home>将棋の論理
将棋の論理
 目次。将棋の強さとは何か? 手順をどう読むか? どんな順序で手を読むか? 将棋に強くなる方法は? 序盤に考えることは? 中盤の局面評価の方法は? 終盤の局面評価の方法は? 強くなるコツはあるか? コンピュータはどのぐらい強いのか? 関連&参考文献

.将棋の強さとは何か?
.読みのヒューリスティックスを身につける

 プロはときに百手以上を読むと言われますが、それでも可能な手のすべてを読むことはできません。直感的に不要な手は読まずに捨てているのです。読む必要のある展開とない展開を読む前に区別する能力が強さの源泉です。
 将棋には格言がたくさんあります。それらの多くは、よい手のパターンを述べたものですので、指す手を考えるときの参考になります。
 またほとんどの場合、その手が良い手だったか悪手だったかは、その後の3〜9手程度で判明します。すなわち、読む深さは9手読めればほとんどミスはなくなるのです。可能性のある展開を広く読む力こそが強さであると言えるでしょう。
 将棋の強さは、空間計算能力とゲシュタルト認知ということになります。
 
※ヒューリスティックス:不完全だが簡単で効率的な思考方法・発見的思考とも
※空間計算能力:映像を変化させて思考する能力
※ゲシュタルト認知:形を見て直感的に判断する能力
 

.手順をどう読むか?
.手筋を探す

 一連のある程度決まった手順を手筋といいます。手筋は大きく分けて、中盤の手筋と終盤の手筋にわかれます。
 中盤の手筋は、駒の交換の手筋です。駒得や拠点作りが狙いとなります。
 駒損を少なく、持ち駒を増やす手順を探します。
 駒損の感覚は、対振り飛車、横歩取りと、その他の相居飛車では全くことなります。対振り飛車では駒損がそのまま敗戦に結びつきやすいのが特徴です。矢倉では、少しの駒損は許されます。横歩取りの後手では、かなりの駒損まで許されます。
 矢倉では、中盤の手筋がそのまま寄せへと結びつくため、手番をそのままに攻め続けることができます。
 終盤の手筋は、寄せの手筋です。相手玉を詰めることが狙いとなります。
 中盤でも終盤でも、動かしたり打ったりした駒を相手が素直に取ると痛打になる――取ることができない手から読むと手筋が見つかりやすいようです。
 

.どんな順序で手を読むか?
.強い手から順に読む

 相手の立場になって、どんな手を指すか考えます。そのとき、1.持ち駒、2.ぶつかっている駒、3.その他、の順にどんな手があり得るか考えます。1・2・3の中では、強い駒から順に考えます。相手の手をよく考えることでポカを減らすことができます。
 もちろん、同じように自分の手についても考えます。まあ、自分の手を考えずに指す人はいないと思います。
 相手が一見、不思議な手を指したときは要注意です。こうしたときは、何か考えのあってのことが多いものです。
 また、持ち駒や、持ち駒になりそうな駒の手筋が決まった場面から逆算して、そこへ導けるかを読みます。相手の分についても同じです。
 将棋の手の善し悪しは、相手の手との比較で決まります。これを将棋の相対性理論と呼びます。即詰み以外には、絶対的な好手、妙手は存在しないのです。詰めろや必死になる手でも、相手の次の手によって即詰みがあるのなら、即詰み>必死・詰めろとなり、悪手ということになります。駒得の計算でも常に相手との比較で決定されるのです。従って、相手の手を読まないことにはどんな手の善し悪しも決定することができないわけです。
 
【一局の前に確認:読みの検索順序】
1.相手の持ち駒手筋
2.相手の前線駒変化
3.自分の持ち駒手筋
4.自分の前線駒変化
5.相手の駒の出足
6.自分の駒の出足
 
序盤の手は相手との会話
・ここまで陣地取っていいですか?
 
中盤以降、駒に当たりがあるとき手の種類
・応じる手
 相手の駒を取る
・支える手
 駒を追加する
・逃げる手
 駒を退避する
・攻める手
 違うところで駒をぶつける
 
終盤
・相手玉への距離を、自玉までの距離以下に保つ手を指す。
・詰みの手を探す
・詰めろの手を探す
・次に詰めろがかけられる手を探す
・取るか無視すると次が詰めろになる手を探す
 

.将棋に強くなる方法は?
.形を感じ筋を見抜く練習をする

 たくさん実戦を指します。そして感想戦を行い、悪手を確認して、それを指さないように気をつけます。
 詰め将棋をたくさん解いて、計算力をつけます。読みを正確にするのです。
 次の一手集をたくさん解いて、パターンや手筋を読み取る。どの筋を読むのか限定できます。
 トッププロは、瞬時に数十手を読むことができますが、これは頭の回転が速いのではなく、チャンキングの技法によります。駒をやりとりのパターンが頭に一つのかたまりとしてインプットされており、5〜13手ぐらいを1手のように扱って読むことができるのです。
 プロの棋譜を並べる。次の一手を見るたび一気に1〜5手予測して入力し、訂正しながら打ち込みます。この場合、棋譜が書かれているものは手が見えてしまうので不便です。そこでWebで駒を動かせる棋譜を利用したり、ソフトを使って一度取り込み動かせるようにして予測入力するのがよいでしょう。
 人間の記憶は、本質的に静的なものではなく動的なものを覚えるようにできていますので、パソコンを使うことにより駒の動きとして覚えることができ効率的です。
 得意戦法を持つ。対居飛車急戦、対居飛車持久戦、対振り飛車急戦、対振り飛車持久戦の4つのパターンにおける基本戦略を持っておくのがよいでしょう。こうすると、序盤に時間を使わずにすみます。
 

.序盤に考えることは?
.相手の同じ駒と比べ位置の価値を比較する

序盤に考えること
・金銀がお互いに組み合っているか
・飛角の利きが通っているか
・相手の駒と出足を比較する
 
●守備力の高い駒組みとは?
 駒同士が利きあっている囲いは優れています。打ち込まれても当たりにならないため、手番を取られずにすみますし、両取りなどもなかなか生じません。浮き駒のない陣形がよいのです。
 また、自陣、すなわち、内側3列目までの中に打ち込みの隙間がないのも優れています。飛車の横利きなどがうまく通っているとそうした陣形になります。金銀がしっかりと組み合い、飛車角の利きが通っているのが理想的な陣形です。
 玉の周囲に駒がいて王手がかけられない囲いは優れています。代表的なものは穴熊です。
 戦場から玉が遠いと、守備に強くなります。というのも、駒を取り合ったとき、王手は無視できないからです。駒の取り合いで王手がかかると、王手をかけられた側がたいてい駒損してしまいます。王飛接近すべからずといい、飛車から玉が離れている方がよいのはそのためです。もちろん、角からも離れている方がよく、そのため、飛車角と玉を分離する振り飛車戦法は守備に強くなります。
 玉が四隅にいる囲いも堅くなります。攻撃では、多方向から駒の利きの焦点を合わせて攻めるわけですが、四隅では2方向が将棋盤の外になり、攻める方向が少なく、駒を集中しにくいのです。居玉は避けよというのは、逆に攻め駒を集中しやすいからです。
 金は角筋を避け、銀を角筋に置くのがよい形になりやすいようです。2二のように足して偶数になる位置に金を置かずに銀を置くのです。守備力の低い角を金と交換するのは接近戦になると有効なので、角を避けておくのです。それに対し、銀は実質的に角の下位の駒なので、角を銀と交換しても意味なく、角を避ける必要がありません。
 駒の種類によっても良い形があります。金と銀の場合、金の真上、斜め上に銀がある形です。飛と桂なら桂の上に飛がいる形です。角と桂なら、桂の利きに角がいる形です。
 
