどたいそうなものではないのですが)は傾斜地を利用してつくった半地下の物置の一角にあり、そこにパソコンやオーディオセットも置いてあります。ですから、パソコンをいじっている時は、音楽を聴きながらというケースがどうしても多くなります。


最近そこで圧倒的に聴いているのは、ジャズピアニスト木住野佳子さんのトリオ演奏です。とてもおしゃれな中にちょっとメランコリックな気分も漂っており、なかなかリラックスさせてくれる音楽です。かといって演奏は決して単純ではなく、ドラムスやベースとのスリリングなやりとりには、けっこう興奮もさせられます。一見さりげなさそうでありながら、おしゃれでブリリアントな演奏がたまらなく好きです。

中でも、スタンダードナンバーを木住野さん流にアレンジした“You Are So Beautiful”は最高に気に入っています。クラシックの出身で、ジャズはビル・エヴァンスの影響があったと聞いていますが、そこからから脱却し、今は彼女独自のスタイルを確立しているように思われます。


ところで、芸術の世界をアバンギャルドが席巻した時期がありました。絵画や彫刻、音楽の世界はもちろん、伝統的な書の世界にまで既成概念をうち破る新しい表現が次々に誕生し、私もまだ若くて、何でも精力的に吸収できた頃でしたから、そうした時代の空気にふれることが何よりの楽しみでもありました。

ジャズの世界でも、オーネット・コールマンやチャーリー・ミンガス・・・等々によってその前兆が現れ、すでにメーンストリームを歩んでいたマイルスやコルトレーンまでが一気にフリージャズに突き進んでいきました。


私にとって、コルトレーンは教祖的存在でしたが、晩年の止まるところを知らない変革の激しさには、いささか戸惑を覚えました。自爆への道を突き進んでいるような危うさも感じられ、この先どこへ行こうとしているんだろうと心配しているうちに、結局はその予感どおり、程なくして病気で逝ってしまいました。

コルトレーンの演奏では、完全なフリージャズに行き着くちょっと前ぐらいのライブ盤、“ビレッジ・バンガード・アゲイン”が最も気に入っています。いまでも彼の「最高の演奏は?」と聞かれれば、躊躇なくその演奏を挙げるだろうと思います。


それほど熱中していたにもかかわらず、最近はめったにそのCDを聴かなくなってしまいました。嗜好が変わったというよりは、きちんと向き合って聴くのが、少しつらくなったという方が当たっているかも知れません。というのも、若いときと違って、いまそれを聴くにはそれなりの気力と体力を必要とするからです。

ただし、だからと言って木住野さんの音楽を決してイージーなものと思っているわけではありません。例えてみれば、いま聴きたいのは気分的にマーラーではなく、ショパンなんだというようなことであって、優劣をつけるような話ではないだろうという気がします。

いずれにしても、ジャズからしばらく遠ざかっていたこの時期に、木住野さんの演奏に出合えたことは幸運でした。また、今度は少しゆとりをもってジャズを楽しんでみたいなあと思っています。


ようこそ
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