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ひたすらたくさん本を読む方法、音読を勧める方法、実践あるのみの方法、あるいはしっかりと文法を押さえる方法など、数え切れないほど種類があるといえるでしょう。 そして、多くの本では、勉強に王道――特別な近道はなく、時間をかけて努力すべきであると正直に告白しています。やはり、何か特別な方法で簡単に上達する方法はないわけです。 これはしかし、考えてみれば当たり前のことです。どんなに勉強したとしても、自分の知らない単語を突然話し出すことはあり得ません。既に勉強したことのみが使えるわけです。 そういう意味で、語学の上達の効率化には上限があり、決してそれ以上に奇跡的に上達することなどあり得ないわけです。 語彙数がその人の言語力の上限になります。可能性の最大枠を作るのが語彙数です。一般に8歳の母国語の語彙数は7000、18歳で4万とされます。また新聞を読むのに必要な語彙数は2万語と考えられています。 言語学習の効率化の反対側、下限には限界がありません。無駄な勉強方法はいくらでもあります。語学学習には、無意味な回り道や行き止まりはたくさんあり、しばしばそこに落ち込んで、時間を無駄に浪費してしまいます。 以下に、そうした回り道や行き止まりの例を挙げていきます。こうした無駄をなくすことでより効率的に学習できると考えられます。 ネイティブは中学二年までに15000語学ぶ 日本の英語教科書は高卒までに3500語 音声言語に5000語・文字言語に7000語が最低必要 TOEIC730には最低7000語必要 | |||
人間は、一度に覚えられる大きさというものがあります。ワーキングメモリの容量のことで、7つであると言われています。マジカルナンバー7ともいいますが、最近の研究では4つであり、ニューマジカルナンバー4とも言われています。 このワーキングメモリの観点から単語を見ると、単語が覚えるには小さすぎるということがいえます。ほとんどの単語は1〜3音節しかなく、人間の持つ記憶能力が生かされていないのです。 これは綴りと発音の観点により異なります。綴りを覚えるという観点からは、単語のアルファベット数が適切であるのですが、発音という観点から見ると、その2〜3倍の長さが適切であることがわかります。 言葉というのは、本来音声からなるものです。文字というのは、それを表したものです。英語の発音というのは、子音+母音+子音のように組み合わせられた音節に対して数個のアルファベットが割り当てられています。文字のかたまりから発音の仕方がわかるようになっています。英語の場合、そのパターンは読み取りにくくなっているものの、自然な読み方のパターンというのは決まっています。 発音がわかれば自然にどう綴るかもわかるわけです。となれば、綴りを直接覚えようとしなくても、一度発音と文字列の組み合わせを覚えれば、単語は音で覚えた方が記憶能力を有効利用できるわけです。そして、音で覚えるなら、単語よりフレーズの方が効率的なわけです。 覚えるとき最も難しいのは、無意味なものです。逆に意味がはっきりしているものほど覚えやすくなります。単語は、ほとんどが意味の断片ですから覚えにくいのに対し、フレーズは意味の完全性が高いため記憶も平易になります。 フレーズはそれ自体が意味を持ち、それだけで相手への伝達能力を持つため、フレーズを羅列することで最低限のコミュニケーションが可能です。 フレーズの配列に関しての法則はきわめて簡潔なので、すぐに覚えることができ応用ができます。 | |||
