鳥の影
            川中子義勝
 
 
  高層の窓辺に佇み
  見はるかす彼方
  一羽の鳥影が浮かび
  滑りゆくその飛翔の軌跡を
  視線はどこまでも追いかけてゆく
 
  追いかける眼の迅さに
  心は辛うじてついてゆく
 
  鳥の軌跡は
  惑わしの残像
  かつて日輪に撃たれ
  穿たれたその傷手のために
  焦点はつねにその痕跡に結ばれると――
 
  とおく鳥の軌跡が掠れゆくあたり
  ひとこえ響きわたった悲しげな叫び
  たしかに届いたこの叫びも
  かつて剥がれおちた
  記憶の残響なのか
 
  むしろ彼方からの訴え
  呼びかける合図ではないのか
 
  磨かれた錫板のように
  冬空は鈍くひかりを放ち
  鏡に刻まれた擦過痕として
  空の巨きな瞳のなかを
  鳥の光跡はよぎってゆく