八ヶ岳
主峰赤岳(2,899m)を中心に天狗岳、硫黄岳、横岳、権現岳といった主脈を縦走する八ヶ岳の山旅は、展望の良さでは最高です。 富士山、北アルプス、南アルプスの山々の豪快な姿を楽しむことが出来ます。
ここには、早池峰山のハヤチネウスユキソウといったような絶対的な固有種はありませんが、ヤツガタケキンポウゲなどの幾つかの固有種が見られます。 尾根筋に咲き乱れる高山植物も種類と数は豊富で、ツクモグサやウルップソウなど他の山ではなかなか見られない花も結構あります。

作品の追加、変更は随時行う予定ですので、ご了解下さい。
旧明野村(北杜市)より見た八ヶ岳の稜線
最終更新日;2014年10月26日


タカネニガナ (キク科)
Ixeris dentata var. alpicola

全国各地の野山で普通に見られるニガナの高山変種です。 平地のニガナは背丈の高い草で地味な花をつけます。 高山性のタカネニガナは矮小化し、葉も小さくなっているのに、花は逆に大型になり花弁の数も増えています。 高山を訪れる数少ない昆虫にアピールする為には、地味な姿では生きて行けないのです。 今までは南アルプスのページに掲載していましたが、今回こちらに引っ越ししました。

ヤツガタケタンポポ (キク科)
Taraxacum yatsugatakense

はっきり言って超駄作のうえ、どう見てもただのタンポポですが、これでも八ヶ岳と南アルプスのれっきとした固有種です。今回、写真を更新しましたが、駄作に変わりはありません。
タンポポは非常に種類が多いのですが、見分けるポイントが総苞ぐらいしかありません。 植物図鑑などによれば、ヤツガタケタンポポの特徴は、外総苞片の長さは内片の1/2以下で小角突起がない......
ははは。余計につまらないですネ。どうみても。
歩いたコースや季節にもよるのでしょうが、八ヶ岳では余り見かけません。今回も1株見かけただけでした。南アルプスの方がたくさん咲いています。名前にこだわって八ヶ岳で撮影したものを掲載しておきます。
本種の葉は羽状に中〜深裂するのに対して、夕張岳に分布するタカネタンポポは全裂するのが特徴です。
東京などの平地で普遍的に見られたカントウタンポポは帰化植物のセイヨウタンポポに殆ど駆逐されてしまい、今では在来種のタンポポ総てが稀産種になっているような気がします。
説明もつまらないですネ。タンポポはどうみても。

リンネソウ (スイカズラ科)
Linnaea borealis

淡いピンク色の可憐な花を下向きに咲かせます。草ではなく矮性低木です。 北半球の寒帯や高山に広く分布します。
スウェーデンの植物学者のリンネ(Carl von Linne 1707〜1778)に因んでこの学名があります。 和名もそのままです。
花茎の先は2つに枝分かれして、一対の花をつけることから「夫婦花」の別名があります。

ムシトリスミレ (タヌキモ科)
Pinguicula vulgaris

スミレの名前がありますがスミレ科の植物ではありません。 タヌキモ科の食虫植物です。 花の形や色はスミレに良く似ていますが、葉は食虫植物そのものです。 葉は内側にめくれ、粘液を分泌して昆虫を捕らえます。 葉の内側の黒いカスは、そうした昆虫のなれの果てです。 高山でもやや湿った場所で見かけます。八ヶ岳には湿った岩場が結構あります。
今までは八ヶ岳で撮ったものを掲載していましたが、八幡平で珍しい白花を撮影しましたので差し替えました。
北海道、本州中部以北及び四国の立石山に分布します。

ウルップソウ (ゴマノハグサ科)
Lagotis glauca

八ヶ岳,白馬岳,礼文島に分布しますが、礼文島ではまず見る事はできません。八ヶ岳も以前は結構咲いていたのですが、最近では激減してしまいました。名前は千島列島のウルップ島(得撫島)に由来します。国内の分布は上記の3カ所ですが、かつては日本の領土だった同島にもきっと沢山咲いているんでしょう。
この花も花期には恵まれず、今回4回目の差し替えとなりましたが、良い写真が載せられません。
硫黄小屋の周辺にはウルップソウの群落があるのですが、花期にもかかわらず花が咲いていたのは3株だけでした。1株だけ形の良い株があったのですが、立ち入り禁止区域の中で20mも距離があったのでズームレンズの望遠側し、ピクセル等倍にして、ようやくこの程度の大きさです。登山道に近い場所で咲いていた株も右下に組み込みました。 太くて青い花穂をつけますが、右下のように咲き終わった花の残骸が汚く残る性質があります。 大雪山のものは、葉がやや細くホソバウルップソウと言います。 夕張岳には亜種のユウバリソウが特産します。

キバナシャクナゲ (ツツジ科)
Rhododendron aureum

どこの高山でも見られます。前回は大雪山で撮影したものを掲載していましたが、八ヶ岳のものに差し替えました。
日本原産のシャクナゲの仲間では最も高いところに上がった種類です。1つの花も大きいですが、房状に3〜10花がまとまって咲きますので、見応えがあります。高山帯の尾根筋などで見かける花の大きさで1位の花です。

コイワカガミ (イワウメ科)
Schizocodon soldanelloides f. alpinus

高山植物と呼ぶには高度不足の感がないわけでもありません。 まあ、低山から高山まで広く分布しています。 九州から北海道まで水平方向の分布も広いです。 低山のものは全体的に大型のことから、オオイワカガミと呼んで区別するようです。 飯沼慾斎の「草木図説」に基づいて命名されており、高山植物で基準標本を持たない珍しい種です。
赤岳山頂から文三郎登山道に入ったところで、芽を出したばかりのこの花を見つけました。高度を下げて行くにつれて成長状態が進み、行者小屋を過ぎたあたりで見事な花期の群落に出くわしました。今回の山旅はこの花の垂直分布を知る旅にもなりました。