それにたいし、母国語を覚える子どもは、そうした努力とは違う方法で、言葉を覚えていきます。 子どもはどのようにして母国語を覚えるのでしょうか。 周囲の大人たちの言葉をたくさん聞き、体験の中で獲得していくわけです。ところが、言語学の研究でわかったことは、大人は子どもの間違った言葉使いを訂正することはほとんどないこと、文法的に正しくない表現もたくさん聞かせていることがわかりました。そのため、子どもはただ自然に第一言語を記憶しているだけではなく、言語のための何かが脳には最初から組み込まれていると考えられるようになりました。 その候補の一つが、ワーキングメモリです。それは一見、反対ではないかと思わせるものです。子どものワーキングメモリは大人より小さいということです。このワーキングメモリの小ささが、子どもの第一言語習得にプラスに作用していると考えられるのです。 ワーキングメモリが小さく一度にたくさんの言葉を覚えることができないため、文を小さく切り取って聞いてるのが子どもの特徴です。大人なら、文全体を一気に覚えられるところを、文頭もしくは文末の一部分、ちょうど1フレーズ分を聞いているのが子どもの特徴なのです。 5〜9単語程度の文を音のみでたくさん暗記したとします。しかし、どんなにたくさん暗記してもその文のどの単語がどんな意味を持つか理解することはできないでしょう。文の中には同じ発音が何回も出たり、その順序にもいろいろなものがあるからです。 しかし、フレーズなら異なります。ほとんどのフレーズは、自立語+機能語の組み合わせで構成されます。前部と後部の2つの要素、対象と意味の組み合わせで構成されているのです。そのためフレーズをたくさん覚えると、どれがどの対象や意味を持つ音かが自然にわかるのです。これは脳がもともと持っている帰納思考の効果なのです。 | |||
幼児の言語獲得の研究でもこれらの5種の文が最も早く獲得されることが知られています。 心理学者ジェームズ・アッシャーの全身反応教授法、先生が命令し生徒が言われた通り行動するこの方法が覚えやすいのも、命令文で覚えているためです。 これをどのように語彙力増強に結びつければよいでしょうか。 それには、単語を覚えるときにその単語を使って、命令、要求、依頼、疑問、拒絶などの意味を持つ例文を作り、それを覚えるのがよいでしょう。 | |||
記憶はループ回路の形成により成立します。言語の記憶も、その当初は海馬と皮質とのループ回路を形成することで成立するわけです。 脳の言語作用の基本ルートをシンプルに書くと、感覚野⇒感覚連合野⇒海馬⇒運動連合野⇒運動野となります。言語の記憶を形成は、感覚連合野⇔海馬、海馬⇔運動連合野の2種類のループ回路形成から始まります。そして、感覚連合野⇔海馬は言葉の対象に、海馬⇔運動連合野は言葉の行為に相当します。すなわち、あらゆる言語の記憶は、対象もしくは行為として記録されるのです。 ところが、形容詞は感覚連合野内部のループ回路であり、前置詞や副詞は運動連合野内部のループ回路です。すなわち、対象を示す名詞、行為を示す動詞はその意味を記憶しやすいのに対して、形容詞、前置詞、副詞などは脳に直接形成することができないのです。 そのため、形容詞を覚えるならそれを修飾する名詞が必要ですし、前置詞にはその目的語、副詞なら修飾する動詞が必要です。それらを含むフレーズを記憶して後に、その感覚連合野内部に形成されたループ回路こそが、形容詞、前置詞、副詞などに対応するわけです。 言語の5つのフレーズ構造から言うと、主題フレーズと状況フレーズは対象に相当し、述語フレーズ、接続フレーズ、説明フレーズは行為に相当します。フレーズは脳における形成単位に相当するわけです。 単語を覚えても、実際には名詞と動詞以外は脳に形成されません。多様な機能語が形成されないわけですから、いつまでたっても自由に言葉を話すことはできません。フレーズを覚えることによってこそ、それらは記憶できるわけです。 | |||