●動きやすさ
 戦いは相手に応じて行います。自分の好きなように指すことはできません。そのため、できるだけいろいろな作戦がとれるように幅を持たせておくのがよい駒組みです。
 駒の動きが窮屈ですと、相手が戦いの場所を変えたとき対応できなくなったりします。
 たとえば、角の横に金を立てる、3二金−7八金は、戦法の幅をせまくしてしまいますので、相手の飛車先の歩が近づくまで指さない方がよいものです。また、最近の矢倉戦では飛車先の歩もつかずにすませます。これもどこを戦場にするかをはっきり示さないでおく効果があります。
 また、駒組みの最中の守備力も問題となります。穴熊や銀冠に組む直前には金銀が離れます。この瞬間を狙って戦いを仕掛けられることがあります。
 形の悪い駒組みは、それ自体は悪手ではないのですが、相手の手を広くするため不利になります。将棋は一手ずつしか指せませんから、手が広いといろいろと指している内に守りきれなくなります。また、人間の思考力には限界がありますので、相手の手が広いと読む手が多くなりミスが出やすくなります。そのため、局面が不利になると手が広くなるように指すのが基本です。
 
●どんな作戦をとるか
 陣形によって戦いの方法が違います。直接相手の玉を詰めることを一直線に狙うか、駒得を狙うか、相手の攻めを切れさせて指し切らせて勝ちを狙ったり、押さえ込みによる勝ちを狙う方法などがあります。横歩取りやひねり飛車のように大駒で戦うか、矢倉のように金銀を中心に戦うかというように、活躍する駒も違います。
 飛車と角をどう使うかで陣形を考えることができます。飛車で相手の玉を狙うのは相振り飛車や矢倉、相掛かり戦法です。角で相手の玉を狙うか飛車を狙うかも重要です。角で飛車を狙うのは居飛車の対振り飛車です。振り飛車側は、相手が居飛車穴熊なら角で玉を狙います。
 大駒の利きでどこを的にするかを考えておく必要があります。
 遠見の角といい、角の利きを利用して攻撃するのは攻めの続けやすいよい戦法です。というのも、他の駒との連携がはかりやすいからです。駒の多くは前後の動きが中心なので、斜めの角は組み合わせて集中できるのです。
 バランスと囲いの堅さのどちらを重視するかの選択があります。穴熊のように堅いがバランスの悪い陣形は、失敗すると手が狭いためワンサイドになります。ただし、うまくいくと攻め一方に徹することができます。ツノ銀中飛車のようなバランスのよい戦法では、なかなか相手に仕掛けの隙を与えないのが特徴です。
 
●駒の出足に注意
 駒組みの段階では、玉を囲い、攻撃の布陣を整えます。このとき無駄なく動いて相手より早く準備を整えた方が有利となります。将棋は先手の方が勝率が高く、攻撃も仕掛ける側の方が有利と考えられるのです。
 将棋は敵味方ともに同じ駒を同じ状態からスタートします。ですから、それぞれに対応する駒の状態を比較することで、序盤の善し悪しを比較できます。玉は玉と、銀は銀と、桂は桂と比較して考えるのです。
 玉の位置がどれだけ端に寄っているか、飛車側の銀や桂が敵陣にどの程度近づいたかなどを、相手の対応する駒と比較して考えるのがよいわけです。
 特に重要なのは銀です。銀には銀をという格言があります。銀の進出には同じく銀を繰り出して対抗しないと防御しにくいのです。
 
●優位な体制を築いて作戦勝ちを狙う
 駒がぶつかるまでにもたくさんの駆け引きがあります。相手より強い囲いを組んでしまう、あるいは相手より先行して攻撃を仕掛けるなどです。この場合、どういう戦況かによって作戦が異なります。
 急戦で勝利にするには、駒の利きを集中させる必要があります。この場合、多方向から仕掛けられるように、バランスのよい陣形を組みます。
 持久戦で勝利するには、仕掛けを防ぎつつ、駒組みの進展性を高くなければなりません。この場合、玉の囲いを重視し、バランスより堅さを狙います。
 作戦勝ちするには、相手に陣形を自由に組ませない必要があります。それには、駒の利きを一点に集中するなど、揺さぶりをかけることになります。位を取って相手の動きを釘付けにすることもあります。
 それにより相手の駒の利きを封じることです。飛車角の利きを封じることです。あるいは、棒銀できた相手には、別の場所に利きを集中し、銀を立ち往生させて、「銀が泣いている」状態に追い込むこともあります。
 
●まず駒得を狙う
 将棋では、駒は一つずつ動かします。飛車や歩のように差があっても一つずつ動かしますので、一度に一枚の駒しかとれません。そのため、序盤のように盤面に駒がたくさんある場合、ただで駒を取ることは非常に困難です。そこで序盤では、機能の低い駒を高い駒へと交換することを狙うことになります。歩で香や桂を狙い、桂香で金銀を狙い、金銀で飛車角を狙います。より有能な駒へと交換することを狙うのが序盤の基本です。
 駒には機能の互換性があります。タテ駒である香金飛、ナナメ駒である桂銀角に分けられるのです。こうしたタテ駒同士、ナナメ駒同士は下位から上位への交換が絶対的に有利になります。すなわち、角に銀を、飛車に香や金をぶつけるのが不利になることは少ないのです。
 ところが、タテ駒とナナメ駒の交換については、まったく状況次第となります。一般に終盤はタテ駒の価値が高くなるので、ナナメ駒でタテ駒を狙うことが多くなります。
 駒には利きのない死角の部分があります。どのような陣形を組んでもそこが仕掛けのポイントになります。代表的な死角は、桂頭、角頭、飛車のこびんの3つが挙げられます。まず歩の突き捨てと交換により歩を入手し、香や桂を狙います。また、銀を繰り出して角や飛車を狙うのです。
 駒には相性があり、狙いやすい駒があります。持ち駒を得たらどの駒を狙うか読む順を考えますと、
 
