【古典文学に登場する天狗】3
すでに奈良時代には、雑多な山林宗教者が頻繁に山に入り、過酷な山林修行を行っている。『今昔物語集』では、当初の正統な仏教を擁護する立場から、山で修行する不可解な宗教者を天狗が取り憑いていると批判した。

これが逆効果となり、益々「天狗=山伏」の観念を促進する結果となった。第十一話にある「比良山に住む天狗」や、『台記』には「愛宕山の天狗」とあるように、特定の修験霊山と天狗が密接に結びつくようになる。


 この頃には、山の神と天狗は共に姿形が曖昧であったが、天狗が鳥や人に憑くものという観念から、烏天狗を想起させる説話や、人物的な天狗も賑やかに登場している。烏天狗人物系に近い天狗相が次第に具象化され、天狗の諸相(姿・形)が多様に形成されつつあった。

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