ただし、文法力は別の方法が必要になります。 カード学習では、文章を使うのはあまり効果がありません。文章の正解不正解は、語彙力でなく文法の正しさで決まります。 文法と語彙はその作用する脳部位も異なっています。海馬−側頭葉の記憶は語彙力にかかわり、前頭葉や大脳基底核が関係するのが文法です。 語彙を覚えるというのは意味と音声の組み合わせですが、文法は音声の前後の組み合わせです。文章の場合、前の言葉を利用して次の言葉を出すという練習が必要になるのです。 語彙の記憶はじっくりと移転するのに対して、文法の記憶はその場で一気に作るべぎものです。語彙は同じ内容の反復で、文法はパターンプラクティスで内容を切り換えて練習します。語彙力の強化は毎日の努力が必要ですが、文法力は一気集中が必要です。 文法の記憶強化には音読やアウトプットの学習がよいと考えられます。 | |||
反復期間を倍々と増やしていくのがよいとされます。5分後1時間後5時間後1日後、3日後、1週間後、一ヶ月後、一年後という感じです。 しかし、実際に実行するとなるとこの方式はなかなか困難です。人間の生活は、一日や一週間のサイクルがサイクルになっているからです。 また、脳の構造の観点からも、そこまで厳格にする意味はないと考えられます。 そのためには、ノートよりもカード方式が便利です。カードとそれを整理して入れておくケースが必要です。 | |||
脳の記憶システムから見て最適な方法を考えてみましょう。これは実際に私が採用した方法です。基本的なパターンとして参考になると思います。 暗記する内容を書いたカードを用意します。カードを使うのは、順番を入れ替えることができる点で便利だからです。 カードは普通の単語カードより大きめのものを使います。1枚のカードに書き込む量の目安は、項目数で3〜6個とします。表が日本語、裏が外国語とします。日本語を見て外国語を書き取るのが目的だからです。 自然な並びにする 単語をカードに書き込む場合、その順序が日本語で自然な並びがあるものは、くっつけて一つの単語扱いにしてしまいます。たとえば東・西・南・北や、上・下・左・右なら、東西南北や上下左右という2つの項目にしてしまうのです。 ワーキングメモリの容量は4前後、単語一つでなく4つぐらいまでなら記憶の負担はあまり変わりません。白・黒・赤・青・黄色を2つの項目として覚えるより、白黒と赤青黄色という2つの単語扱いして覚えてしまう方が効率的というわけです。他にも類義語のセット、例えば鉛筆と消しゴム、あるいは反意語のセット、良いと悪いなどもまとめられるでしょう。 ワーキングメモリの容量とは一度に覚えておける数ですから、使うときも一度に思い浮かべることができる範囲になります。 「これは色の名前で確か3つ目の単語なんだけど……赤青黄色だから意味は黄色か!」となって、意味が思い出せてしまうわけです。 空間に写実的にする また、カードの項目の配列を実物に対して写実的にします。 物の名前でも、その配置の自然性を考えることができます。室内の道具なら、自分の部屋の配置に対応させたり、街の風景に関係あれば、その風景における配置に対応させることにします。 これは海馬のもつ空間記憶の特性を利用した方法です。 これは脳の構造に理由があります。意味よりも先に位置が記憶に残るからです。ある外国語を見たとき、日本語が思い出せなくても、カードのどの位置にあるかはすぐに思い出せるのです。一時記憶を作る海馬は空間の位置記憶のために発達した器官なので位置が真っ先に記憶されるのです。マウスの海馬では地位に反応にするニューロンが発見されていますし、タクシードライバーはその熟練度に応じて海馬が大きくなることが知られています。 位置を思い出すことができたとき、その位置が自然に配列されていれば、その意味を思い出すことができます。「これは色の名前で確か机の下の単語なんだけど……そうか椅子か!」となるわけです。 意味のつながりでフレーズにする 言葉は意味がわかるものが覚えやすくなります。言葉の意味はフレーズを構成して完全になります。すなわち、言葉はフレーズで覚えるべきということなります。 単語単独でフレーズを構成するものはどんなものか。 自動詞と名詞、一部の接続詞と副詞です。名詞はそれだけで主題フレーズを作ることができます。接続詞と副詞には、それ単独で文説明フレーズを作るものがあります。文頭、文末に使うことができる接続詞や副詞がそれです。