 歩:桂、香、角、銀、金、飛
 香:角、飛
 桂:金、香
 銀:角、金、飛
 金:玉、飛、角
 角:玉、飛、金、香
 飛:角、玉
 
 となるでしょう。
 
●駒の交換
 最初に交換される駒は歩です。しかし、歩の交換そのものは仕掛けには結びつきにくいものです。
 あるいは序盤に角が交換されるケースもあります。これも角換わりと呼ばれ、これにより先端が開かれるというわけではありません。
 先端が開かれるきっかけとなる駒の交換は、銀、桂、角による攻撃です。この3つの駒は斜めに動くため、動きを止めにくいからです。他の駒、香は縦にしか動かないため歩しか取れず、駒損にしかなりません。飛も歩が邪魔な上に何を取ってもまず駒損です。金は動きが鈍く相手に逃げられてしまいます。
 銀の攻撃では、銀で銀を取る交換、銀を捨ててと金をつくる攻め、銀で香を取る端攻めがあります。
 桂の攻撃では、桂で桂を取る交換や、香を取る端攻めがあります。桂による攻撃には、既に歩を持ち駒にしている必要があります。桂は利きが狭く、相手の駒が逃げられないためにも歩が必要になるのです。
 角の攻撃では、角を取る交換、銀を取って切り崩す攻めがあります。通常、相手が避けますので、金や飛を取らせてもらえることはありません。角の攻撃では、取った駒を使ってすぐに打つことが狙いにあります。
 
●どの駒を交換するか−相互の陣形から有利な持ち駒を目指す
 ある程度、棋力があるもの同士の対戦では、仕掛けによって駒得することはまず不可能です。実際には駒の交換から仕掛けが始まります。相互の陣形を見比べて、何が持ち駒だと有利か考えることになります。
 振り飛車対居飛車の対決では、居飛車側は角交換を狙い、振り飛車側は飛車交換を狙います。居飛車の船囲いは飛車に弱く、振り飛車の美濃囲いは角に弱いためです。
 横歩取りの後手は桂交換を狙います。先手中住まいの場合、7筋が桂に弱いためです。
 矢倉戦では、桂や銀の交換を狙いますが、この場合は敢えて駒損でも仕掛けることがあります。矢倉戦では、攻め駒と守り駒が向かい合っています。交換相手の駒が直接守り駒となるので、仕掛けが即寄せとなるためです。
 端棒銀では、銀と香を交換します。この場合も駒損になりますが、守備駒と攻撃駒の関係なので成立します。
 
●手番と浮き駒
 攻撃では、最初駒損から始めることがあります。ところが、そうして駒を交換していく内に、陣地を破り駒損を回復することができます。
 守備の金銀は、お互いの利きで浮き駒がないように連携して囲いを作ります。交換していくと、駒が減りますから、駒の利きが減り、浮き駒ができてしまいます。すると、両取りがかかりやすくなり、駒損が回復できるわけです。
 浮き駒という観点を考えると、攻撃側の駒は敵陣に前進しているわけですから、ほとんどが浮き駒になっています。ですから、自分の手番ならよし、しかし相手の手番にしてしまうと、反撃を受けます。そこで、一度攻め始めると、簡単に手をゆるめることはできず、相手の手番にするなら、反撃に備えた体制が必要になります。
 この手番を維持し、かつ敵陣を乱す技法が歩の叩きです。歩は取っても得にならないため、当たりが強く無視しにくいのです。そのため手番を維持しつつ攻撃することができます。戦いは歩の突き捨てからと言われるのは、このとき歩を打てるようにするためです。
 
●手番の価値
 将棋には、自分が手を選ぶことができる度合いがあり、手を選べる側を手番を持っているといいます。序盤は、駒組みの段階ですから、手番は実際の指し順通り一手ずつ交代と考えられます。
 しかし、中盤となり、駒を取る手などが生じると、その駒取りを防ぐ必要などが生じるため手番の交代は一手ずつではなくなります。そして、寄せの段階になると、一気に最後まで数十手も攻撃側の手番が続きます。
 一手ずつだった手番は突然に交替がなくなります。中盤で駒が強く当たり出した瞬間から、攻めが切れるまで片方の手番が一方的に続きます。中盤では手待ちすることがあるように、手番には意味がなかったりするのですが、ある瞬間から手番に絶対的な価値が生まれるのです。一手一手細かく振動していた手番という振り子は、段々と大きく振れ動くようになり、最後は片方に完全に倒れてしまいます。
 プロの将棋では、一手違いで勝負が決まるケースが多くあります。すなわち、手番が逆なら勝敗も逆になるわけです。
 中盤に突如として生じる手番の絶対化の瞬間を見極めることができなければなりません。
 
●弱い手から強い手へと指す
 敵陣攻略のための仕掛けでは、当たりの弱い手から強い手へと順に指すのがコツです。敵陣攻略に必要な手を考え、その中で当たりの弱い手から指すのです。
 攻撃が始まると駒が交換されて、お互いにより強い手を指すことができます。そうなってから、当たりの弱い手を指すと、相手は無視して防御の手でなく反撃の手を指してくることになるのです。
 具体的には、端歩の突き捨てなどがそれに挙げられるでしょう。
 こうした手は、戦いが激しくなってからではもう指すことはできません。事前に必要な手を読み、それを適切な順に指す必要があるのです。
 その局面の玉の緊迫度にふさわしい強さの手を指さなくてはならないわけです。
 
●緩急の変化
 将棋の局面は、双方の玉の詰みまでの手数ではなく、どちらか片方の詰みに近い玉方の状況によって決まります。早く詰みそうな玉の側の状態で局面は決まるわけです。相手への攻撃が中盤でも、自玉が終盤になっていたなら、相手への手も終盤として指さなくてはなりません。
 しかし、状況によっては、中盤から終盤に進まないことがあります。攻めに使う駒を守備に投じると、相手の攻めだけでなく、自分の攻めも遅れることになります。このとき、終盤だった場面が中盤に戻ることがあります。そうすると、手番の振幅も振れがかえって縮みます。
 こうしたときに、無理に手番を維持しようとして攻め続けると駒損を喫して、それが自玉を危険にすることがあります。手番より駒得が優先される状況に戻ることがあるわけです。
 プロなど有段者の将棋では中盤戦が長いのが特徴です。押したり引いたり微妙な駆け引きが粘り強く展開されるのです。
 
