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詩集『廻るときを』
    an Johann Sebastian Bach


●変奏曲
              ――いのちの最も若い日に
 

   木立が激しく揺れている
   今朝も世界は
   重々しくざわめいているのに
   どうしてだろう
   そのどよめきが聞こえない

   ひとりのひとの
   かなでる巧みにうながされ
   音をたてずに
   木立がみな揺れている
   新しい世界への招きのように

   かるがると
   さあ
   この沈黙の彼方へ
   鳴り響いてゆこうと
   沢山の手が一斉に揺れている

   目覚めよと
   いきなり呼ぶ声が聞こえる
   はるかの高みより
   光の瀑布が
   枯れ骨の野をつらぬく

   新しい日の歩みに
   初めの詠唱(アリア)が還ってくる
   辿り着いた果てが
   思いもよらず
   幼い日の風景であったように

   とおい日の
   初めの歩みの勁さで
   懐かしい旋律が還ってくる
   新しい世界への促しのように
   命がいきなりかるくなる

                 *最も若い日(der jüngste Tag)。終末の日。



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