これらは、単独で覚えてもかまいません。 残りはどうするか。 他動詞は目的語と、形容詞は名詞と、副詞は動詞とセットにすることで、ワーキングメモリを目一杯使うことができます。とにかく意味の関連のある組み合わせがよいわけです。 というのも、英語のメンタルレキシンコン――脳内辞書の研究から、脳の言葉の記憶は意味の似たもの同士で分類され結びついていることが判明しているからです。記憶の時点で脳にふさわしい形にて入力するのが効率的なのです。 言葉の意味には分類の関係があります。白は黒があって成立しますし、善には悪があって理解できるわけです。同じ分類の言葉を一通り理解しないと、本当にその言葉を理解したことにはならないのです。これもまた類義語と反義語で覚えるべき理由です。 逆に作ってはいけないカードの組み合わせもあります。音の類似した単語をまとめることです。似た音がすべて紛らわしい別の単語と組み合わさってしまい、記憶が混乱してしまいます。 文章のカードも非効率です。文章で書き取りすると、文法ミスによる間違いが出て正解が非常に難しくなります。文法はカードの書き取りの意味⇒音声の記憶ではなく、音声−音声の記憶ですので、この方法は適さないのです。 この方式でカードを作ると、組み合わせの中に既に知っている単語が出てくることがあります。こういうときも、そのまま復習のつもりでカードに書き込みましょう。記憶は知っていることと知らないこととの結びつきです。知っている単語が混じっていると一緒に書かれている他の単語を覚えるのに有利になるのです。 | |||
書き取りにはルールがあります。 【ルール1】 まず、各項目のスコアの○×の列を見て、後ろから○の連続する数を確認します。そして、項目の中で一番少ないものを基準に、それより2つ以上○の多い項目はパスして書き取りしないことにします。もちろん、最初は○も×もありません。 例えば、1×××○○、2××○○○○、3×○○○○○、4×○×○○、の4つの項目のカードなら、一番少ないのは1と4の2つなので、書き取りをするのは1と4で、2と3はパスすることになります。 【ルール2】 カードは、単語・句・文など項目ごとに、正解できたら○を、不正解なら×をつけます。 【ルール3】 全部に○がついたら、各項目の○×の列の後ろから順に連続する最大値の数だけ、下のケースへとカードを移動させます。 例えば、1×××○○、2××○○○○、3×○○○○○、4×○×○○、の4つの項目のカードなら、○○が一番多いので2つ下のケースへとカードを移動させます。 【ルール4】 ×が一つでもついたら、正解を確認してそのカードを5枚下へと繰り下げます。 こうして次々書き取りすると、一度書き取りしたカードが5枚ぶりに出てくることになります。 これはワーキング・メモリをリフレッシュするためです。見た直後は、海馬でなくワーキング・メモリによって思い出すことができるのですが、これは長期記憶に変化しないものなので一度消去する必要があるのです。 このときも正解なら○、間違いなら×をつけます。一度間違ったカードには×がついていますから、0×2=0で、×のついた項目のみ書き取りすることになります。 すべての項目に○がつけば、もちろんルール4に従い下のケースに移動させます。×が一つでも残っていればまた5枚下行きです。 カードが5枚以下になるともう下に移動させることができませんので、単に一番最後にして書き取りとします。 こうして次々と書き取りし、ケースが空になればその日の勉強は終わりです。そして、空のケースを一番下に移動させます。 こうして毎日作業を進めます。開始して二日目以降は、○が連続するものが当然あります。カードの中で最も○の連続数の少ないものを基準に、○○と二つ連続すれば、2つ下のケースに移動させます。○○○なら3つ下のケースです。 ただし、○○○○と4つなら一番下のケースにとし、○○○○○の5つならこのケースからは終了として別の容器へと移動させます。 