●駒得の計算
 駒を取ったり取られたりするとき、駒得するのは最後に取った方です。従って、浮き駒を取った場合、取り返されませんから駒得します。また、王手をすると、相手はそれに対応しなくてはなりませんから、王手で取れる側が有利です。また歩はもっとも安い駒なので、取り返されても損にならず、歩で取る側が有利です。
 一列に並んだ駒を取り合うケースで計算してみましょう。敵味方が遠く離れた2カ所で金がぶつかっています。先手は▲5三金と▲5八金、後手は▽5二金と▽5七金です。他に駒はなしとします。すると、先手が金を取り後手も金を取り、損得はありません。
 しかし、後手の金の後ろに▽5一玉がいると、先手▲5二金、▽同玉、▲5七金となり、先手はもう一枚金を取れます。
 もし、▲5三歩と▲5八金、後手は▽5二金と▽5七金ならどうでしょうか。この場合、▲5七金、▽5三金とすれば、先手の金得です。逆にすると損得がなくなります。
 さらに▲5三歩と▲5八金、後手は▽5二金と▽5七金▽5一玉ならどうでしょうか。この場合、▲5二歩成、▽同玉、▲5七金とすれば、なんと金二枚得です。
 将棋は一手ずつ交代で一枚ずつしか取れないにもかかわらず、これほど大きな差が生まれます。王手歩の取り込み浮き駒の条件をうまく利用することで駒得することができるわけです。
 
●両取り逃げるべからず
 将棋は一手ずつ指します。両取りといっても取れるのは1枚だけです。逃げても1枚取られ、逃げなくても1枚取られるわけです。それなら、逃げずに違う手を指した方が得なわけです。

.中盤の局面評価の方法は?
.生きている駒の点数を合計する

●最善手の計算方法は?
 私たちは、指し手を読むとき、その手を指すとどんなふうに展開するか考え、その結果を比較してよい手を選びます。ですから、どんな局面がよいかを評価する方法が必要となります。
 
●局面評価の方法は?
 局面を評価するには、駒の損得、利き、遊びなどが考えられます。一般に序盤は駒の損得、終盤は相手玉への迫り度合いと考えられます。序盤は絶対評価ができるのにたいし、終盤は相手との相対評価で考えることが必要です。相手玉に激しく詰め寄り詰みへと近づいていても、駒をたくさん渡してしまって自玉の詰みが近づいてしまっては意味がありません。たくさんの駒を持つことはそれ自体に詰みへと近づくという意味があります。評価の物差しとして、詰みまで何手すきかというのが考えられます。詰み、必死、詰めろ、1手すき、2手すき、3手すき、4手すきなどです。当然、これは何手で詰むかではなく、王手しない手の数のことです。
 中盤なら、駒の損得を数えることも有効です。盤面における存在がどの程度の優勢さを示すかの計算によりますと、歩0.53、香1.04、桂1.18、銀2.61、金3.02、角3.58、飛車5.0、と3.11、成香1.51、成桂2.35、成銀2.35、馬6.34、竜8.14と計算されています。角と飛車の差が予想より大きいのが驚きです。また、金と角の差が少ない。相手玉の守備要の金となら角を交換しても損ではないこともわかります。
 
●局面による駒の価値の変化
 駒の価値は局面により大きく変化します。角や桂は終盤の寄せ合いでは玉の詰めに使えず、守備にも利きませんが、中盤の揺さぶりあいでは、その利きの多方向性と奇襲性から価値が高くなります。
 終盤では局面が狭くなり玉の周辺に重点が移り、戦いが接近戦になるためめ、大駒の遠くへの利きの価値が減少します。こういう状態では、大駒を切って金銀をはがすのが有効となります。
 
 駒の価値の変遷の推定。
 
  序中終
歩 ○○−
香 △○△
桂 △◎−
銀 ◎◎○
金 ○△◎
角 ◎◎△
飛 ○○○
玉 !!!
 
 また局面ごとの駒の価値の推定順位です。
 
序 角飛金銀桂香歩
中 角飛銀桂金香歩
終 金飛銀角香桂歩
 
 駒には、ノリ駒とハサミ駒があります。べったりと粘着するノリの駒である金銀と成り駒、全然くっつかず相手を切り取るハサミの駒である角桂飛香などです。ハサミを使って相手の陣地を切り取り、ノリで相手玉のまわりを固めてしまうと勝利するわけです。
 
●遊び駒を作らせる
 将棋はどちらかが詰むことで終了します。そこで詰みから逆算して考えたとき、あってもなくても関係なかった駒、それが遊び駒です。遊び駒は損得の計算からはずすべきでしょう。一般に、盤の端にいたり玉から離れている駒は遊び駒になります。
 将棋は展開していくなかで、指し手の変化は増えていきます。持ち駒が増えると、盤面のどこにでも打てるわけですから、進行とともに可能な手が増加していくのです。しかし、玉を詰めるという目標へと近づくことで、実際にあり得る可能性は狭くなっていきます。
 序盤では駒得を目指します。これは、可能な手を増やすということでもあります。
 しかし、終盤は詰めに必要以上の駒得は必要なく、そんなことをしているとその手数の間にむしろ自玉が詰められてしまいます。
 すなわち、遊び駒は狭くなった可能性の圏外にいる駒のことです。相手を詰める、あるいは相手に詰められるときに登場する以上の持ち駒も、遊び駒です。盤上と盤外の遊び駒を作らないように戦うことが重要です。
 将棋の最後の瞬間には、玉の周り以外はほとんど遊び駒になります。これはちょうど詰将棋に似ています。詰将棋では、詰めるのに関係ない駒は盤面にありません。将棋の終局の盤面から遊び駒をすべて除くと詰将棋ができるわけです。寄せになったら詰将棋の図面をイメージして、不要な図面を描かないようにするのです。
 ※もちろん、実際の詰将棋とは防御側の持ち駒は違います。
 逆に言えば、駒を交換して、相手の守り駒を遊び駒に変えてしまえば敵陣を攻略できます。相手の駒台に遊び駒をつくらせるのです。自玉の陣形を考えて、与えても影響のない駒と相手の守備の駒と交換するわけです。一つの目安としては同じ種類の駒ばかりにしてしまうのがいいでしょう。
 また、自分の駒を遊び駒にしないことも大切です。金銀のように価値がありながら足の遅い駒が玉から離れた盤の端にあると非常に不利です。たとえば、端に残っている桂香を取るのに金を打って取ったりするのはたいてい悪い手です。金銀を玉の周りと盤の中心に集めるのが基本です。
 遊び駒を防ぐ秘訣は一貫した方針で手を指すことです。敵陣攻略に仕掛けて、途中で方針変更すると、その攻め駒がそのまま遊び駒になってしまいます。戦いが激しくなることで、局面が収縮していき、遊び駒になる範囲が広がるのですが、その中から駒がはぐれないように突き進むことが必要になります。
 
●拠点
 拠点は、攻めの軸になる駒です。攻めを続けるのに必要なもので、精算せずに残す必要があります。中盤の目標は拠点作りにあるといってもよいでしょう。どんな駒が拠点となるでしょうか?
 拠点は、敵玉に近くてかつ敵に取られにくいのが理想です。そのため最も強力な拠点は歩です。敵玉近くに垂れた歩、あるいはと金などは最強の拠点です。敵の守備に対応して駒を投入してじわじわと攻めるのが特徴です。大駒の攻撃も、こうした拠点があって始めて強力にはたらきます。
 
