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詩集『廻るときを』
    死と乙女 1


●夏まつり
                 死の舞踏Totentanz 西と東と
 

   格子窓の向こうから
   あいつが覗きこむとき
   おれたちは目を逸らしたりしない
   しらぬふりをして炎天をよぎる人影を見遣り
   あいつを露台に立たせておく

   戸口に廻って
   あいつが入ってこようとするとき
   おれたちは身を翻したりしない
   お囃子のひと節を調子はずれに歌いつづけ
   あいつを敷居に立たせておく

   車座に入り込んで
   あいつが骨肉を口にはこび
   手ずから饐えた酒を汲んでいるとき
   おれたちはおれたちで肩を寄せ酒瓶を傾けあい
   たがいに見ぬふりをしている

   ようやく腰を上げて
   あいつが宴を去る気配をみせるとき
   おれたちはそっと顔を見合わせる
   踊りの輪のなかへ還りゆく背を見送るおれたちに
   あいつがしずかに振りかえる



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