◆ 南アルプスの花(1) ◆
最終更新日;2014年10月26日

南アルプスの花(1)には、双子葉合弁花(キク科からツツジ科)の30種(35枚)を収録しています。
双子葉離弁花と単子葉類(ミズキ科からラン科)は、南アルプスの花(2)をご覧下さい。


ミネウスユキソウ (キク科)
Leontopodium japonicum f. shiroumense

エーデルワイスの仲間で低山に分布するウスユキソウの高山変種とされます。ハヤチネウスユキソウのように特定の高山の固有種ではありませんが、この花が分布するのは南ア、北ア、白山、早池峰山、岩手山、焼石岳だけです。細部は各地で若干異なっており、基準標本は白馬岳です。 普通の葉っぱと苞葉がほとんど同じ形をしており、個体によっては綿毛が殆どなく、ウスユキソウとは思えないようなものもあります。 左の写真は南アルプス北岳で撮影したもので、南アのものは葉や苞葉が楕円型を帯びますが、右の早池峰のものは葉や苞葉がくさび型です。
近縁種には、ハヤチネウスユキソウオオヒラウスユキソウミヤマウスユキソウホソバヒナウスユキソウエゾウスユキソウ及びヒメウスユキソウがあります。

ウサギギク (キク科)
Arnica unalaschkensis var. tschonoskyi

根生するへら形の葉をウサギの耳に見立ててこの名前があります。 どこの高山でも見られる高山草原の代表的な花で、この花を見かけるようになると稜線まで、あとひと頑張りとなります。 登山道の脇などにも進出しているので、写真に撮り易い花です。 別名をキングルマと言い、明るい黄色の花が真夏の太陽の日差しを浴びている姿は、超ミニのヒマワリといった感じです。
右の写真は夕張岳で撮影したエゾウサギギク(A. unalaschkensis)と思われる花で、学名上はこちらの方が母種となっています。 エゾウサギギクは北海道の高山に、ウサギギクは本州の高山にというように明確に分布していません。エゾウサギギクは北海道に、ウサギギクは本州に多いといったところです。 一番の決め手は筒状花の筒の部分に毛が無いことだそうですが、高山植物を採取して花を分解して調べた訳ではありませんので断定は出来ません。全体に茎や葉に毛が多いといった特徴があるので、多分そうだろうなという程度で区別しました。
ガスの中で咲いているエゾウサギギクの群落は幻想的でした。

ミヤマコウゾリナ (キク科)
Hieracium japonicum

顔剃菜のような気もするのですが、コウゾリナとは漢字で書けば髪剃菜です。 葉がカミソリのような形をしているので、この名があります。 小さなタンポポのような花です。但し、タンポポは頭花が1個ですが、こちらは2〜5個はあります。
属が異なる植物にカンチコウゾリナ(Picris hieracioides var. alpina)があります。外観も名前も似ているので大変ややこしいです。

タカネヒゴタイ (キク科)
Saussurea triptera var. minor

トウヒレンの仲間で高山帯に登った種類です。ヤハズヒゴタイの高山型で、南アルプスなど限定された山のみに分布します。 写真のものは、頭花が大きくて単生しているので、厳密にはシラネヒゴタイ(var. kaialpina)と思われます。 アザミのような感じですが棘はありません。

タカネヤハズハハコ (キク科)
Anaphalis lactea f. alpicola

別名タカネウスユキソウとも呼ばれますがウスユキソウの仲間ではなく、ヤマハハコの仲間です。 頭花の周りの総苞片は6〜7列あり、下部の総苞は写真のように赤色を帯びるものもあります。 全部白いものも多いですが、見栄えがする赤色を帯びたものを掲載しました。
葉に柄がなく基部が茎に直接つく様子を矢筈(矢の端の弓弦を掛けるところ)に見立ててこの名前があります。

ミヤマアキノキリンソウ (キク科)
Solidago virgaurea ssp. leiocarpa f. japonalpestris

都会の空き地を席巻するセイタカアワダチソウの仲間です。 セイタカアワダチソウは北米原産の帰化植物ですが、こちらは純粋の在来種です。 秋の野山で見られるアキノキリンソウの高山変種です。 高山草原が本来の棲み家なのでしょうが、高山帯でも見られます。 写真のものも稜線近くで撮影したもので、矮小化しています。 コガネギクという別名もあり、個人的にはこちらの名前の方が好きです。

タカネコウリンカ (キク科)
Senecio takedanus

南北アルプスと八ヶ岳のみで見られます。 写真のものには殆ど毛が見られませんが、全草が白い毛で覆われているものが多いです。 濃黄色の花と黒い総苞とのコントラストの美しさがこの花の特徴です。 この花の基準標本は八ヶ岳とのことですが、登った時期にもよるのですが八ヶ岳では少なかったです。 北岳周辺ではかなりの個体数を見ることが出来ます。