●その他の局面
 それ以外にも玉形・大駒のさばき・手番・攻め筋・持ち歩・手の広さなどもあります。
 玉形は、守備力の高さです。守備力が高ければ詰みから遠くなります。
 大駒は遊び駒とならなくとも、より強く活躍しているかどうかで違いが出ます。飛車は遊んでいなくても守備に使われていたら、あまりよくありません。龍が敵陣にいて横利きで相手玉を狙っていれば最高です。馬は自陣にひきつけられていたら非常に強力です。角はその利きで敵の玉や飛車を狙っていればそれも強力ですが、守備に効いているだけなら今ひとつです。
 大駒は持ち駒として持っていることにそれほど価値はありません。動けない場所でなければ、盤上で活動している方が有効です。逆に桂香は、盤上より持ち駒として持っている方が脅威を与えます。金は盤上に銀は持ち駒になっている方が多少脅威があるようです。
 手番は、自分が手を選べる状態にあるかです。王手や放置すると駒得になる手を指している側が手番を持つ、自由に手を変える権利を持っています。自分の手番が続けば、相手は反撃できませんから優勢です。ただし、手番を続けるために駒を損していくと、攻めが切れてしまいます。駒を損しないように手番を維持する必要があります。
 持ち歩は、攻め守りともに重要です。歩は、取ってもあまり駒得にならないので攻めにくい駒です。攻めのときも歩を突き捨てたり打ったりすることで、相手の駒を動かして駒の連携を乱すことができます。従って、歩がないと攻めにも守りにも不利となります。
 手の広さは、展開の幅のことです。有利なときは相手の手を狭く、不利なときは自分の手を広くすることが必要です。駒得していても、相手の手が広い場合、必ずしも優勢とはいえません。
 

.終盤の局面評価の方法は?
.玉までの距離と攻撃が切れないか読む

●玉はなぜ詰めることができるのか?
 駒は取ったり取られたりします。ふつう、駒は取り合いになり、一方的に自分の駒が増えることはありません。減った分の駒を盤面に打てば、駒は減らずにすむはずです。にもかかわらず玉を詰めることができるのは、玉のまわりの駒が減るためです。
 なぜ玉のまわりの駒は減るのでしょうか?
 それは王手ができるためです。もし玉を単なる駒の一つとして、王手を無視して玉を取られてもよいというルールなら駒はなかなか減らないでしょう。交換した駒を打ち戻せばよいからです。
 王手したとします。飛車、角、香を離れたところから打っての王手なら、合駒により駒が増えます。しかし、玉の隣に駒を打ったり、桂による王手なら、合駒を打つことはできません。攻撃側の駒が増えるのに、守備の駒は増やせないのです。
 また、将棋の駒の動きは、すべて左右対称なのに、前後が非対称な駒が多くあります。玉と飛車角以外は、後退する能力が低いのです。そのため、駒の取り合いなどをすると、自然に駒は前に進む傾向があります。そこで、歩を打ち捨てたりすることで守備の駒を前進させて、玉から離すこともできます。このようにして、玉の周りの駒は減るわけです。
 思考実験してみしまょう。駒を、守りと攻めに二等分します。自分の攻め駒を相手の守り駒とすべて交換します。その内容は駒の損得がないものであったとします。この場合、打ち込みの王手を開始することで、相手玉を詰めることができるでしょう。すなわち、守り駒をはがすことが少々駒損であっても価値があるのは、玉の存在のためです。
 
●寄せにおける注意点
 王手より必死といいます。必死とは、王手ではないが守備側がどんな手を指しても次に連続王手で詰んでしまうものをいいます。それに対して王手の場合、ひたすら追いかけ回して、玉が逃げ回ることになってきりがなかったりします。事前に玉の逃げそうなところに駒を配して、包むように寄せるのがコツと考えられています。
 王手よりも、次に守備側が何もしないと詰む手=詰めろが実際の将棋では多用されます。プロの将棋では、王手は一局平均2回もないとされます。王手というのは駒得を狙う手であって、玉を寄せるための手ではないのです。王手するときはそのまま即詰みのときで、それまでは、詰めろを指し、それを防ぐと、また詰めろを指すというような応酬が指されるのです。そのため、詰めろのパターンが複数あるのが優れた手です。詰めろを指し、相手が防いでもまた詰めろを指すことができるような、駒損にならないで詰めろが続く状態を寄っているといいます。
 持ち駒によって寄せ方も異なります。持ち駒が桂香なら、金銀にぶつけて交換することで寄せになります。金銀の場合は、同じ金銀にぶつけても交換して打ち直されるだけできりがなく、大駒がはじかれたりして手番を取り返されたりします。竜や馬の場合は、その背後に拠点となる駒があれば、金銀と交換することで寄せにつながります。寄せのような玉を狙う接近戦では、離れた利きに意味はないため、飛車は縦横4マスの駒で角は斜め4マスの駒となり、金銀より弱い駒なのです。
 詰めろのコツは、王手のように駒の利きを玉に利かせるのではなく、玉の周囲に利かせることです。腹銀のような、玉の前後2カ所に利きをかけるような手は強力です。じわじわと玉の周囲に駒の利きを重ねていくことで受けなしにできます。
 寄せで注意することは、攻めの拠点を精算しないことです。お餅のように粘る攻めがコツです。清水市代女流棋士はこれをお団子を作ると呼んでいます。金銀で王手したとき、その駒が単独だとただ取られるだけです。しかし、その駒に何か効いていると玉で取ることができません。攻めには足がかりになる駒が必要なのです。また、駒を取り合いを繰り返したときは、ふつう最後に駒を取った方が得をします。駒を取ることができる駒は、既に盤の上にある駒です。従って、盤上の駒が少ないと駒損になりやすいのです。
 敵陣で戦うと自然に駒が成るという利点があるため、攻め駒同士がしっかりとスクラムを組んでいる攻めはまず途切れません。攻め駒が囲いを作っているかのように組み合っているとよいわけです。
 逆に相手の攻めを切らせるには、駒の利きをさかのぼって根から断たなくてはなりません。
 寄せは料理と考えましょう。飛車や角がおいそうだからといってつまみ食いしてはいけません。具が煮くずれしないように注意しながら、調味料や具を追加していくのです。料理も寄せも食べられるまで我慢しなくてはいけません。
 逆に、こちらの攻撃が寄せへとつながらない場合で、自玉が安泰なら、はっきりと駒得狙いにすべきです。この場合は、料理前の買い物だと考えましょう。料理の具をいかに安く買いそろえるかが腕の見せ所です。
 
