初夏の野草


今年はエルニーニョ現象の影響か、5月下旬、夏のような暑い日が続いた。 そのせいか、散歩のおり見かける近所の空き地の雑草の勢いのすさまじいこと。

この時期、駐車場の隅とか、道路脇のちょっとした空き地に必ずといってもよいほど見かける雑草がハルジオンとヒメジョオン。
数年前に、園芸に凝っている友人が、この両者の判別法を話していたのを思い出した 。 当時は、僕は関心がなかったので、全く忘れていたのだが、5月末ごろ、道端に咲いているハルジオンがなんとなく様子が違うので、もしかするとこれがヒメジョオン?と気付いた。 気付いてよくよく見れば、ちょっと前迄はハルジオンばかりと思っていたのに、何時の間にかハルジオンのほうが少なくなってしまっていた。 ちょうど今ごろが、二つの似たような野草の交代時期であるらしい。

区別法は、詳しく見ればかなり違っていているのだが ハルジオンは
1)花期が早い(4-6月)、 ヒメジョオンは(6-10月)と書いてある。
2)茎が中空、ヒメジョオンは茎を手で曲げてみると大分腰が強い。
3)茎葉が葉柄がなく、茎を抱くように着いている。
4)蕾が下を向いている。
等々

どちらも北アメリカが原産地でハルジオンは1920年代に園芸植物として渡来したものが野性化し、 ヒメジョオンは1860年頃渡来したようだ。
どちらも、名前は知らなかったが、もっとも目につく雑草であるが、これが外来植物で、明治以前には日本になかったと思うと不思議な気がする。

5月の末、船橋県民の森近くの畑の傍にノアザミが咲いていた。 これは野生というより、こちらの農家で育てているのかもしれない。 野生ではこんなに無傷で美しくは咲かないかもしれない。
アザミは種類が多く分類が難しいそうだが、春から夏にかけて咲き、総ホウが粘る特徴がある。 春咲いていて、花の首が粘ればノアザミと考えてよいそうだ。 写真のアザミの総ホウも粘っていたからノアザミに違いない。 なお、写真のものは花の下にすぐ葉がついているが、高原などで夏咲くものは花柄が長くなる特徴があるとのこと。

これはスイカズラ。 僕ははじめて見る花だった。 随分変わった形をしているから、なんとなくこれは外来種かな?などと考えていたのだが、スケッチをして家に帰って図鑑を見るとスイカズラであった。 蔓性で道路脇のフェンスから顔をだしていた。 本の説明を引用すると、

初夏に甘い芳香のある4cmほどの花をつける。 細長い筒状で先が上下二つに裂けて上方の花弁は上向きに立ち、さきが4つに浅裂している。
葉腋に花が2つずつつく。 花は白だが、開花後次第に黄色に変わるので「金銀花」という別名もある。
スイカズラは日本、朝鮮、中国に分布しているが、日本から北アメリカ、ヨーロッパに広がったようで、1775年(徳川時代)来日したスウェーデンの植物学者ツュンペリーが長崎で見て[日本植物誌 Flora Iaponica,1784]で紹介している。
現在、スイカズラはジャパニーズ・ハニーサックルの名で北アメリカ、ヨーロッパ、マレーシア、ニュージーランドにまで進出していて、 アメリカでは駆除困難な強害草にランクされるほどはびこっているそうだ。 有名なナイアガラの滝付近でも野性化したスイカズラが水辺まで密生しているそうである。


2,3年前に造成した宅地がバブル崩壊のせいか、かなり売れ残っていて雑草天国になっている。 その雑草の中から太い蔓が伸び出して、 蔓どうし何本か巻き付き合っているもの、 蔓の先を鞭のように振り上げているもの、道路まで伸び出して先端を踏み砕かれているもの、見方によってはすさまじい光景である。
なんだ、この野蛮な雑草は? とにかく名前を知りたいので、 だいたいの所をスケッチして家で調べてみた。
もうこれだけで野草を知っている方は見当がつくのだろうが、これがクズだった。

まめ科の多年草のつる草。 蔓は10m以上にも伸び、全体に褐色の細かい毛が生えている。 地下に肥大した芋状の塊根があり、長さ1m以上、直径20cmにもなる。
葉は厚ぼったく、長い葉柄のある楕円形(切れ込みのあるものもある)大きな3小葉からなる。
秋には、葉腋から濃い赤紫色の蝶形花の密集した総状花序を伸ばす。 花の色は白いもの、淡いピンクのものなどがある。
葛というと、 第2次大戦前後、慶応大学で折口信夫先生の講義を聴いていた兄が教えてくれた先生の歌
葛の花 _ 踏みしだかれて、 _ 色あたらし。_ この山道を _行きし人あり
を思い出す。 この歌は僕のような単純な人間でも空想力を刺激される。

話がそれてしまったが、もしこの歌を知らなかったら、僕の葛についての感想はもっとひどいものであったろう。 あの挑みかかってくるような、葛の蔓は、野蛮な、原始の残虐ささえ感じてしまう。
どちらが、本当の葛の姿かな? もっとも、僕はまだ,クズの花を見たことがないのだ。 これも、今年の僕の宿題だ。

僕がよく知っているクズは、くず餅とくず桜、どちらも好物である。 それから、子供の頃、葛粉に砂糖を入れて、水で溶き火にかけて割り箸でかき混ぜているうちにプリン、プリンに固まってきて・・・・・そんないたずらをしたことを思い出した。 食べて美味しいというよりも、そのプリプリした舌触りが記憶に残っている。

葛もまたスイカズラのように日本からアメリカに広がっている。 1876年フライデルフィアの万国博覧会に日本から鑑賞用蔓植物として紹介された。
その後1930年代に有名なテネシー河流域開発で土砂の流出を防ぐ緑化植物として利用され好成績であった。 しかし、1950年代になると余りにはびこりすぎて、他の植物を枯死させてしまいジョージア州などで「好ましからぬ侵入者」のレッテルを貼られてしまった。
スイカズラにしても、葛にしても故郷の日本よりアメリカの方が住みやすかった様である。


図書館でふと手に取った本
_浅井康弘_「帰化植物のはなしー緑の侵略者たち」_朝日選書(1993)
この本に外国から入ってきた植物、また日本から外国に渡った植物について、興味深く、わかりやすく解説されている。
身近な雑草が明治以後渡来したものであったりする。 また、シーボルトの「日本植物誌」の出版を援助したオランダ王妃アンナ・パウロウナを記念して、シーボルトは桐の新属名をPaulowniaとした。 それで、今でもヨーロッパでは桐を"Royal_Paulownia"の名で呼んでいるそうだ。
等々

('98/06)


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