キタダケヨモギ (キク科)
Artemisia kitadakensis

南アルプスの固有種です。 葉や茎は銀色の細かい毛で覆われるので、ストロボで撮影すると、ご覧のように銀色に光って大変きれいです。 ヨモギの仲間ですから花はたいしたことはありませんが、葉は細かく羽状に裂けて美しいので、お花畑の脇役としては申し分ありません。茎が叢生するので、かなりの大株になります。

ハハコヨモギ (キク科)
Artemisia glomerata

北岳では花期になるとたくさん見られるので、どこの山にもあるようですが、北岳と木曽駒ヶ岳のみに分布します。 ヨモギの仲間ですが花が上向きに咲いてハハコグサのようなのでこの名前があります。
写真は蕾に近い状態のものです。右下の円内に開花時の写真を組み込みましたが、所詮ヨモギの花ですから開いても特に美しいという訳ではありません。
近縁種にはエゾハハコヨモギがあります。

イワインチン (キク科)
Dendranthema rupestre

高山植物にキク科は数ありますが、園芸植物の"菊"と同じキク属では唯一の高山植物です。 園芸植物の菊が花弁状の舌状花からなる美しい花をつけるのに対して、筒状花のみから構成される地味な花をつけます。 海岸で見られるイソギクやシオギクに、より近い種類です。 東北南部から南アルプスに分布します。
インチンとは、ヨモギの漢名で、漢字では岩茵蔯と書きます。 尚、コンピュータで通常表示できる漢字に"ちん"の字はありませんが、unicodeに対応しているブラウザでは表示されていると思います。unicode非対応ブラウザをご利用の方の為に画像で示すと となります。

ヒメシャジン (キキョウ科)
Adenophara nikoensis

山の天気は急に変わります。急速にガスってきたなかでストロボ撮影しました。 雨まで落ちてきてレンズに水滴がついてソフトフォーカス効果がついたものとなりました。
ヒメシャジンは変異の多い植物です。右上円内の写真は萼片が全縁でミヤマシャジン(var. stenophylla)と呼ばれるものです。全体写真の方の株は葉が細いので、正しくはホソバヒメシャジン(f. linearifolia)でしょう。 尚、ヒメシャジンの葉は互生するのが普通ですが、まれに対生する株があります。写真の株の葉は対生しており、珍しい株といえます。
沙参とは同属のツリガネニンジンの漢名で、次のホウオウシャジンやハクサンシャジンなど高山植物には沙参の名のつく植物が幾つかあります。

ホウオウシャジン (キキョウ科)
Adenophara takedai var. howozana

山地に生えるイワシャジンの高山変種とされ、南アルプス鳳凰三山のみで見られる固有種です。 岩の割れ目などに生え、花はもとより茎や葉なども垂れ下がって咲くのが特徴です。 登った時期が悪かったのか、私が出会えたのは花数が少ないものばかりでした。 左の写真はアカヌケ沢ノ頭で写したものですが、右は鳳凰小屋の花壇に咲いていたものです。

ソバナ (キキョウ科)
Adenophara remotiflora

亜高山帯でも見られますが、どちらかと言えば山の花でしょうか。 漢字では岨菜と書きます。岨道(山の道)に多い菜という意味だそうです。 確かに北沢峠から仙丈岳への登山道沿いにはたくさん咲いていました。 樹林帯の下で、長い茎の先に幾つも花をつけ、風に揺れている姿には味わいがあります。
菜と書く位ですから食べられ、味は癖がなく美味しいとのことです。 もっとも私は食べたことがありませんし、北沢峠付近での植物採取は勿論禁止されています。

チシマギキョウ (キキョウ科)
Campanula chamissonis

紫色の高山植物の代表選手です。 チシマギキョウと次のイワギキョウは似たような花で似たような環境に生えますが、両者は住み分けているようで、混生するのはあまり見かけません。 南アルプスでは北岳周辺はチシマギキョウが優勢でイワギキョウは稀です。しかしながら、北岳肩の小屋付近ではチシマギキョウ優勢の中にイワギキョウを見かけることが出来ます。
北岳山頂から北岳山荘にかけての一帯ではチシマギキョウ一色です。両者は良く似ていますが、チシマギキョウの萼の形は三角形をしていることと、花冠の縁に毛が生えていることが大きな差です。 花の色は紫がかかっています。