●守備力とは?
 金なし将棋に受けなしと言われます。金がいないと守りにならないと言われるのです。駒の守備力とは何なのでしょうか?
 駒の本体とその利き範囲を考えます。金や飛車は前後左右に動きます。その利き範囲で壁を作ることができるわけです。ところが、角や桂は前後左右ともに動くことができず、その周囲を駒がすり抜けて動くことができます。角や桂には相手の駒を制止させる能力がまるでないのです。銀や香はその中間的な存在といえます。
 飛車も金同様守備力があるのですが、強すぎる駒のため、その駒自体を狙われてしまいます。また斜めに動けないので自分自身を守る力が強くありません。そして、自陣で相手に飛車を使われるとすぐに龍になるので、飛車は守備向きではないのです。
 馬の守りは金銀三枚と呼ばれます。馬ですから前後左右も動けます。馬は本来角ですから、斜めに動くことで逃げる能力が高いのです。またその斜めの利きを利用して、相手の動きを止めることもできます。馬は自陣に引き寄せて使えというゆえんです。
 この駒の守備力を差を利用して、読む手を限定することができます。守備力の低い駒を使って、敵陣の守備力の高い駒と交換すればよいのです。最も守備力が低いのは桂、次が角です。最も守備力が高いのは金、次が銀です。桂で金と交換すれば最高ですし、銀とでもまずまずです。角は大駒ですが守備力が低いので、銀相手ではケースバイケースですが、金と交換するのはたいていよい方針です。終盤では、桂と角で金を狙う作戦から読むのがよいでしょう。
 
●守備力が低い方がよい場合
 守備に駒を打つ場合、相手の駒の利きが当たっている部分に使う駒は歩など弱い駒がよく、後ろに控える形で相手に直接取られない位置に打つ駒は強い駒にします。常に相手より弱い駒で受けるのが基本です。強い駒だと交換されて、相手の攻撃力が増してしまうからです。
 相手の攻め駒より弱い駒で受けられない場合は、たいてい受けが利きません。交換することで相手が有利になるからです。
 しかし、守備駒の有効性は、囲いの状態によっても変わります。囲いが丈夫なときは、金銀を投入してしっかり受けるのが有効です。駒の交換になったとき、最後に取るのが自分になるなら金銀で受ける方針はよい判断になります。
 しかし、囲いが崩壊して、駒の連携がない場合は異なります。精算することで、みんなバラバラになる場合、駒の性能はほとんど関係がなくなります。こうしたときは、相手に取られたときに使いにくい駒を打って受ける必要があります。それは、歩、香、桂などで、この場合は金銀は使わないのが鉄則です。
 
●穴熊戦には飛角金銀桂香価値は同じ
 
●Z
 即詰みにならない形をZと呼びます。自玉の状態を見てある駒○が相手の持ち駒にないとき○Zと言います。たとえば桂馬を渡さなければ自玉が詰まないなら桂馬Zです。終盤では自玉の状態を見て、何を渡してはいけないかを考えることが大切です。
 
●玉の早逃げ
 敵の攻撃を切らせるためには、その拠点となる駒を取ってしまう必要があります。ところが、王手をかけられた場合、その王手の駒を取るか逃げるかしなければなりません。王手に対しては拠点をつぶすことはできないわけです。
 そこで、事前に玉を逃げておいて王手を避けるという守備法があります。こうすると、相手が攻撃したとき守備の手の幅が広がり、うまい受けができることがあります。
 将棋は一手ずつ交代で指しますから、玉が1枚動いても、追いかける駒も1枚だけです。どんどん逃げれば一対一になるため、詰みを逃れることがあるわけです。
 詰みを争う最終盤は、指し手の可能性が最も狭くなった状態です。そのため、お互いの玉の周辺以外はすべて遊び駒と化すことがあります。玉が逃げることで、それについていけない駒はすべて遊び駒になってしまいます。早逃げは相手の攻め駒を遊び駒にしてしまう技法なのです。
 

.強くなるコツはあるか?
.駒別の手筋の決まり型を覚える

 将棋の読み方には、その場面からの変化だけでなく、手筋の決まり型から逆算する方法があります。その逆算をたくさん見いだすには、それだけたくさんの型を知っている必要があります。そこで、駒別に手筋の決まり型を分類しましょう。
 
