東京電力のTEPCOセミナーで嶌信彦さんの話を聞いてきました。テーマは、「(日本人の)これから10年の生き方」。話の結論は、これまでのように「汗と涙と根性の生き方」を捨てて、イタリア人のように生きるべきだというものでした。1980年代、日本やドイツは大量生産、大量消費で世界に君臨しました。しかしそれは汗と涙と根性でのし上がったのであって、これからは単純にモノをつくるだけなら、どうあがいてみても賃金の安い中国(日本の20分の1の賃金)などにはかなわないだろう。だったらどうするか?そこで、イタリア式モノづくりとライフスタイルとなるわけです。
よくイタリア人は働かないといわれます。でも調べてみると、GNPでは世界で4〜5番目、1時間当たりの労働生産性でも4〜6番目(日本は11番目前後)の間で推移しているのだそうです。しかもイタリアの産業を支えている大部分は中小企業だというのですから、大企業優先の日本とは大分違います。
そう言われてみると、衣類や革製品、アクセサリーなどの高級ブランド品はもとより、建築や家具製品なども圧倒的にイタリア製が優位で、特に日本ではそれらを身につけることがステータスシンボルになっています。食に関してもあの誇り高いロンドンっ子の間でさえイタリア料理が幅を利かせていると言います。他にも、例えば車のアルハロメオ、フェラリー、ランボルギーニなど、個性にこだわって車を作っているのはイタリアだけでしょう。
こんなふうに、「ソフトと文化」をキーワードにしながら独自の道を歩んでいたら、いつの間にか世界の大国になっていたというのがイタリアだということでした。
イタリアを旅行をしたときの面白いエピソードも紹介してくれました。閉店間際にレストランに飛び込み、日本のことが頭にあって、「何でもいいからスパゲティを」と注文したのだそうです。そしたらウエーターに「何でメニューをじっくり見て注文しないのだ」と叱れてしまった。ワケを話すと、レストランというのは仲間と会話を楽しみながら、ゆっくりと食事をするところなんだ・・・・と少しも客を急かせる様子がない。もしこれが日本だったらと、そのライフスタイルの違いにショックを受けたというのです。ただしスパゲティを食べ終わったあと、しっかりとデザートまで注文させらということでした。
そんなふうですから、イタリアではスーパーやコンビニは流行らないということでした。なぜなら、会話のない買い物なんて考えられず、しかもそれを家に持ち帰ってたった一人で食べるような生活なんてとうてい容認できないからなのです。しかも、例えば自分の生き方を満足させるために100万円あれば足りるなら、なんでそれ以上ガンバって金儲ける必要があるのかというのが彼らの生き方だということでした。
これからの時代をリードするのは女性の感性だとも言っていました。日本でイタリアの感性を実現しているのは女性だからというのがその理由です。そして次のような具体例を挙げていました。
◇あるセールスマンの話によると、車を買いにきて旦那さんと奥さんとで意見が割れたときには、絶対に奥さんを支持する。そのほうが確実に売れるからだ。
◇国内にせよ海外にせよ、いま旅行をしているのは圧倒的に女性である。たまに男性がいても「ワシモ族」(奥さんが家にいないと大変だからワシも連れて行ってくれという男性)だけだ。
◇いま人気の、湯布院、津和野、奥飛騨、富良野などはすべて女性の感性で好まれている場所である。東京の歓楽街にしても、女性の好む場所は新宿歌舞伎町ではなく、代官山、恵比寿ガーデンプレース、お台場、青山などである。
ようするにこれからの時代、心がけるべきことは、女性に好かれる街づくり、店づくり、商品づくりでなければいけないということなのです。どうやら、我々男性陣には大分旗色の悪い時代になってきたようです。ですから、これからよほどガンバって女性的感性を磨がかないと、ますます時代に取り残されてしまうかも知れません。世の男性方、心してください。
最後に蔦さんは、イタリア的感性を次のように整理していました。
@歴史や文化があること
A居心地がいいこと
Bきれいで清潔であること
C楽しいこと
Dゆったりできること
今回のセミナーは対象が企業者でしたが、私はここ数年、仲間と「まちづくり」の勉強をしていますので、この5つのキーワードを聞いたとき、このことはそのまま「まちづくり」にも当てはまるなと感じました。日本人もそろそろ「汗と涙と根性」の生き方を止めて、本当の豊かさとは何かということを本気で考える時期にきているのではないでしょうか。