00000000000000000000000000000000000000000000 至仏山のページ 至仏山
尾瀬には、燧ヶ岳(2,346m)と至仏山(2,228m)が向かい合って聳えています。 燧ヶ岳は花崗岩からなる酸性の山であるのに対して、至仏山は蛇紋岩からなる塩基性の山です。 尾瀬ヶ原から眺める至仏山は、なだらかな女性的な山のように見えますが、蛇紋岩の巨石に覆われた険しい山です。 この特異な環境の為に、至仏山には多くの固有種が生育します。
従いまして、コマクサなどが咲く燧ヶ岳、ホソバヒナウスユキソウなどの固有種が豊富な至仏山、それに尾瀬沼や尾瀬ヶ原の湿原の花といった具合に、非常にバラエティーに富んだ花を見ることが出来ます。
尾瀬は多数の観光客が訪れ、環境破壊も問題となっています。貴重な花を是非後世に残して行きたいものです。

作品の追加、変更は随時行う予定ですので、ご了解下さい。
下田代より見た至仏山
最終更新日;2015年10月12日


ホソバヒナウスユキソウ (キク科)
Leontopodium fauriei var. angustifolium

東北の高山に生育するミヤマウスユキソウ(別名ヒナウスユキソウ)の変種とされ、尾瀬の至仏山と谷川岳のみに特産するエーデルワイスの仲間です。文字通り葉が細く小ぶりできゃしゃなウスユキソウです。
右の方は以前から掲載していた6月の咲き始めの頃に写した写真です。 まだ茎が伸びきっていない時期にマクロレンズを使ってアップで撮ったので、この写真からの印象はやや力強いイメージがあります。
近縁種には、ハヤチネウスユキソウオオヒラウスユキソウエゾウスユキソウヒメウスユキソウ及びミネウスユキソウがあります。

ジョウシュウアズマギク (キク科)
Erigeron thunbergii var. heterotrichus

至仏山や谷川岳に特産するアズマギクです。ミヤマアズマギクと比べて花茎が暗紫色を帯びることと葉が細いことが特徴です。 最近全国的にミヤマアズマギクが青紫色になる現象が起きています。早池峰山のミヤマアズマギクは10年前はピンク色でしたが、最近は青紫色のものしか見掛けません。夕張岳の高山植物監視員の方も同じようなことを言っていました。酸性雨の影響なのかもしれないと思っていました。久し振りに至仏山に登ったのですが、ジョウシュウアズマギクはピンク色を保っていることに驚きました。酸性雨だとすると、現在の酸性雨の発生源は環境破戒大国の中国ですから、中国からの気流の影響で東北や北海道に濃厚な酸性雨が降っているのかもしれません。それともジョウシュウアズマギクは変種の為、種として酸性雨に対する耐性が強いのでしょうか。少なくとも、2007年はまだジョウシュウアズマギクはピンク色だったという記録にだけはなってほしくありません。

オゼミズギク (キク科)
Inula ciliaris var. glandulosa

尾瀬の名前がありますが、東北地方の高山にも分布します。本州の低地などに分布するミズギクの変種で、図鑑によれば母種との違いは茎の中部以上の葉の裏に腺点が多いのが特徴だそうです。 通常は茎の先端に一輪の花の株が多いのですが、この株は3つも花をつけています。お盆の頃に尾瀬ヶ原で目立つ花です。
オグルマ属の植物ですが、日本にはミズギク、オグルマ、カセンソウの3種しかない小所帯です。 余談ですが、ミヤマオグルマなど小車の名がつく植物は他にもありますが、これらはキオン属の植物です。

サワギキョウ (キキョウ科)
Lobelia sessilifolia

お盆の頃の尾瀬ヶ原をミズギクと一緒に彩る花です。生命力が旺盛で写真のように大株が木道の間にも入り込んで咲いています。まとまって群生している場所もあります。 キキョウ科といってもミゾカクシ属に属しますから見慣れたキキョウの5枚の合弁花ではなく、上下2唇に分かれ、更に上唇は鳥の翼のように深く2裂し下唇は3裂します。 この花を茎の上部に房状に咲かせます。

ミヤマムラサキ (ムラサキ科)
Eritrichium nipponicum

高山のワスレナグサです。 淡青色の花弁と黄色の花筒の取り合わせが印象的です。 花はかたまって咲きます。 この花は大株の方ですが、高山の岩の割れ目から顔を出している小型の株の方がこの花の雰囲気があります。