●歩:歩はあらゆる駒と連携して活躍しますので、歩の手筋としては歩のみ使用の場合とします
 たれ歩:次ぎに成れる位置に歩を打つ。
 継ぎ歩:相手の同歩に続けて歩を打って取らせる。十字飛車、桂馬の連携などへ。
 突き捨ての歩:相手陣地に隙間を作る、あるいは歩を打つことになりそうな筋を突き捨てる。
 突き違いの歩:相手の突いた歩の隣の歩を突く。銀の頭に銀ばさみを狙いが多い。
 蓋歩:相手の駒の後ろに歩を打ち捕獲する。飛車を捕獲するケースが多い。
 焦点の歩:たくさんの駒が利いたところへ歩を打つ。駒の利きが遮断される。
 単打の歩:相手の駒を動かすために打つ。壁銀を作るために桂頭に打つケースなど。
 連打の歩:相手の駒を動かすために打つ。相手の飛車をつり上げて守備するケースなど。
 合わせの歩:相手の歩の前に歩を打つ。他の駒を手順に移動させる。争点をずらす。
 争点換えの歩:歩を合わせて飛車などを手順に移動させる。
 ダンスの歩:歩を次々と打って金を動かす。
 底歩:金の底に打ち、飛車の横利きを遮断する。相手が香を持っていると有効でないことも。
 中合の歩:飛車角の利きの途中に打って、近づけて受ける。先手を取れる。
 穴埋めの控え歩:相手が駒を打ちそうなところへ歩を打って埋めてしまう。
 守りの控え歩:相手の駒が進出しそうなところの一歩後ろに歩を打って駒を出られなくする。
 意地悪の控え歩:相手の玉の脱出口の一歩後ろに歩を打って、手口を封じる。
 攻め筋そらしの叩き歩:自陣にいる飛角に当たるように歩を打って動かす。
 直射止めの歩:飛角香などの当たりを防ぐ。
 飛底の紐歩:馬角などの当たりに対して歩でただ取りを防ぐ。
 5三のと金に負けなし:5筋の歩を切って、と金攻めにする。対穴熊で重要。
 馬封鎖の歩:相手の馬を自陣に引けないように歩で封鎖し、馬を遊び駒にしてしまう。
●香
 田楽刺し:角あるいは、歩切れの相手のとき、相手の駒が縦に並んでいるときに頭に香を打つ。
 歩の内側に香を打つ。
●桂
 桂のクレーン攻撃:桂を打ち、逃げたら、さらにそこに歩を打つ。
 桂は控えて打て:桂を控えて打ち、両方の利きが狙いを持つもの。
 歩頭の桂打ち:矢倉などに対して、歩の対峙する空間に金当たりに桂を打つ。
 つなぎ桂:桂の利きに桂を打って続けて攻める。
 香を吊り上げての桂打ち:端攻めで、歩を使って香を吊り上げて桂を打つ。
 とりあえず桂で金取り:金取りの桂を打つ。
●銀
 銀の割打ち:金や飛車が1行空きで並んでいるときに斜め後ろから打って両取り
 飛車先棒銀:飛車先に銀を繰り出して、敵陣突破、あるいは銀交換を狙う。
 端棒銀:端に繰り出して、銀と香を交換、端突破を狙う。
 千鳥銀:相手の飛車角の周囲に金銀がいない場合、銀を進出させ、角頭と飛車のこびんを狙う。
 玉の腹から銀を打て:寄せのとき王手せず、詰めろをかける。
 桂頭の銀:桂打ちの攻撃に対して、桂頭に銀を打って守る。
●金
 下段の金打ち:飛車の打ち込みに対して、1段目に金を打って桂香を守りつつ飛車を追い払う。
 金は角筋を避けよ:角と金はその能力が正反対なので、相手に手を選ばせることになる。
 金をひく手に好手あり:金を一段下げると陣形が引き締まる。
●角
 玉、飛などの狙い打ち:利き筋の延長に玉、飛をが来るように自陣に角を打つ。合駒すれば歩を打ち、駒得を計る。桂があれば王手して一気に寄せる。
 浮き駒の桂香狙い:香、場合によって桂も浮き駒になっていることがあるので、角筋を止めている歩を攻める。
 下段角の両狙い:敵陣の一番奥、飛車の斜め下に打ち、飛車取りともう一つの狙いをかねる。
 角のクレーン攻撃:桂、香の頭に角の筋を通し、歩を打って、桂香を取る。
 合わせ角:角打ちに角を打って交換させ、手得する。
 浮き駒作り:角打ち狙いで、浮き駒を作らせる。
 序盤は飛車より角、終盤は角より金:中盤の仕掛けの手筋では角筋が効果的で、寄せの手筋では角で金を取ってしまうのが効果的。
●飛
 十字飛車:横利きで浮き駒、縦利きで歩の垂らし、成り込み、駒取りなどを狙う。
 横利き+:横利きの斜線に玉をのせ、持ち駒で引っ掛ける。
 横利き対策+:横利きの斜線に玉をのせられたとき、持ち駒で引っ掛けられないように受けておく。
 一間竜:相手玉と1マス離れた位置の竜。金銀があるとほぼ受けなし。
 飛銀締め:相手玉の腹に銀、その下に飛車の形。受けにくい。
●玉
 玉の早逃げ:玉を相手の飛車角の射線から退避しておく。
●竜と馬
 外竜より内竜:お互いに飛車が成って竜となった場合、内側にいる方が強い。歩などの合い駒で利きを遮断できる。
 竜は敵陣・馬は自陣に:大駒の威力は、手順に桂香を拾うことと利きで相手玉を直射することにある。竜の場合は横利きなので敵陣にいなければならず、馬の場合は斜めなので自陣に引く必要がある。成ったことで増える周囲の利きも、竜の場合は一間竜として攻撃に利くが、馬にはその効果がない。

.コンピュータはどのぐらい強いのか?
.2014年、既にタイトルホルダーと対等である

 コンピュータの棋力は、2007年3月のボナンザで奨励会初段前後とされる。かつて女流の最強棋士であった清水女流は奨励会で初段程度と見なされていた。これを考えると、その三年後、2010年10月のあから2010対清水女流王将(当時)の対決は相当に厳しいものだったとわかる。
 2012年1月にボンクラーズが米長永世棋聖を破るが、米長永世棋聖は引退して八年、イベントなどで指す将棋の対戦結果を見る限り、すでに棋力はC2ぐらいまで低下していたと考えられる。対するボンクラーズは、将棋倶楽部24においてbonkrasとして3364点というもの凄い数値を記録した。
 ただしレーティングにはインフレがあり、後になると自然に高くなるので注意が必要だ。2011年12月31日のボンクラーズbonkrasの3364点が、2004年6月5日の最高点であるデクシdcsyhiの3003点より高いのかはっきりしない。この両方の時期に指していたHAHAHAHAHA氏のレーティングも300点以上高くなっているからである。HAHAHAHAHA氏の棋力がほぼ同じとするならば、bonkrasとdcsyhiの棋力差はほとんどないと考えられる。
 デクシdcsyhiは、その棋譜を見たプロから、これはタイトルホルダーとしか考えられないと判定され、しばしば羽生四冠だという噂が流れた。ただし振り飛車採用時の勝率が明らかに低いことからやや疑問も残る。
 将棋倶楽部24では、若手時代の渡辺二冠が指していたとも言われ、また早指し最強と言われる糸谷哲郎六段が奨励会時代に I-houshin の名前で指してことも知られる。
 将棋倶楽部24は持ち時間一分、秒読み30秒の早指しであり、もともと見落としのないコンピュータが有利とされるフィールドである。故に、プロ棋士とコンピュータの差はまだはっきりしないと言えよう。
 
●コンピュータに立ちはだかるのは誰か?
 最期の切り札は渡辺明二冠である。最も重厚かつ慎重な棋風で知られ、コンピュータとの対戦体験もある渡辺二冠が最もコンピュータに強いと考えられる。
 羽生善治四冠はコンピュータ戦では苦しいと見られる。というのも、そもそもすべてのコンピュータソフトは羽生四冠を基準にして研究されてきたからだ。
 その他の点においても羽生四冠はもともとコンピュータと類似性がある。羽生マジックとは、相手の読み筋にない手を指すということだが、それは切り捨てる手が少ないということであり、コンピュータと共通しているのである。また持ち時間が短いほど強くなる点もコンピュータと共通である。
 プロ棋士側の勝率が低いにもかかわらず、プロ棋士にはコンピュータは強くないと感じる人が多い。というのもコンピュータは必ずしも最善手を指せていないからである。にもかかわらず、プロ棋士が負けるのは、コンピュータが人間が予想できない手を指すためである。これが終盤の時間がないときに痛打になる。手を読むとき、自分の手と相手の手を交互に読むのだが、コンピュータ相手だと、自分の読み筋から外れるため、最初から読み直しになってしまうのだ。秒読みでは、これに全く対応できず、終盤に悪手を指して人間が負けてしまうのである。
 これを証明したのが、森下九段の秒読み10分制での将棋で、サスペンデッドになってしまったが、人間側のほぼ勝ちが確定した棋譜となった。
 これまた羽生四冠とコンピュータの指し手の類似を示している。コンピュータは終盤を間違えない上に、ソフトマジックをというべき手を指すのである。
 
