六三四(むさし)
(2000/10/29)
稲城の市民文化祭、今年の前夜祭公演は「六四三(むさし)」のコンサートでした。まだメジャーではないかもしれませんが、もうすぐブレークしそうな異色のロックグループです。なにが異色かと言うと、実は邦楽器を中心としたロックバンドだからです。しかも、それぞれの分野で実績のあるプレーヤーが集まって結成しているバンドで、海外公演などでも評判がいいそうです。
この日も、和太鼓、津軽三味線、尺八(横笛、能管も)の邦楽器とドラムス、ギター、ベース(六弦)、キーボードという編成でした。オーケストラと雅楽器やお経の唱名との組み合わせは現代音楽などでよく演奏されています。また、邦楽器と洋楽器とのコラボレーションも結構行われています。例えばジャズピアノと和太鼓・尺八というように・・・・。しかし、ロックバンドというのは初めてでしたから期待で一杯でした。
邦楽器と洋楽器をモザイクのように交互に演奏するだけなら簡単なのでしょうが、一つのバンドとしてヒュージョンすることが求められるわけですから、果たしてその辺がうまくできるんだろうか・・・・なんて勝手に心配もしたりしましたが、それは私の杞憂でしかありませんでした。
例えばリードギターがフュチャーされると、尺八もそれに負けじとうたうように融合し、和太鼓がパーカッションのように、しかしもっと力強くリズムを刻み、一瞬サンタナかと思わせるようなサウンドを作り出したりします。
しばらくそうした演奏が続いていたかと思うと、次の瞬間、和楽器が前面に押し出され、とたんい墨絵のような音が会場を満たしはじめます。ちょうど煙が充満していくように・・・・。そのフュージョンに続くコントラストはなかなかエキサイテングでした。
コンサートの途中で尺八の佐藤康夫さんが、興味ある話をしていました。
もともと尺八は、虚無僧がお経の代わりとして吹いていたもので、楽器として認められるようになったのは江戸時代頃だそうです。穴は5つで5音階しかなく、それに対し洋楽器は12音階ですから、尺八で西洋楽器とフュージョンするというのは至難の技のようです。「最近は7穴の尺八もありますが・・・・」とちらっと言っていましたが、それを克服するための工夫なのでしょうか。
津軽三味線そのものも最近ブレークしそうな気配です。今回の「六三四」の上妻(あがつま)宏光さん、林英哲さんと競演していた木下伸市さん、そして吉田良一郎・建一兄弟など・・・・。ジャズピアニストの山下洋輔さんが、「全国ツアーで、一番反応がいいのが青森の人」というような話をしていたことがありましたが、何となく分かるような気がします。木下さんも津軽三味線の魅力は「即興性、打楽器に近い奏法、そしてテンポの速さ」だと言っています。
私にとって津軽三味線と言えば、なんといっても先代高橋竹山ですが、最近の彼らの演奏は竹山さんとは対照的で、生活のにおいを少しも感じさせず、三味線をあたかもギターのように弾いています。それが若い人の共感を呼んでいるのかも知れません。
いずれにしても「六三四」はとても楽しめたロックコンサートでした。