この終了したカードは別の容器に入れておき、一ヶ月後にまた書き取りします。この方法として、ケースを5つ用意し、1〜6・7〜12・13〜18・19〜24・25〜31と書いたシールを貼り、終了した日付に合わせて入れておきます。7日に終了したら、7〜12と書いたケースに入れるわけです。こうすると、一ヶ月後にケースが循環しますから、そのときカードを毎日書き取りのケースに再度入れます。この、一ヶ月を過ぎたカードについては、正解すれば完全に終了としますが、ただし自信がないカードについてはまた一ヶ月後にして戻します。 このシステムのポイントがわかりましたでしょうか? それは覚えている時間を少しずつ長くするということです。 1.一項目ずつの書き取り(約2秒) 2.カード一枚4つ一気に書く。(約10秒) 3.5枚下げてから書く。(約5分) 4.○が1つついて次の日に書く。(1日) 5.○が2つついて2日後に書く。(2日) 6.○が3つついて3日後に書く。(3日) 7.○が4つついて6日後に書く。(6日) 8.終了カードについて1ヵ月後に書く。(1月) 2秒⇒10秒⇒5分⇒1日⇒2日⇒3日⇒6日⇒1ヵ月と、少しずつ覚えている時間を延ばしていき完全に覚えるようになるわけです。イメージとしてはうどん作りのとき、麺を練って伸ばしていく感じでしょう。少しずつ伸ばしてはまとめ、伸ばしてはまとめる内にいくらでも伸びるようになるわけです。 | |||
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もちろん、カードですから、通常の単語カードのように読みとりの暗記しても構いません。 まず、解答を確認します。そして和訳を一項目ごとに見て、英訳を読みます。それができたら、次にカード全体を一気に読みます。それができたら、カード一枚バックして2枚分続けて読みます。それができたら、次のカードへと進みます。 | |||
ケアレスミスはどうするか ケアレスミスは▲をつけてパスとします。△でなく▲なのは書くと○と紛らわしく数えにくいからです。 ▲は○や×と違い、何もなかったこと扱いで、以前の○の数だけ進めます。単なる書き間違いで×をつけるのは時間の無駄。これは記憶トレーニングであって注意力トレーニングではないからです。 手強い単語はどうするか カードの中にはどうしても覚えられないものがときどき出てきます。難しい単語があってどうしても頭に入らない。こうしたときは、その単語に関連するカードを増やします。その覚えにくい単語を使った例文や、関連語のカードを多数作って投入するのです。 何度挑戦しても正解しない、すなわち正解を引き出すことができないのは、結びつきが狭いからです。記憶の強さというのは、蜘蛛の巣に似ています。一本二本ではすぐ切れてしまいますが多方向に伸びて網のようになっていると切れにくくなるのです。覚える言葉へ多方向から結びつけることで、容易に覚えられるのです。 文章の微妙なニュアンスの違いで不正解になるとき 日本語と外国語は、一対一にぴったりと対応することはなかなかありません。そのため、用意した解答と似ているが少し違うものを解答してしまうことがあります。これをどうするべきか。 ケアレスミス同様、▲にします。また、その対応する部分の日本語に赤で○を付けてチェックしておき、ここは失敗しやすいということを示しておくのです。 その日にできなかったら 一日ずつ進めて行くと、時間が足りなかったりして、ときには消化できないカードが残ります。この場合は、そのまま下のケースに入れます。ただし、既に学習を開始したカードを優先するためにも、カードの下に入れて次の日の最後にするのがよいでしょう。 毎日の勉強というのは続けることが難しいものです。時にはできない日があるでしょう。その場合も1日なら気にすることはありません。もし書き取りで不正解でも、解答を見たときにその解答に見覚えがあれば問題ありません。 しかし、見ても全然「あっ、そうそう」という感覚がなければ、それは海馬に全く痕跡がないということであり、勉強は無駄になっているということです。