シナノオトギリ (オトギリソウ科)
Hypericum kamutschaticum var. senanense

日本に自生するオトギリソウの中では最も高い所に分布するイワオトギリの変種です。 中部山岳のみに分布します。
オトギリソウ自体は普通の山野でも良く見かけますし、公園などによく植えられている大柄のビヨウヤナギも同じ仲間です。 オトギリソウは『弟切草』です。 この草から得られる秘伝の薬の秘密を漏らした弟を斬り捨てた鷹匠兄弟の物語に由来しています。

チョウノスケソウ (バラ科)
Dryas octopetala var. asiatica

どこの山にも分布していますが、あまり見掛けません。ところが八ヶ岳では結構咲いています。
須川長之助氏によって採取されたことからこの名前があります。種の名前のoctopetalaは「8枚の花弁」という意味です。確かにキンポウゲ科を除くと野生の植物で8弁が標準的な花は少ないようです。 花後に花柱が長く伸びてチングルンマの実のようになります(右下の円内)ので、ミヤマチングルマという別名もあるようです。

タカネバラ (バラ科)
Rosa nipponensis

高山植物にバラ科の植物はたくさんありますが、バラらしいバラ属の花は本種とオオタカネバラだけです。
固有種のような珍しい花ではありませんが、私が登った山では季節が合わなかったのか咲いているのを見たことがありませんでした。 高山植物としては一般的な花なので、いつか撮影したいとは思っていました。昨年見たテレビ番組で八ヶ岳の西岳付近で咲いているタカネバラを見掛けましたので、今年花期に合わせて登り、ようやく逢うことが出来ました。 しかし、ただの赤い野バラですね。

ツクモグサ (キンポウゲ科)
Pulsatilla nipponica

春の山野草としてお馴染みのオキナグサの仲間ですが、クリーム色の美しい花をつけます。キンポウゲ科の植物ですから花弁のように見えるのは萼片です。 見られる山は限定され、北海道では利尻山,芦別岳,ニペソツ山などに、本州では八ヶ岳と白馬岳に分布します。花期は6月上旬ですが年により変動します。 今回も花期には早かったというよりも撮影時間が早かったので充分に開花していませんでした。そこで開花したものと組み合わせてみました。
全草が長い毛で覆われています。左の写真はツクモグサとしては大株です。八ヶ岳を代表する花ですが、この花が咲いている山域は広い八ヶ岳でも限られています。
オキナグサと同様、花が咲き終わると長い羽毛状の実をつけます。
名前は、この花の発見者である城数馬氏の祖父の名前に由来します。さぞや祖父も翁を連想するような立派なヒゲをしていたんでしょうね。

ミヤマミミナグサ (ナデシコ科)
Cerastium shizopetalum

都会に蔓延る雑草のオランダミミナグサの仲間です。オランダミミナグサは帰化植物ですが、こちらは在来種です。 オランダミミナグサが雑草然とした花なのに対して、高山植物の本種は花も大きく、5弁の花弁は2裂し更に2裂するので20枚もあるように見えます。
中部山岳では良く見かける花ですが、写真を撮るとなるとなかなか絵になるような株が見つからない花のひとつです。

シコタンハコベ (ナデシコ科)
Stellaria ruscifolia

高山性のハコベの仲間の葉っぱは細いものが多いのですが、シコタンハコベは卵形の葉を対生します。 花弁の数は5枚ですが、深く2裂するので、10枚のように見えます。 白い花弁を背景に赤いおしべの葯が目立つのですが、この写真では葯が殆ど見えません。 咲き始めの花の隙間から見える葯は赤いので、花粉が雨にでも流されたのでしょうか。左上に雨に濡れたシコタンハコベの写真を掲載していますが、多少雨に打たれたくらいでは簡単には流されないようなので、虫にでも運ばれたのでしょうか。

クルマユリ (ユリ科)
Lilium medeoloides

高山の高茎草原などの湿性の場所に大群落を作ります。 北ア白馬鑓ヶ岳大出原の大群落が有名で、高山植物の本やカレンダーなどに良く登場します。 八ヶ岳では他の植物に混じって、ぽつん、ぽつんと咲いています。風が当たらない場所だと結構高い場所にも進出し、南アルプスでは稜線の風下側付近でも見られます。
茎の中程に数枚の葉を輪生させます。この葉の形を車輪に見立ててこの名前があります。前回は南アルプスで撮影したものを掲載していましたが、八ヶ岳のものに差し替えました。

マイヅルソウ (ユリ科)
Maianthemum dilatatum

北半球に広く分布し、日本でも北海道から九州の亜高山帯から高山帯で普通に見られます。 根茎は良く分枝して広がるので、樹林帯の林床に大きな群落を形成しているのをしばしば見かけます。
中部山岳ですと、この花が咲いている付近は、長い樹林帯の最中で、先を急いであまり写真に納めたことはありません。 今回は宿泊地の赤岳鉱泉に予定より早く着いてしまい、のんびり付近を散策して、この写真を撮りました。 名前の由来は、ハート型をした葉の形を鶴が舞う姿にたとえています。
左下に花の拡大写真を表示していますが、ユリ科としては珍しく4枚の花弁を持ちます。この花弁は反り返り、4本のおしべが突き出しているので、花から棘が出ているように見えます。
又、右下に果実の写真も表示しました。写真にものはまだ未熟のもので、完全に熟すと真っ赤になります。

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