エゾリンドウ (リンドウ科)
Gentiana triflora var. japonica

9月中旬の尾瀬ヶ原を代表する花です。ヒツジグサも色付き始めており、この花が終わると本格的な紅葉シーズンを迎えます。
この花の高山型がエゾオヤマリンドウです。低山型のエゾリンドウは背が高く花は茎の先や上部の葉脇に付くのに対して、エゾオヤマリンドウは背が低く茎の先端だけに花をつけます。尾瀬で見掛けるエゾリンドウは葉脇の花も精々1〜2段で茎の先端にしか花が咲かない株が多いです。尾瀬にはエゾオヤマリンドウは分布しないのですが、写真の株はどちらかといえばエゾオヤマリンドウに似た固体です。

タテヤマリンドウ (リンドウ科)
Gentiana thunbergii f. minor

平地に生えるハルリンドウの高山型で、母種に比べて小型です。立山に多いわけでもなく、中部地方以北の亜高山帯から高山帯の湿原では普通に見られます。 別名をコミヤマリンドウともいいます。
春先の尾瀬の湿原では、良く見かける花です。白花をシロバナタテヤマリンドウ( f. ochroleuca)といいます。

ミツガシワ (ミツガシワ科)
Menyanthes trifoliata

3出複葉の葉をつけることからこの名前があります。花弁に白くて長い毛があります。
高山の池や沼に大群落を作ります。尾瀬も昔はこの花が多かったのですが、近年は降雪が少ない影響でシカの食害が増え、めっきり少なくなりました。
リンドウ科ミツガシワ亜科に分類されることもあります。

ユキワリソウ (サクラソウ科)
Primula modesta

春先になると花屋の店先にはユキワリソウと名付けられた花が並びます。 あれは、キンポウゲ科のミスミソウです。 残雪を割るように咲く花という意味で、春先に咲く花で俗名に『雪割草』を名乗る花はいくつかあります。
正式名称がユキワリソウなのはこの高山性のサクラソウの花です。 この花は見られる山が限られますが、至仏山には結構多く見られます。
サクラソウの仲間にはユキワリソウのように根生葉が外に巻くもの(ユキワリソウ節)と、エゾコザクラのように内側に巻くもの(エゾコザクラ節)とがあり、重要な見分けるポイントとなっています。 ユキワリソウ節には、ヒメコザクラレブンコザクラサマニユキワリユウパリコザクラ等があります。

ヒメシャクナゲ (ツツジ科)
Andoromeda polifolia

非常に小さいですが草ではありません。 高層湿原に生える立派な常緑低木です。 尾瀬ヶ原ではかなりの数を見ることができます。 属の学名のAndoromedaは、アンドロメダ星雲など雄大なものを連想しますが、本来はギリシャ神話に登場する美少女の名前で、可愛らしいピンクの壺型の花を美少女にたとえているのです。
シャクナゲの名がありますが、Rhododendron属ではありません。しかし、葉は小さいですがシャクナゲに良く似ています。

コミヤマカタバミ (カタバミ科)
Oxalis acetosella

亜高山帯の樹林の下で良く見かける花です。天気が曇り出すと直ぐに花を閉じてしまいます。 この花は白花しか見たことがありませんでした。しかも花を閉じていることが多いので写真を撮るようなこともありませんでした。 初めて淡い色ですがピンク色の花を見ました。中には帰化植物のムラサキカタバミかと思うほどの紅花をつける株もあるようです。
背景の葉は殆どがシソ科の植物のもので、カタバミ独特のハート型の3出掌状複葉は畳まれた状態で突き出ています。

ノウゴウイチゴ (バラ科)
Fragaria iinumae

高山に自生する野生の苺です。"れっきとしたストロベリー"というのも変な表現ですが、実の写真からも判るように食用イチゴ(オランダイチゴ)の仲間です。
食用イチゴの花が5弁花であるのに対して、こちらは7(〜8)弁の花をつけます。 発見地の地名(岐阜県能郷)に因んでこの名前があります。尚、右上の円内の完熟した実の写真は八幡平で撮影したものです。

モウセンゴケ (モウセンゴケ科)
Drosera rotundifolia

北海道から九州の山地から高山帯の湿地の生え、食虫植物として有名です。 左はモウセンゴケ、右はナガバノモウセンゴケとモウセンゴケの雑種のサジバモウセンゴケです。 尾瀬では2種のモウセンゴケが自生しているので、雑種も良く見かけます。 夏になると長い花茎を伸ばし、渦巻き状の花房に小さな白い花をつけます。

