今年ももうあと10日あまり、この時期になるといつも、何とはなしに反省一色の気持にさせられます。そんな中でこの2年間ぐらいをみると、美術館を訪れる機会が多かったことは特筆すべきことかも知れません。一時まったくごぶさたでしたから・・・・。
まず、松崎町にある「伊豆の長八美術館」、ここは漆喰鏝絵で有名な入江長八の作品を納めている美術館です。道路から一段高い場所にあって、遠くから眺めると中央の円形ホールを中心に蝶が左右に大きく羽を広げたような白い建物はとても印象的です。古い街並みにあって、ここだけは異彩を放っていました。
設計したのは石山修武さんで、この建物で「吉田五十八賞」を受賞したということです。石山さんの著書「石山修武 考える、動く、建築が変わる」にこれを建てた時のエピソードが書かれていますが、それによるとこれは職人さんが自分たちでお金を出してつくった建築だそうです。ある日石山さんが現場に行ってみると玄関の一番大事なドームの天井にものすごい龍が彫ってある。石山さんは、龍と言えば唐獅子牡丹みたいになるから、当然「龍はイヤだ」と認めない。すると職人さんたちは「じゃあみんな荷物をまとめて帰る」と言いだし、結局妥協の産物として天女になったという話も紹介されています。
「今の僕だったら、あれは龍をやってもらえばよかったなあというところに来ているよ。」と石山さんは書いています。と言うのも、その後ネパールやプノンペンなど、アジアの様々な建築を手がけているうちに、建築と装飾という問題に突き当たった。それは例えば柱に急に龍がまといつくのを建築家として許すのか許さないのかといった問題だそうで、今なら許すだろうというのです。
この美術館は長八の作品を展示するために作ったものですから、とやかく言うのは筋違いかも知れませんが、鏝絵というのは本来建物を装飾する目的でつくられたもので、それを美術館という箱のなかに納めてしまうのはちょっともったいないような気がしました。なんだか鏝絵に元気がなくなっているように感じられたのです。むしろ「街全体が美術館」といった発想で、街を歩きながら、長八の鏝絵に出合えるような仕組みをつくったらもっとおもしろかったのではないしょうか。(松崎の街全体については、いずれHPの「街」のコーナーで取り上げてみたいと思っています。)
次は安藤忠雄さんの設計による、瀬戸内海・直島の「コンテンポラリーアートミュージアム」。これについては、すでにHPで紹介していますので、詳しくは述べませんが、直島を訪れると草間弥生(海岸の彫刻)、宮崎達男(家プロジェクト)、リチャード・ロング、ジェームス・タレル(家プロジェクト)、フランク・ステラ、安田侃、川俣正などの作品に出合うことができ、ちょっと興奮します。中でも、わざわざ美術館の方に車で案内していただいたジェームス・タレルの家プロジェクトの作品(作品というよりインスタレーションと呼ぶべきなのでしょうか)には久しぶりに芸術的感動を覚えました。
小布施の「おぶせミュージアム」についてもすでにHPに掲載ずみですが、とても良い美術館でした。地元出身の中島千波さんの絵が常設展示されていることはすでに話しましたが、私が訪れた時には、たまたまその代表作である「桜シリーズ」を都内の美術館に貸し出してあって、受付にいた年輩の男の方がそのことでとても恐縮していました。
残されていた絵の一つに、空間を一旦バラバラにし、それを再構成したような半具象の絵があり、私はむしろその作品に強く惹かれました。その斬新な作品に出合えたことにとても満足でした。そうとは知らない受付の男性は、帰りがけにもまた、「本当に申し訳なかった、東京に戻ったらぜひ桜の絵を見に行って下さい。」と入場券を下さいましたが、その恐縮ぶりに私の方こそ恐縮してしまいました。