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詩集『廻るときを』
    連祷・ぶなの森・5


●檻と口
       ― an Paul Schneider
 

   獣の檻はひとの檻と同じ広さで
   ひろびろと冬空を仰いでいる
   ひとの檻は獣の檻と同じ深さで
   天にひらいた窓坑がひとつ

   窓坑ちかくの広場には
   夜ごと吹きすさぶ風のなかに
   苦役に濡れた素肌のまま
   直立を強いられた人々がいた

   黙れ 動くなと
   浴びせられて凍る隊列に
   ひとの檻から穏やかに語られた
   義のために迫害されるひとは幸いだ

   あいつの口を黙らせろ
   果たしてその声は静かになった
   殴打の音だけが暫くつづくのを
   獣たちは黙って聞いていた

   獣の口とひとの口とを
   別のものと語る人々の地で
   獣の口とひとの口にまさる隔たりを
   獣もひとも黙って聞いていた



     注 パウル・シュナイダー(一八九七‐一九三九)。牧師。鉤十字旗への
     敬礼を拒んだためにブーヘンヴァルト強制収容所に拘禁。ドイツ語では人
     の口と獣(犬)の口を区別する。Mund とMaul。ここでは「あいつのマウル」。




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