クモイイカリソウ (メギ科)
Epimedium grandiflorum var. coelestre

日本に自生するイカリソウの仲間で唯一の高山性の花です。 日本海側の低山帯に生えるキバナイカリソウに似ていますが、全体に小型です。 本種は至仏山と谷川岳にしか分布していません。
いびつなハート型の葉と、錨のような花形はこの仲間の特徴です。

トガクシショウマ (メギ科)
Ranzania japonica

別名を戸隠草ともいいます。戸隠の名前がありますが、戸隠山ではまず見ることは出来ません。高山植物の本などには中部以北の日本海側の山地に分布すると書いてありますが、多分見ることは困難でしょう。多くの本に掲載されている本種の写真は尾瀬のある沢で撮られたものです。大変美しい花ですが、この花も盗掘により絶滅の危機に瀕しています。
1属1種の植物で、花弁のように見えるのは萼片です。この尾瀬の沢でも個体数は激減しており、花期にも恵まれず思ったような写真は撮れませんでした。

キクザキイチゲ (キンポウゲ科)
Anemone pseudo-altaica

高山植物というよりも早春の山の花です。 雪が残る季節に可憐な花を咲かせ、晩春にはもう枯れ始め、一年の大半を地下の塊茎で休眠します。早春の僅かな季節だけを生きる儚ない花をスプリング・エフェメラルと言うようですが、本種もそんな仲間です。
早春の山を歩けば逢うことが出来るのかもしれませんが、その時期はあまり山に行きません。そんな訳でこの花は植物園で見たことはあっても野生状態のものを見たのは尾瀬が初めてです。しかも雪解け水でぬかるんだ木道で滑って転んだ目の前に咲いていた株で、非常に印象深いです。

リュウキンカ (キンポウゲ科)
Caltha palustris var. nipponica

雪解けの高層湿原をミズバショウと共に彩る花です。 水辺で水に浸かって咲いている姿をよく見かけるので『流金花』がふさわしいと思うのですが、正しくは『立金花』だそうです。 尾瀬らしく木道の傍に咲いている株を載せてみました。
北海道には、やや大柄のエゾノリュウキンカが分布します。

オゼコウホネ (スイレン科)
Nuphar pumilum var. ozeense

尾瀬の名前がありますが、尾瀬の固有種ではなく東北の月山や北海道にも分布します。ネムロコウホネの変種で、この写真では見えませんが雌蕊の柱頭が赤いのが特徴です。花弁のように見えますが萼片です。根茎が骨のように見えることから、コウホネ(河骨)の名があります。
個体数は激減しており、広い尾瀬ヶ原を一日歩いて、たった1輪見かけただけで、無数にある池塘を独占しているのはヒツジグサでした。 木道からは非常に遠い場所に咲いていたので500mm相当の超望遠レンズで撮影しました。
同じ科のヒツジグサとは池塘の深さですみ分けをしていると言われており、オゼコウホネの方が深い水深を好むのだそうです。確かにオゼコウホネを見掛けた場所は大きな池塘で水深も深そうでしたが、端の方にはヒツジグサが進出しており、これから両種の生存競争が始まるのかもしれません。入山が禁止されている場所には、まだオゼコウホネが咲く池塘があるとのことです。

ヒツジグサ (スイレン科)
Nymphaea tetragona

高山の池や沼などに群生する小型のスイレンで、池塘の水面をびっしりと埋め尽くすように丸い葉を浮かべます。 花が未の刻(午後1〜3時)に咲くのでこの名がありますが、天気が良ければ朝から咲いています。 何時でも見られると軽く考えていたら、さすがに悪天候の日には花を閉じておりました。
「尾瀬の池塘を代表する花」と言えば聞こえは良いのですが、池塘を全て独占してオゼコウホネを絶滅に追い込んでいるようにも見えます。 尤もこれが自然の生存競争ですから仕方がないのかもしれません。 秋になって黄色く色付いた葉に埋め尽くされた池塘も絵になります。

