星の眼差
                  川中子義勝
 
 

   1 天宙図

 天幕の裾を持ち上げて
 少年が向こう側を覗き見ている
 世界の果てるその向こうに
 少年は何を見いだしたか

 星々の交錯する精巧な機械か
 大いなる手の育む宇宙か
 各層には天の諸力や軍勢が控え
 地上の世界を見つめていた

 少年が星を見上げるとき
 少年もまた星に見守られていた
 不遜と怠慢には必ず報いが臨み
 一時に数多の星が墜ちてきた

 何時(いつ)からだったか
 少年が仰ぎ見る眼差しを
 筺の底に灯すことを学んだのは
 地が冷たく輝いたのは

 天地を分かつ蒼穹の幕も
 いまは細胞の膜ほどに薄くなり
 生死を隔てる境の向こうから
 突然細い針が突き刺される

 もはや星の墜ちない世界に
 老いた地はひとり苦みを増し
 もはや願いを寄せられぬ星々は
 とおく眼差しを寄せ続ける


   2 幕間

 それが舞台だと思っていた
 巧みに歌い
 見事に奏でてみせる
 そこで私たちほど
 息の合う仲間は居ないと思っていた

 それが舞台だと思っていた
 それぞれに稽古を積んで
 いのちの晴れの刻に
 息の合うところを聞かせて唸らせる
 それが本番だと思っていた

 行ってくるねと
 いつもの親しげな挨拶を残して
 垂れ幕の間を抜け
 ひとり舞台に出ていった君
 君を迎える歓呼の拍手が漏れ聞こえた

 ひとり舞台裏で歌う
 もう君は戻っては来ないから――
 待たれているのだ
 出て行って私も
 本番で歓呼の歌に加わるその刻を