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とおい日に
「ERA」第4号


●船渠
            Penelope


埠頭のあたりに
今朝も鴎があつまって
たかだかと螺旋を描いている
見えない風圧に
押しあげられ
風の鋳型にのこされた
形見の塔をかたどっている

ついばむ旅鳥の群れはまばらに
充たされぬ身の器
この空虚な墓を象るものが
極北の海にもあるという
あおい氷の塊に埋もれた
破船の入江に
充たされぬその形が

風のうちに聞いている
逸る槌音を
さらに駆りたてる歌を生み
壊してはまた産んだ身の記憶を
虚ろとなった体躯を
長々と横たえ
みだらな空無を夢見ている

とおい日にこの胎に受け
懐にいだいた弓の歌
剣の歌はかぞえきれない
粗鋼の馳せ場に弾けていた歓びを
時々に見送って
いまは充たされぬ器に
月ごとに溢れくる夜

草生した身の傾斜は
しかし欺きを欺くための徴
夜ごと祝宴を求める
あたらしい求婚者たちの
すべての虚言と酩酊を容れて
月ごとに覆され
月ごとに断ち切られる

備えをなす密かに
閃光の記憶とともに
柩のかたちで還りくるものを
迎えいれるための備えを
破船は還りくるか
見栄えなきその弔いの船は
舳先に立つ和らぎの人とともに




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