オゼソウ (ユリ科)
Japonolirion osense

尾瀬のページを作ったからには尾瀬の名を冠する花を載せたいものです。至仏山や尾瀬には貴重な固有種や特産種は多いのですが、尾瀬の名がつく植物は本種だけです。
そんな訳で、この花を見る為に至仏山に登りました。しかし、この年は残雪が多く開花は遅れていました。諦めて高天ガ原を下っていたのですが、もうすぐ高山帯も終わるところで、この花に出会いました。
至仏山と谷川岳に特産する一属一種の植物です。目立たない植物ですが、学名のlirionはユリという意味ですから、尾瀬産の日本のユリという名前負けしそうなほど立派な学名を持っています。

ショウジョウバカマ (ユリ科)
Heloniopsis orientalis

この花は高山でも見掛けますが、九州から北海道までの低山から高山まで広く分布します。早春の雪が融けた頃の尾瀬の湿原にミズバショウに少し先駆けて咲く花で、枯れ草ばかりの湿原で目立つ花です。
「猩猩」というのは中国の想像上の動物で、赤くて猿のような顔をした大酒飲みの動物だそうです。花を猩猩の顔に葉を袴に見立てた名前です。

キンコウカ (ユリ科)
Narthecium asiaticum

近畿以北の山地や亜高山帯の湿原や湿地に分布します。 夏の高層湿原を代表する花で、大きな群落を作ります。一個の花は小さいですが、花期には湿原が黄金色に染まることから、黄金花(金光花)の名前があります。

ゼンテイカ (ユリ科)
Hemerocallis dumortieri var. esculenta

植物図鑑などではゼンテイカ(禅庭花)として記載されていますが、一般にはニッコウキスゲ(日光黄菅)の方が通りがいいです。
中部以北の湿原に普通に見られますが、尾瀬ヶ原のニッコウキスゲの大群落はあまりにも有名です。この花の季節には都会並みの大混雑となりますので、出かけて行く気にもなりません。そんな訳で、この花の季節に尾瀬に行っていないので、写真は八幡平で撮影したものです。
尾瀬のページにミズバショウとこの花を欠く訳にもいきませんので.....
そのうち、尾瀬でも撮影してこようと思っています。

コバギボウシ (ユリ科)
Hosta albo-marginata

高山植物写真館に入れたら叱られそうな花です。九州から北海道まで広く分布します。 ニッコウキスゲが終わると尾瀬の湿原の主役はこの花に代わります。ニッコウキスゲで賑わった尾瀬も、この花が咲く頃には静かな湿原に戻ります。 実をつけたニッコウキスゲの間から花茎を伸ばしていますが、ニッコウキスゲの葉に隠れて本種の葉は見えません。コバギボウシの葉は条脈が目立たないことと葉の基半部が急速に細くなっているのが特徴です。
別名をミズギボウシと言います。白花もあります。

コオニユリ (ユリ科)
Lilium leichtlinii var. maximowiczii

この花も高山植物写真館に入れたら叱られそうな花です。北海道から奄美大島まで分布します。
日当たりの良い湿った場所に生えます。ニッコウキスゲが終わった尾瀬の湿原では、コバギボウシと共に目立つ花です。
コオニユリは日本の在来種です。同じような花にオニユリがありますが、これは外来種です。

ミズバショウ (サトイモ科)
Lysichiton camtschatcense

某有名唱歌のおかげで尾瀬の花のように言われていますが、尾瀬の固有種なんかではなく、高層湿原ではごく普通の花です。 もっとも大群落となると限られてきますが。
夏になると、キャベツの外葉のような大きな葉っぱをバサバサと繁らせ、春先の可憐な姿には及びもつきません。 とても夏の思い出なんかになるワケありません。
環境破壊が深刻な尾瀬では、富栄養化の為にミズバショウが巨大化していました。白い仏炎苞の大きさは大きくても掌大ですが、15年位前は小屋の付近ではコピー用紙を撒き散らしたかのように巨大な花が咲いておりました。 最近は環境対策が進んだのか以前のような巨大ミズバショウは見掛けなくなりました。
至仏山と燧ヶ岳をバックに咲くミズバショウを載せました。

ザゼンソウ (サトイモ科)
Symplocarpus foetidus var. latissimus

ミズバショウに先駆けて雪の残る湿地に咲きます。 暗褐色の仏炎苞の形が座禅を組んだ僧侶の姿に似ていることから、この名があります。仏炎苞の色には個体差があり、中には白に近い黄色いものまであります。 尾瀬でこの花を見ようとすると、4月下旬の残雪の頃となります。 この年は雪が多く、ミズバショウと一緒にザゼンソウを見ることが出来ました。

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