6月5日からちょうど一週間、稲城市立病院に入院していました。病名は帯状疱疹です。
入院の4〜5日前から、脇の下に擦れたような痛みがあり、軟膏を塗ったのですがいっこうに治まりません。それどころか、そのうち二の腕から胸にかけて痛みが広がってきました。初めは筋肉痛のような痛みでしたが、それがだんだんと神経の痛みに変わってきて、放っておけなくなってきました。
病院の知人に相談をしたところ、夜になって自宅に電話があり、ヘルペスの疑いもあるので、まず皮膚科にくるようにとの指示がありました。その時はヘルペスの知識もなく、生返事をしたのですが、夜中になると胸のあたりにポツポツと発疹が出始め、どうやら疑いは的中してしまったようです。
診断の結果は、予想どおりでした。その時主治医から、「売店で売っている雑誌に帯状疱疹のことが載っているので、検査の合間に読んでみたら・・・・」と勧められ早速読んでみました。
それによると、帯状疱疹は水疱瘡と同じウイルスによって引き起こされるものだそうです。子どものときに水疱瘡に罹ると、その時に病気を起こしたウイルスが、身体の奥深くに入り込み、神経の根本に潜伏します。それが何かのきっかけで目覚め、身体の表面に出てきて暴れだすのが帯状疱疹なのだそうです。
適切な治療をすれば必ず良くなる病気ですが、ほおっておくと、帯状疱疹後神経痛になると言われます。そうなると実にやっかいで、いつまでもしつっこい痛みに悩まされ、生活に支障をきたすことにもなるそうです。それは、炎症で破壊された神経の一部が、再生の過程で変成し、そのため神経の働きに変調が生じるからだと言われています。
検査の結果が分かった段階で、再度診察室に呼ばれました。「間違いなく帯状疱疹ですね。雑誌読みましたか?」「ハイ」「けっこう厄介な病気でしょう」「ハイ」「ですから入院して徹底的に治療しましょう」「ハイ」・・・・と言うわけで、即入院ということになってしまいました。
その日の午後2時に入院すると、すぐに点滴治療が始まりました。朝6時と午後2時は約1時間ずつ、夜は2本点滴をするので9時頃から約2時間、それが入院中ずっと続きました。痛みは入院の翌日と翌々日あたりがピークで、その時は痛みにタジタジでしたから、入院を勧めてくれた主治医に感謝したものです。
病院は3年前に建て替えられ、病室などもとても工夫されていています。例えば私の病室は4人部屋だったのですが、それぞれのベットの横に専用の窓が設けられているのです。病院の朝は早く、4時半頃には患者が目覚めはじめます。私もその頃になると毎朝そっとブラインドを開け、裏手のうっそうとした森が、朝日に少しずつ染まっていく様子を眺めながら、朝の点滴を待ちました。
こんなふうに書くとロマンチックなようですが、実は朝の目覚めのときが一番辛いのです。痛みでたまらなくなって起きだし、腕をいろいろと動かしてみて、一番楽なところで固定し、痛みが少しずつ沈静化していくのを待つと言うのが本当のところでした。ただその時に、刻々と変化する森の様子はとても慰めになりました。
私の場合は痛みがあっても、日柄がたてば回復しますが、同室の方たちは必ずしもそうではないのです。30歳のAさんは、腎臓の病気でもう3か月も入院しています。糖尿病に腎機能傷害を併発したBさんは、透析のためによその病院から転院してきて、すでに40日になろうとしています。退院が近かったのに、今週の初めにまた足にむくみが出はじめ、予定どおりの退院が難しくなってしまいました。最年長のCさんはペースメーカーの付け替えのための入院でした。5〜6年ごとに付け替えが必要で、今回が3回目だそうです。
こんなふうに、退院できても一生その病気とつき合っていかなければならない方ばかりです。ふだんは明るく、元気にしている強気のBさんも、時々弱気が顔をのぞかせることがあり、そんな時は励ましのコトバをかけようもなく、帯状疱疹ごときで入院していることが申しわけなくさえ思われました。
今もまだ時々ツーンと痛みが走りますが、それはそれで「あァ!神経が元気に訴えているんだ」と思えばさほど苦痛ではなく、むしろ一週間一緒だった同室のみなさんが、これからも病気と折り合いをつけて、いつまでも元気であって欲しいと祈らずにはいられません。