バイオマス・エネルギー
(2000/11/27)

今森光彦さんの「萌木の国」は雑木林に住む人々の生活と木や生物たちの生きる様子がリアルに描かれていて、ちょっと考えさせられ、そしてホッとできるおすすめの一冊です。カメラマンの今森さんはこれまでも雑木林をテーマにいろいろな仕事をしてきましたが、写真だけでは飽き足りず、とうとう琵琶湖湖畔のマキノ町に2ヘクタールの雑木林を入手してしまったというのです。雑木林の中でできるだけ長い時間を過ごし、木々の生長を見とどけながら自分も命の輪のなかに入りたかった、そんな思いからそこでの一年間の体験を綴ったのが「萌木の国」です。

そんな雑木林の再生やそのための里山活動が話題になっています。日本じゅうの雑木林が今や瀕死の状態にあり、その利用の仕組みを再構築しないと、このままでは日本じゅうから里山が消えてしまうのではと心配されているからです。


都市計画の仕事をしている知人の峰岸さんから、ヨーロッパの「バイオマス」事情についての報告会があるからと誘いがあり、原宿にある峰岸さんの事務所まで聞きに行って来ました。

実は初めて聞くコトバなのでバイオマスっていったい何のことだろうと調べてみると、「生物エネルギー、主として植物を利用してエネルギーを生産することを指す。アルコール発酵や廃棄物のメタン利用など。」とありました。すでにヨーロッパではバイオマス発電もあるらしく、エネルギーや環境問題の分野ではかなり注目されている考え方のようです。

今回の報告者は神奈川県自然環境保全センターの中川重年さんでした。以前に稲城市のキャンプ村にピザ窯の材料を寄贈してくれた方で、当時の名刺には神奈川県森林研究所・専門研究員とありました。


そんなわけですから、中川さんの話はエネルギー問題を正面からとりあげるというよりは、バイオマスの考え方を活用して森や雑木林を再生する仕組みを身近なところで作り上げられないかという提案だったように思えます。

話の内容をいくつか要約して紹介してみると次のようなことでした。

◆かつて里山地帯では10〜20年で雑木林を伐採し木を活用していた。(割り木や炭は私たちの生活の必需品でしたから)世界では約34億トンの材木を消費しているが、そのうち平均で55%は今も燃料として使われている。それに対し日本では15%でしかなく、もっと燃料として使うべきではないか。まっさらな材木を燃料にしろというのではない。建築材や紙にならなかった木材をもっと社会化することが大事なのではないか。そのことによって、森床植物は3〜7倍に増え、森が活発になるのだ。

◆例えば、スイスでは木を燃料とする1万5千世帯のヒーテングシステムや88戸の個人住宅と11の企業の暖房をまかなう地域暖房システムができている。しかもそれらは、木を直接薪としてではなく、チップやペレット、ブリケット(木くずを固めたもの)に加工して燃料にしている。そうしたチップやペレットをスクリューでストーブに送り込む方法なので、送り込む量を自動調整でき、着火も発熱量の調整もリモコン操作で可能である。ペレットの場合なら、50kg(3袋分)で3日間、しかも自動設定で終日ストーブを燃やし続けることができる。


中川さんによると、日本でも昭和48年に岩手県の葛巻林業という会社が500台のストーブを作って、同様の事業を起こしたそうですが、大々的に普及するには至らなかったということです。最終的には石油ストーブなどと比べたランニングコストが問題のようで、ヨーロッパの場合も石油価格の変動がこのシステムの普及に大きく影響しているということでした。ようするに今の時代、どんなに理念が優れていても、経済的にも成り立つシステムでなければうまく回っていかないのです。このことはリサイクルシステムなどにも言えることです。

ペレットの値段を聞いてみたところ、現地渡しでトンあたり1万5千円ぐらいということでした。50kgで3日間燃やせるということですから、1か月で500kg、1万5千円で2か月燃やせるということになり、これだなら経済的にも十分成り立つような気がします。しかし実際には、これに運送費がかかりますから、遠方から運んできたのではむずかしいということになります。


中川さんの提案は、この仕組みを地域の中に作っていけないかというものなのです。「現在の市民参加型の森づくりは、質の話はできても、それによって地域の森林がどう変わるかという量の問題には貢献できない。炭焼きの活動なども、森林を考えるきっかけにはなるが、それによって森林を変えるほどの消費を生み出すことにはならない。」そこでどう消費と結びつけるかと考えた末に、ヨーロッパで成立しているバイオストーブにたどり着いたのだと思います。

「狭い地域の中で回る仕組みを作る」ということには私も大いに賛成です。輸送コストがかからないということ以上に、中川さんが意図している「森や雑木林の再生」のためにも、そうした地域の中で完結するシステムが欠かせないからです。

里山活動とバイオマス活動を結びつけるこのアイデアは、とても魅力的に思えます。しかも経済的にもある程度成立する見通しがあるとすれば、NPOなどの活動として取り組んでみる価値は十分あるのではないでしょうか。


実はこの話を聞いて以来、ペレットストーブを我が家でも使ってみようかと真剣に考えています。


ようこそ
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