
ことばの使い方
エライ人が
税金を使っちゃいけないことに使って
それを税金の無駄づかい、って言うから
まあそういうこともあるのねえ
なんてゆるゆるしちゃうんです
漢字でばばんと公金横領って言えば
何たること!って叱られて
次からしなくなるはずよ
たぶん
ある詩人に
サンタクロースに口説かれたの
そんなにいい男だったの
サンタのそりに乗って
空へ旅立ってしまったあなた
トナカイの角をはじめて見て
うっかり乗ってしまったの
あなたが大好きなタンゴを踊るのが
上手なサンタクロースだったの
黙って行ってしまったあなた
先に行った人たちは
きっと喜んでいることでしょう
だけどあなたには居て欲しかった
平和ということばの罠に落ちて
他人の平和を踏み台にして
自分の平和を手に入れようと
世界中が荒れ狂っているこの地上に
まだまだ居て欲しかった
ひとの哀しみも希望もすべて
あなたの言葉で聞きたかった
どんな時にもぶれない言葉で
あなたの言葉で聞きたかった
けれどもう私たちは
あなたに依りかかっていてはいけないのですね
私たちは私たちの言葉で語り
あなたから教わったものを
あなたから手渡されたものを
伝えていかなければいけないのですね
空からきっと見ているであろう
あなたに恥ずかしくないように
2006・12・25
使用禁止
本日ガスコンロのそうじをしましたので
元日まで使用禁止といたします
3円安
夫がめずらしく早く帰ってきて
パジャマに着替えずに洋服に着替えたので
娘が「父さんどこか行くの」
「うん、かあさんとデートでも行こうかなと思ってね」
クリスマス留守にした罪滅ぼしか
そんなことを言っているのを小耳にはさんで
はりきって晩ごはん作ったら
お皿洗いの係りも放り出してグーグー
もう、期待させといてハシゴはずすんだから
期待したあたしがばかだった
がんがんお皿洗いつつ
つぶやいた本日3円安
大掃除
ええっとトイレは最後まで使うでしょ
お風呂も大晦日に洗うのがいいよねえ
コンロも今日磨いて明日吹きこぼす怖れあり
換気扇はうーん、まだそこまで気分が乗らない
いったいどこからやったらいいの
不便な世の中
不便な世の中に生まれちゃったなあ
お腹のなかの脂肪までわかるなんて
見えてる脂肪だけでも、うっ、とくるのに
そんなの計ってくれなくていいよ
不便な世の中に生まれちゃったなあ
宅急便が何時に届くかわからないから
一日中家にいなくちゃいけなくなった
むかしはチッキで駅まで行けばよかったのにね
不便な世の中に生まれちゃったなあ
学力テストなんていうのがあって
子どもの学力が数字になって帰ってくる
計れなくていいものだってあるのにさ
筋肉痛
すごい雨だあ
ワイパーもフル回転で
ぶんぶん ぶんぶん
筋肉痛にならないかなあ
一日遅れのクリスマス
娘はクリスマス会でおでかけ
夫はクリスマス忘年会
息子はと言えば
ああ、そうかあ、きょうはクリスマスかあって
受験勉強真っ只中
午後からは冬期講習だあって言ってるところへ
ノートを借りに来た少年と息子に
でっかいピザをごちそうして
きょうはわたしのクリスマス
喫茶店でケーキでも食べて来ようかな
ひそひそサンタ
だれかに聞かれるとはずかしいから
こっそり父さんにたのんだプレゼント
サンタさんにおねがいしてね
それっきりサンタさんのことは口にしない
クリスマスイブが来て目が覚めて
枕もとのプレゼントをたしかめたのか
むすめはぐっすり眠っています
いいねえ
デリシャスというなまえのパイを食べました
自信満々、うん、いいねえ
意地
つまんなかったって言いたくない
米粒くらいの楽しさでも見つけてやるぞ
あそこは面白かったって意地でも言いたい
嫌なひとねって言いたくない
米粒くらいのすてきなところでも
見つけてあそこは好きって言いたい
よかったんだ
テレビに出ている誰かが
夢は娘よりも長生きすることって言っていた
百年でも
二百年でも生きて
娘より一日でも長生きすること
これが僕の夢なんです
僕が死んで娘を泣かせることがないようにねって
そうか、そういう愛し方もあるんだね
じゃあよかったんだ
これでよかったんだ
わたしはあの子を
泣かせずに済んだんだもの
もしも もうひとり
もしも もうひとり赤ちゃんが産めるなら
関西弁がしゃべれる赤ちゃんがいいなあ
お気軽に
手が届かないときはお気軽に
スタッフまでお申し出ください
わー、うれしー、太っ腹〜
天国へ逝ってしまった君へ
どうしてひとりでいっちゃったの
もしもどこかで君と会ったら
おばちゃんおしゃべりしたかったよ
曲がり角
高校の説明会に向かっていました
先を歩くお母さんと中学生の二人連れが
右に折れて行きました
息子は地図見ながらためらいもなく
左へ曲がって歩きはじめました
こども
地球があったかくなりすぎて
北極の氷が解けるんだそうです
氷が解けるとホッキョクグマが困り
ニンゲンも困るんだそうです
そうならないためにも
車のエンジンのかけっ放しはやめようというのです
それなら車に乗らないようにすればいいんじゃない
と思うわたしはこどもでしょうか
デート
うほほいほい
きょうは息子とデートなのです
ふたりっきりのデートなのです
何時に出ようか
お昼はどこで食べようか
何を話してても楽しいのです
幼稚園のころの息子が
わたしのところに戻ってきたみたい
ほんとは高校説明会に行くだけなんですけど