見覚え感がなくならない程度しかサボってはいけません。 朝にやるのがよい 朝起きてすぐの早朝が書き取りにお勧めです。この学習法は、毎日続けることが重要ですから、寝る前などでは時間がなく飛ばしやすくなります。1日飛ばすのはそれほど影響がないのですが、2日、3日続くと、一気に苦しくなります。○が2つ3つぐらいがついたカードは、記憶の定着が不完全のため、5〜7日後にはかなりの確率で忘れてしまうのです。 また、朝しておくと、次の日のかわりに夜にすることができます。次の日に用事がありすぎてできそうもないときは、前日を朝と夜に設定するわけです。 事情があって数日飛んでしまった場合は、すぐに数日分を一気に続けて書き取りし、追いつくようにすべきです。全体がシフトすると全部忘れる危険があるからです。 読み取りでなく書き取り 実際に書くことが重要です。読み取りより効果があります。 それは別に五感を多く使うからではありません。しばしば五感をたくさん使うのがよいという勉強法の本がありますが、根拠は誤っています。人間の注意力には上限があり、五感を多く使ったところで、注意力が拡散するだけでそれ自体には効果がないのです。 書くのが良いのは、書いたものは残るため、回答の正誤が正確に判断できるためです。読み取りだと実際に正しく発音したかどうかは記憶次第であり、勘違いしたまま記憶することがしばしば生じるのです。 ですから、もうほとんど覚えてしまい後一歩という段階になれば、書き取りする必要はありません。読み取りで十分です。 中国語カードの特別ルール 中国語のカードでは特別なルールを使う必要があります。中国語には声調があるからです。声調は意識せずに覚えることはできません。 中国語のカードには漢字だけでなく声調も書き込みます。そして、書き取りのときには数字で声調も書き取りします。また、発音の難しいものについてはピンインも書き取ります。 また、中国語は主語の省略や語気助詞があるため、同じ内容を微妙に違う表現にすることができます。そのため、文章のカードについて完全な正解を得るのは難しくなります。意味があっていれば正解にすべきなのですが、学習途上だと正解かどうかわからないので困ります。そこで、ヒントして総字数をつけておくのがよいでしょう。 | |||
1〜6の手順の内、1〜2が海馬への書き込み、3〜6が皮質への書き込み作業なのです。 有名なエビングハウスの記憶の研究では、1時間後の忘却率が56%、1日後は66%です。1時間後と1日後というのは大差がありません。その日でも次の日でも大差ないのです。これは脳の記憶回路が上記の3重構造による2段階移転になっているためです。 この暗記作業のときに脳に何が起こっているのでしょうか? ワーキング・メモリ(前頭前野)はニューロンの発火状態です。初めて単語を見て暗記しているときは、この回路があるパターンで活動しているのです。そしてそれと同時に海馬も活動し、それにより、海馬の中の回路の流れやすさが変化して覚えることになります。この初日の反復により海馬に記憶が刻まれることになります。 次の日以降は、この海馬の回路により記憶を思い出して書き取りをしています。海馬は、私たちが意識しなくても勝手にはたらいて連合野皮質へと書き込み作業をしています。しかしこの書き込みは最終的に数ヶ月もかかるため、その間、忘れないようにする工夫が必要になります。 では、その何ヶ月間も復習する必要があるのでしょうか? エビングハウスの忘却曲線を見てみましょう。急激な忘却は、記憶後の数日間であることがわかります。1週間以上後ではほとんど変化がないのです。一週間生き残った記憶はもう大丈夫なわけです。ですから、記憶した日から数日間に集中して反復することにより忘却を防ぐのが大切です。ここで解説した方法では、2日と4日と7日目に反復することにより、海馬から連合野皮質への記憶書き込みの手伝いをして忘れてしまうのを防ぐのです。 