イワギキョウ (キキョウ科)
Campanula lasiocarpa

前種との区別の最大のポイントは萼が糸のように細いことです。花冠の縁には毛が生えていません。花もやや小ぶりです。 花の色はチシマギキョウに比べて明るい青色です。 チシマギキョウがどちらかというと横から下向きに花をつけるのに対して、イワギキョウは明るい青色の花をやや上向きにつけます。 この花の咲き方は傾向があるという程度のもので、絶対的なものではありません。
北岳周辺では稀だった本種も間ノ岳の山頂付近では優勢となります。

クガイソウ (ゴマノハグサ科)
Veronicastrum sibiricum ssp. japonicum

何段にも輪生する葉を傘に見立てて、九蓋草(九階草)といいます。 高山草原の代表的な花で、針葉樹林の縁などでも大きな株を見かけます。写真のものは、稜線近くで見かけた株で、流石にこのような場所では矮小化して背丈が低くなっています。 高山では輪生する葉が9段もあるような株は無く写真のものも精々5〜6段程度です。
長い花穂が美しいのですが、下から上に順に咲いてゆくので、花期は長い方ですが見頃は限られています。
都内の向島百花園で栽培されているグガイソウを見たことがありますが、背丈は2m近くもあり輪生する葉も9段以上はありました。しかも花穂の脇から小さな花穂が4〜5個も生えて、自然に咲いているものとは全く違った姿になっていました。高山植物を平地で栽培することは愚かな行為です。

ミヤマクワガタ (ゴマノハグサ科)
Veronica schmidtiana ssp. senanensis

中部山岳では比較的多く見られますが、花色は淡紫色です。 ところが、北岳周辺では赤花が普通です。 小さな花ですが、かなり強い赤なので草むらの中でも結構目立ちます。 2本の雄しべと1本の雌しべが長く突き出し、その形が兜の鍬形に似ているのでこの名前があります。
北海道の亜高山帯や高山帯には、近縁種のキクバクワガタが分布しています。
ヨーロッパ原産の帰化植物で春先淡紫色の花をつけるイヌノフグリも本種の近縁種です。

コバノコゴメグサ (ゴマノハグサ科)
Euphrasia matsumurae

この花は中部山岳では比較的多く見られるのですが、山によって細部が異なり、別種や変種が存在し、区別が大変です。 私のような素人は、南アルプスで撮影したからコバノコゴメグサで間違いなかろうという程度です。 イネ科やカヤツリグサ科の植物に半寄生する一年草です。

タカネシオガマ (ゴマノハグサ科)
Pedicularis verticillata

中部山岳では、ごく一般的で、お花畑のピンク色の代表選手です。 ところが中部山岳以外では大雪山と至仏山だけとなります。東北ではミヤマシオガマが主役です。 南アルプスではミヤマも分布するのですが、タカネの方が圧倒的に多いです。 写真のものは単一の大株ですが、通常はシコタンソウやハハコヨモギ等と混ざって咲いており、単一群落よりも美しい光景を作り出しています。写真右下の白い花はシコタンハコベです。
ミヤマシオガマをご覧になりたい人はこちらへ。

ヨツバシオガマ (ゴマノハグサ科)
Pedicularis chamissonis var. japonica

葉が4枚づつ輪生するのでこの名前があります。全国に広く分布します。 左の写真は北岳のものですが、これをクチバシシオガマ(f. longerostrata)として区別することがあります。 タカネシオガマやミヤマシオガマが高山礫地に生えるのに対して、ヨツバシオガマの本来の棲み家は高茎草原です。 しかし南アルプスでは高山帯でも多数見られ、高山礫地のものは高茎草原のものと比べると矮小化し草丈は10〜15cm位です。
東北や北海道のものはやや大形で、キタヨツバシオガマ(var. hokkaidoensis)として変種としています。特に礼文島のレブンシオガマは大形で、70〜80cm位の大きな株となります。

イブキジャコウソウ (シソ科)
Thymus serpyllum subsp. quinquecostatus

ピンク色の小花を密生させるので、まるでピンクのマットのような感じで高山の砂礫地や岩の上に広がっています。 属の学名からも判るように香辛料などに使われるタイムの仲間で、鼻を近づけると僅かに芳香があります。 生育範囲は結構広く、低山などでも見られます。

ミヤマハナシノブ (ハナシノブ科)
Polemonium caeruleum subsp. yezoense var. nipponicum

北岳の高茎草原帯では非常にたくさん咲いており、高茎草原の主役となっていますが、北岳と北アルプス清水岳のみに分布する稀産の花です。
るり紫の花と黄色い葯の取り合わせが大変に美しいです。 この美しい花を茎の先にかためてつけて、雪渓の端にたたずむ姿は北岳ならではの絶景です。
北海道には近縁のカラフトハナシノブが、礼文島にはレブンハナシノブが分布します。

