二、古道具屋
 
 お話は、ドイツの南西にあるテュービンゲンという大学町、そこの小さな古道具屋で始まります。ここはほんとうに坂の多い町。まるで、坂道を作りたくて、町を作ったのではないかしらと思われるくらいに。坂はところどころけわしい階段になっていて、たどっていくと、突然、予想もしなかったところに出ていたりすることがあります。
 冬の近づいたある日のことでした。夕方の薄暗がりのなか、そんな坂道の一つをミンナが降っていきます。もうなんべんもたどった道なのに、まるではじめてのように思われるから不思議です。ふと気がつくと、階段が踊り場のようになっていて、窓から明かりが石畳に漏れています。小さな飾り窓は、作りからして古道具屋のよう。まあ、こんなところにお店があるなんて。古道具屋というものはどこか人の心をわくわくさせるものです。ミンナもいつのまにか、控えめに開いた扉から店の奥を覗いていました。
 ミンナは、どきっとしました。ひとつの顔がミンナを見つめています。なあんだ。よく見るとそれは人形でした。マリオネット人形。そう、あやつり人形が奥の壁に下がっていたのです。
 
 
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