海馬⇒連合野皮質への書き込みは海馬の記憶痕跡を利用して行われます。既に海馬に記憶がなされていてこそ連合野皮質への書き込みが始まります。従って、初めて覚える日は海馬に記録するだけで、連合野皮質への書き込みは始まりません。 海馬⇒連合野皮質への書き込みはどんなに気合いを入れようが集中しようが速くなることはありません。一日に集中して一気に後腐れなく覚えようとするのは全くの無意味です。これはニューロン――脳細胞の構造変化だからです。身体の成長のようなもので、記憶とは脳の成長なのです。何をどうやっても数ヶ月かかると生物の構造として決まっているのです。 覚えるのに時間がかかるのですから、それを能率的にするには、一度にたくさん記憶作業をするしかありません。記憶のこつは“大量にゆっくり”なのです。 この方法は、基本ラインとしての提案です。当然、個人差があります。人によってはケースは3つで十分だったり5つ以上必要かもしれません。不正解でカードを繰り下げるときも5枚でなく3枚4枚、あるいは6枚7枚の方がよい人もいるでしょう。これは、実際に実行しながら柔軟に微調整していくことが大切です。 またこれと同じ作業はパソコン上でもできます。プログラムが書ける人なら、このシステムをプログラムとして組んでしまうのもよいでしょう。 この方式でどの程度の語彙力が期待できるか計算してみましょう。 一枚のカードには、4つの単語がありますので、毎日新しいカードを5枚追加する計画にすると、一日当たり20単語となります。一月で600語、一年で7200語ですから、語彙力は一年で中級レベルになることができます。 一日5枚追加は、毎日一時間、遅い人でも2時間使えば可能です。私の場合、カード作りの時間を合わせて一日一時間で平均5枚でした。毎日一時間投資できれば、誰でも語彙力はかなりのレベルに達することができるわけです。 これを三年続けるとどうでしょう。3年で約2万語を覚えることになります。この2万という数字は、新聞を普通に読める程度の語彙力に相当します。三年あればほぼ満足なレベルに到達するというわけです。 一般に子どもは大人より早く言葉を覚えるというイメージがあります。研究によると最も言葉が増加する6歳児で、一日平均22語増えると計算されています。ところが、上記の方法ではそれを1時間で覚えることができます。正しいやり方で勉強すれば、大人は子どもの何倍もの速さで言葉を覚えることが可能なのです。 英語学習ではこれを、「大人は速いが、子どもは優れている――Older is faster, younger is better」といいます。大人の方が最初の学習が速いが、到達する上限は子ども頃から始めた人の方が高くなるというわけです。 | |||
しかし力を入れる運動でも、散歩、ジョギング、サイクリング、水泳などの運動の疲労が体に爽快感があり、後に尾を引きません。全身がなだらかに動き続ける中で力を入れているからです。 体に負担がかかるのは、力を入れているのに体を動かさないことです。 仕事や勉強がしんどくて疲れ、肩こりや腰痛を生み出すことがあるのは、ある無理な姿勢を保つために力を入れているためなのです。 勉強の姿勢で難しいのは、動きながら勉強するわけにいかないことです。無駄に疲労しないためには、力を抜いたままできる姿勢を考えるしかないわけです。 勉強だからといって、姿勢を正し正座する必要はありません。もちろん、正座の姿勢は腰の負担が少ないので勉強の姿勢の一つに取り入れてもよいでしょう。 長時間のパソコン作業は目が疲れます。対して、手書きの勉強は目は疲れませんが非効率です。手書きでも効率があまり落ちない作業を見つけて、それを手書き作業にしてしまうことです。 姿勢をこまめに変えるようにしましょう。椅子とテーブル、床に座るテーブル、壁にもたれたり、ソファーで足を組んだり、床に寝そべってクッションをひいたりなど、いろいろな勉強の体勢を作るのです。体の疲労が拡散することで、勉強を続けやすくなります。決して根性で乗り切ろうとしないことです。 a.椅子とテーブル b.床に座るテーブル c.壁にもたれる d.ソファーで足を組む e.クッションをひいて床に寝そべる 私の場合、a.がもっぱらパソコンでの原稿書きの姿勢です。図のようにディスプレイをややテーブルから離して、目が疲れないようにしています。