アカイシリンドウ (リンドウ科)
Gentianopsis furusei

南アルプスと白山のみに生育します。 南アルプスって、正式名称は赤石山脈なんですよネ。 南アルプスには何回も登っていますが、赤石岳にはまだ登っていないなあ。 しかし高さで一番でもない山がどうして山脈の名称になっているんだろう。
花の話とは全く関係ないですネ。 北アルプスには近縁のシロウマリンドウが生育します。こちらの花色は白です。

サンプクリンドウ (リンドウ科)
Comastoma pulmonarium

名前は三伏峠に由来し、南アルプスのみに生育します。 北岳のお花畑に最後に登場する花です。サンプクリンドウとヒメセンブリの後には雪がくるだけです。
花冠の下から2/3位が筒状で、ちょっとくびれて、さきっぽだけが5弁に裂けるという独特の花形です。 サンプクリンドウの仲間は世界でも7種しかなく、日本で見られる唯一の種です。
右は、シロバナサンプクリンドウ(f. albiflorum)です。サンプクリンドウの白花は結構多いです。

ヒメセンブリ (リンドウ科)
Lomatogonium carinthiacum

南アルプスと八ヶ岳のみに分布します。 日本で見られる唯一のヒメセンブリ属の花です。 図鑑によってはセンブリ属に分類されることもあります。
花期でもこの花の数は非常に少なく、見つけるのに苦労をしました。 この花を撮影した日は一日中歩き回って、2輪に巡り会えただけでした。 文字通り稀産種です。 太いめしべがローソクのように立っています。
アカイシリンドウとのツーショットです。

トウヤクリンドウ (リンドウ科)
Gentiana algida

気難しい花で、ちょっとでも曇っているとすぐに花を閉じてしまいます。 アサガオの蕾のようにねじれて閉じていた花が開き始めたところです。 8月から咲き出しますが花期は長いほうです。
当薬竜胆と書きます。根に苦味の成分があり薬(当薬)として用いられたことから、この名前があります。大雪山のものはやや矮性で、クモイリンドウとして別種とする場合もあります。
花にある斑点の色は、淡い緑色から殆ど黒に近いものまで変化に富みます。
クモイコザクラ (サクラソウ科)
Primula kitadakensis

学名からだと北岳の固有種のよう思えますが北岳の固有種ではありません。南アルプス以外にも分布し、八ヶ岳や秩父でも見られます。基準標本は南アルプス鋸岳です。 かなり以前に発行された雑誌に撮影場所が北岳という本種の写真がありました。しかし、この花が咲く頃はキタダケソウの季節で、この時期に北岳には登っていますが、見かけたことはありません。
この花が咲く頃の鋸岳への登山は難易度が高いので、八ヶ岳で撮ろうとして何回か挑戦しましたが見つかりませんでした。この写真は南アルプスの前衛山で撮影したものです。 この山でもたった一箇所の岩場で咲いているだけでした。
独立種ではなくコイワザクラの変種(Primura reinii var. kitadakensis)とする見解もあります。

シナノコザクラ (サクラソウ科)
Primula tosaensis var. brachycarpa

イワザクラの変種で南アルプスに特産します。 前種と似ていますが、葉の切れ込みが浅く丸みを帯びています。 生育するのは、亜高山帯から山地と前種と比較すれば、比較的低い場所に生えますが、それでも南アルプスでは標高1600m位の場所です。 南アルプスは山梨,長野,静岡の3県に跨がる山塊ですが、名前の通り南アルプスの長野県側の石灰岩の岩壁に生えます。

ウラシマツツジ (ツツジ科)
Arctous alpinus

花期は大変に早くて6月に他の花に先駆けて咲きます。 実際の花はサムネイルの写真よりも小さいです。
この花が主役になるのは秋です。 それこそ火のように真っ赤に紅葉します。 右側は大雪山で撮影した紅葉の写真です。
名前の由来は、葉脈に沿った窪みが葉の裏で顕著なので裏縞躑躅という説と、花が浦島太郎の釣りの魚籠に似ていることから浦島躑躅とする説とがあります。

コケモモ (ツツジ科)
Vaccinium vitis-idaea

地域による多少の差違はありますが、ユーラシア大陸や北米など周北極地方全域に分布します。 苔桃と書くように実は食べられ、コケモモのジャムなどがあります。 光沢のある葉と釣鐘形の可愛い花が特徴です。花色は白からピンクのものまであります。南アルプスでは白花が殆どで、大雪山では右下のような淡ピンクが多いです。

南アルプスの花(2)  双子葉離弁花と単子葉類(ミズキ科からラン科)
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