目に映るもの
目に映るもののすべてが
かなしい思い出を呼んでくる
目を閉じても聞こえてくる音が
姿を形をわたしに映す
なにもかもを灰色に映す
おかわり
おかわり100円とあったので
ずっとおかわりにあこがれてました
仕事が一段落した今日
勇気を出して
すみません、おかわりお願いします
と店員さんに言ったら
240円になります
と言われました
あれ、100円じゃないのかな
そう思いながらもお金を払い
珈琲カップを受け取ったあと
もう一回勇気を出して
聞いてみました
おかわりのこと
店員さんは急にきびしい口調になって
おかわりならレシートがないと
早口でわたしに言いました
ごめんなさい
そうですよね
レシート今探します
カウンターに置かれた珈琲が
それを黙って見てました
エクレア
すいませーん
これ解凍したいんですけど
おじさんの温室つかわせてもらえますか
うーん、解凍したらわしにひとつ くれるか
はい、あげます、やくそくします
よし、貸してやろう
そこのトマトのそばに置くのがいいじゃろう
はい、わかりました、おせわになります
なんておもったら
室温でした
ああ、よかった
冒険
近所にできたばかりの
ラーメン屋さんに行きました
冒険だー、レッツゴー
塩ラーメンを頼んで
まずはスープをひとくち
そこへすかさずご主人が
お味はいかがでしょうか
おいしいです
あー、ありがとうございます
うちは化学調味料使ってないんですよ
そう言ったかとおもうと
おじさんは熱く語り始めました
そんなおじさんを喜ばせたくて
スープ全部飲んじゃいました
ひとりくらい
運送屋さんはでんわもせずに
とつぜんやってきたのです
当然わたしは留守にしていて
ポストに紙がひらりといちまい
お留守でしたので持ち帰りました
お帰りになりましたらお電話ください
荷物はおおきい荷物だったから
事前にでんわが来るはずだったのに
わたしはちょっと不機嫌になったのです
だけどまあ勘違いもあるかって
その番号にでんわしたのです
そしたら夕方お届けします
運送屋さんのお兄さんが言うので
ずうっとずっと待ってたのです
5時が過ぎ6時が過ぎ
夕方って何時くらいまでなんだろうねえって
むすめと話していたのです
9時になって、さすがにもう夜だよねえって
もう一度でんわをしたのです
そしたらもう今日は遅いので
あしたお届けしますと言うではありませんか
わたしはちょっとむっとして
わかりましたと言いました
まったくもうと思っていたら
次の日朝一番で電話がきました
でんわの主は運送屋さんの社長さんでした
昨日は大変申し訳ありませんでした
2時から3時半の間に届けさせたいと思いますが
ご都合はよろしいでしょうかと
ていねいに言ってくれました
こういうとき怒ったほうがいいのかしらっておもったけれど
わたしひとりくらい怒らなくてもいいんじゃないかって
そんなふうにもおもったんです
石
川のながれを
堰きとめるのはたいへんだ
そこいらじゅうにある石を手当たりしだいに積んでも
水はどんどん流れてくる
積んだ石を越えて
どんどん流れていく
流れは最初よりも勢いを増して
石を乗り越えようとする
ちいさい石を
おおきい石を
あきらめもせず積んでいく
あたりは段々暗くなって
石も川も見えなくなってくるのに
流れは石をものともせずに
どんどんどんどん流れていく
だけどそれを見ていると
ぜったい堰き止めてみせるって
絶対できるっておもえてくる
じょうずに石が積めたときのことを
想像するとわくわくする
積んだ石のなかで
水がおとなしくなるのを
想像するだけでうれしくなる
演じる
演じていれば
すべてうまくいく
台詞も表情もそのときどきで
上手に使い分けることができる
そして自分という演じ手が
どこの誰なのか
わからなくなってしまう
いい音
いい音
鉛筆の音
いい音
娘が漢字の書き取りをしている音
ハッピーバースデーが終わって
ケーキを食べて
みんながお腹いっぱいになった部屋にひびく
しずかなしずかな鉛筆の音
自己紹介
銀座アスターで
福建ビーフンというのを食べました
ひとりずつ自己紹介してほしいくらい
いろんな具が入っていてにぎやかでした
マフラー
川久保、川久保
どうかベッドが空っぽになっていませんように
行き違いになっていませんように
バスを降りた途端にマフラーを忘れたことに気づいたけれど
走れば間に合うバスを振り切って
目の前に見えている病院へむかって走る
マフラーなんてあげる
だからどうか彼女に会わせて
マフラーとひきかえでいいなら
どうか会わせてと入り口へ走る
一階の受付で三階にいることがわかり
こころが少しマフラーにもどる
エレベーターにはストレッチャーに乗せられた急患のおばあさん
いっしょにどうぞと看護婦さんの笑顔に救われる
三階のナースステーションできいた病室のベッドで
彼女はぼんやり外を見ていた
間に合った
一目だけでも会っておきたい
そう思っている自分を認めたくなくて
ずっと先延ばしにしていた
別れが近づいていることを否定できない自分が嫌で
ずっと決心がつかなかった
数日後わたしの手にマフラーがもどった
バスの営業所の方が
宅急便で送ってくれた
また行こう
このマフラーをして
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