●コンピュータ将棋の特徴
 コンピュータは序盤は定跡が完全に組み込まれているため間違えないし、終盤に詰みが出ると相当に長い詰みでも瞬時に解いてしまう。故にコンピュータ相手に定跡形で戦うのはそれほど有利ではないし、終盤で詰むか詰まないかの争いで勝負するのも勝ち目があまりない。
 ただし長すぎる詰みは読めないことがある。人間と違い余分な筋も読むためである。水平線効果と呼ばれている。また詰めろは読むものの、駒得より詰めろを積極的に採用することはまだないようだ。
 人間との重大な違いは、コンピュータは二手スキ、三手スキなどを理解しないこと。コンピュータは今の盤面から先を読むのだが、人間は詰み上がり図から逆算するのである。ここに人間の勝機があるのだ。この段階ではコンピュータはまだ駒得を基準に手を選ぶのである。
 また人間はお互いの玉までを距離を測って比べる。お互いにノーガードで防御の手を指さずに攻め合ったらどちらが先に詰むか調べて、攻めて相手玉を寄せるか、守って相手の攻めを切らせるか、組み合わせつつ、相手玉までの距離に差がつかないようにして一発逆転を狙うかを決める。これがコンピュータにはできないのである。
 
●コンピュータを倒す方法
 終盤では駒得から速度、すなわち敵玉への距離が大事なのだが、コンピュータはこの切り換えがまだうまくない。従って、この人間のみが持つ距離感を利用して、二手スキ、三手スキの距離をおいたままで長手数を維持してポイントを稼ぎ、局面に差をつけてしまい、大差で終盤に持ち込めば倒すことができる。
 コンピュータには定跡形が組み込まれているが、その定跡を作るのはプロ棋士である。定跡とは最も優れた作戦であり、その範囲では五分五分の手順である。終盤まで定跡形に持ち込みコンピュータのまだ知らない最新研究をぶつけて、変化の余地のない罠に追い込んで倒すことも考えられる。
 人間は縦に深く読めるが、コンピュータは横に広く見落としなく読むことに特徴がある。人間がこの縦の深さを利用して、コンピュータより先に相手玉の詰み筋を見つけられるかが勝負になるのである。
 将棋の投了図をよく見ると、勝った側が駒損していることが多い。特にすべての持ち駒を使って、"ぴったりの詰み"になった場合などは、まず勝った側が駒損している。そのためコンピュータがちょうど詰みの少し手前まで読んでいる場合、駒得だから勝勢と判断してしまう。これが2015年3月21日のSelene vs.永瀬拓矢六段で起こったことである。投了場面では、Seleneだけでなくやねうら王も先手有利と判断していた。それは詰みの手前までで読み筋が終わっているためなのである。
 
●2014年度電王戦
 豊島将之七段が勝利したのみで、他はすべて敗戦となった。豊島将之七段はレーティングで3位〜5位を維持する最強棋士であり、トップレーティングの羽生四冠とのレーティング差は100余りである。次に強いのが屋敷伸之九段でレーティングは12位〜13位、羽生四冠とのレーティング差は200弱である。
 豊島将之七段はコンピュータの序盤の癖をつかんで完封したが、屋敷伸之九段は終盤まで互角を維持したが最後にミスが出ての敗戦となった。
 今回の電王戦でソフトの事前貸出があったが、その練習対局での勝率と実際の勝敗を比べる限り、研究によって有利になる度合いはそれほど大きいとは言えないようである。おそらくレーティングで50〜100程度有利になるだけであろう。
 これらを考慮するとハード制限がなく、対等な条件では、現在のタイトルホルダー、羽生四冠、渡辺二冠とはほぼ互角と考えて良いと思われる。
 
●次回の電王戦はどうすべきか
 時間による違いが興味深い。前回の電王戦より持ち時間が一時間多いのだが、それはどうやら人間に有利にならなかったのである。持ち時間よる棋力変化は、コンピュータの場合、時間にそのまま比例すると言って良い。
 対して人間の場合、一手30秒などではミスが多く非常に棋力低下するが、四時間と五時間では特に差がないようだ。
 終盤のソフトマジックに対応するため、秒読みを長くする棋戦を考えてもよいかもしれない。森下戦で判明したように10分は長すぎる。持ち時間0の秒読み5分ならば、一時間に最低でも12手進むことから、長い対局でも順位戦ぐらいに収まると考えられる。ドワンゴが将棋の棋戦主催を考えていると言われるが、ならば持ち時間なしの秒読み5分、複数のソフトが参加するトーナメントなど面白いのではないか?
 また人間はもう勝てないと考えるなら、ハンデとしてよいのは、持ち時間であると思う。例えば、持ち時間差対局では、羽生四冠は清水女流に負けたことがある。コンピュータが一時間で人間が五時間なら、ほとんどの棋士も対等に戦えるだろう。
 ただ実際にファンが見たいのは、最高の棋譜である。電王戦予選が勝ち抜いたソフトで、クラスタを組んだり、いっそスーパーコンピュータに計算させて、神の棋譜に挑戦するというスタンスの方がよいと思う。これなら人間が負けて当然という状況を作って、人間が挑戦するという設定の方が、プロ棋士も傷つかず、ファンも納得すると思うのである。
 そもそも将棋は論理計算であり、コンピュータが強いのは当たり前なのであるから。
 

●関連&参考文献
 筆者は小学生の頃、プロ棋士の元に通っておりましたが、今はそれほど強くありません。従ってこのページから、さらに以下の本を読むと効果が大きいでしょう!
 

飯田弘之
『コンピュータは名人を超えられるか』
岩波科学ライブラリー
2002



島朗
『読みの技法:最強将棋塾』
河出書房新社
1999



柿沼昭治
『将棋に強くなる本』
金園社
1996



森内俊之
『覆す力』
小学館新書
2014



羽生善治
『簡単に、単純に考える』
PHP研究所
2001



羽生善治
『上達するヒント』
浅川書房
2005



羽生善治、松原仁、伊藤毅志
『先を読む頭脳』
新潮文庫
2009



谷川浩司
『将棋に勝つ考え方:異次元の大局観』
池田書店
1982



加藤治郎
『愛蔵版 将棋は歩から(上巻)』
東京書籍
1982



加藤治郎
『愛蔵版 将棋は歩から(中巻)』
東京書籍
1982



加藤治郎
『愛蔵版 将棋は歩から(下巻)』
東京書籍
1982



加藤治郎
『復刻版 将棋の公式』
東京書籍
2001



渡辺明
『勝負心』
文春新書
2013



渡辺明
『頭脳勝負:将棋の世界』
ちくま新書
2007



渡辺明・保木邦仁
『ボナンザVS勝負脳:最強将棋ソフトは人間を超えるか』
角川oneテーマ21
2007



前田祐司
『将棋必死集』
山海堂
1994



市川一郎
『将棋どちらが勝つか』
大阪屋号書店
1955