ただし、暗記カードの内容作りや、辞書をひく作業はすべてパソコンで行っています。本の辞書ではひくの時間がかかるからです。辞書は、アルクのWeb英辞郎などネット上に本より優れたものがたくさんありますし、自動翻訳も出回っているからです。 c.とd.の姿勢が読書とメモ、ふせん貼りの作業、テレビ、映画を見るときの姿勢です。 e.が暗記カードの書き取りの姿勢として、これらを無理せずローテーションすることにしています。 勉強できる姿勢を2〜4パターン作って、ローテーションしていくことで疲労せずに勉強することができるわけです。 | |||
記憶は蜘蛛の巣のようなものです。一本の太さは変えることができません。 蜘蛛の巣を強くするには多方向から網の目のように結びつけることです。 この結びつきの少ないものが覚えることができずに忘れ去られるのです。 主述連関、類語連関、反意語連関、係り結び連関、使用環境連関、聞き取り連関、発音連関、文脈連関など結びつけるべき記憶構成はいくらでも考えることができます。 およそこれらの関係が3つ以下のものは覚えることができないと考えて良いでしょう。 | |||
しかし、後で思い出せるというからには、その言葉は覚えているわけです。取り出せないわけです。 これによく似た現象があります。部屋でモノを探しているのにいつまでも見つからない。何日かたってふと見つけて、こんなところにあったのかと驚きます。この場合も、モノがなくなったわけではなく、その部屋にあるのですが、取り出せないだけです。 この部屋の荷物と、頭の記憶は構造が似ているのです。 部屋の荷物を使いやすくするには、整理整頓することです。頭の記憶を使いやすくするのもやはり整理整頓することです。 荷物の整頓で重要なのは、3つです。 1.よく使うものは目に入るところに時系列に置く 2.モノはできるだけ使う場所の近くに置く 3.たまに使うものはジャンル別に置く 記憶の整理も同じ原理が通用します。 1.単語は、その重要度を区別して覚える 2.使う場面に単語を組み合わせて覚える――言葉は文脈で覚える 3.たまに使う単語は意味分類で覚える となります。 単語を覚えるときは、平易な単語から順に覚えていきます。単語の暗記より文章の暗記が優先です。 具体的な手順を考えてみましょう。 一つのスキットがあります。まず単語を確認して文章のカードを作り暗記します。それができたら、中の単語を分類したカードを作り暗記するわけです。 そして、覚えた言葉は内容別――何が言いたいときに使う言葉かで分類整理して、自分専門の類語辞典を作って整理します。これはパソコンを使用するのがよいでしょう。 また、一度は実際の場面で使うのが効果的です。 | |||
私たちは、その場所にふさわしい言葉を選びたいと考えます。その場所と内容が組み合わさった記憶がよいわけです。自分の部屋のパソコンを起点に同心円を考えて、視覚的な配置で言葉をマッピングするのがよいでしょう。 また生活時間などの状況によっても言葉が限定されます。ケーススタディのように状況にわけて言葉を整理するのがよいわけです。あなたの行動の1週間を考え、時間ごとに言葉をマッピングするのがよいでしょう。 何かを言うときに、うまく言葉が思い浮かばないときは、類似する言葉を使って代用します。もし、類似している言葉を組み合わせて記憶していたなら、類似する言葉からぴったりの言葉を引き出すことが出来ます。すなわち、言葉を類似辞典式に分類してマッピングするのがよいでしょう。 3つのマッピング方法が出てきました。言葉をこの3つの方法で分類してパソコンに保存したり、ノートを3つ作って、その中にマッピングしていくのがよいでしょう。 | |||