ドンキー・松本のレポート

舛添 要一「いま甦れ日本経済 」メモ


「いま甦れ日本経済」 講師 舛添政治経済研究所・所長 舛添 要一
(1999.7/5 於 新宿京王プラザホテル)
新・大和証券の特別記念講演会に出席した。話は都知事選の公約に枝葉の付いた感じではあるが、一面の真理もあるように思うので聞いたままにメモしてみた。ご参考になれば幸甚である。

・ 新宿に来ると、つい都知事として来たかったと思ってしまう。明石さんには勝ったのだ けれど、後から強い人が出てきて残念ながら実現しなかった。

今日は長期的視点から歴史的な見方をも併せてお話したい。

・ 今日、日銀の短観が出たが良い見通しを出してきている。
・ その中で心配なのは失業の問題で、雇用の問題は遅効指数なので遅れて来るからである。
・ 株については外人・個人は動き出ている。
・ 公共投資は半年分が前倒しで出る。小渕さんは総裁選を前にやらないはずが無い。
・ 車の販売台数は新車で前年同月を上回っている。5月単月のマイナスは問題は無い。
・ 今伸びている住宅は住宅減税で伸びたものであり、秋には頭打ちになるだろう。
・ これらは先ず好転している短期の項目だが、政策対応と云っても長期対応と短期対応があり、今の政府はこれらの対応がバラバラで、短期対応については小渕さんは良いが、長期の展望は無い。

・ アジア経済も何とか回復基調に乗り始めている。
・ 現状では家計・企業・政府とも上手くやっている為景気が伸びない。

・ 家計にとって現在は消費の抑制がベストである。物はほとんど揃っている→物が売れない→会社が潰れる→景気良くならないのサイクルになっている。年金等は減らされる方向で更に消費の抑制が促進される。

・ 今、企業はリストラをかけないとならない時期である。設備過剰・人員過剰・債務過剰の解消が先決であり、景気を良くする方向には回らない。

・ 政府は多額の赤字国債を減らせない。減らせば景気が収縮するので長期的判断を下せないでいる。前橋本内閣は経済中心で選挙に負けた。小渕内閣は今、短期に垂れ流しである。家計・企業・政府3者のうち政府だけが景気を良くする方向の政策をしている。つまり大きな政府を維持しているのでこれが短観の1.9%を下支えしている。しかし、これはモルヒネで、モルヒネで持っている日本経済はモルヒネが切れるとバタンと行く。良い見通しは企業のうちリストラの済んだ企業が力をつけ始めていることであろう。

歴史的に見ると、今は明治維新のペリー、戦後のマッカーサーに次ぐ第3の大きな外圧を受けている。(特にアメリカ)
・ 幕末ペリーが来た時、日本は改革を断行したので他のアジア諸国と違って生き返れた。(他は植民地)19世紀は富国強兵でなければ生きられないことを知り藩体制を中央集権に置き換えた。さて、本来は、今は地方分権でやらねば世界の趨勢について行けないのに、日本は未だ中央集権である、依って日本は今、買いではないのである。
・ 戦後、マッカーサーの時代には軍備を持たない平和憲法を持たされた。軍備に要する費用が民間に回り民が潤った。戦敗国としては大成功の結果となった。平均寿命は世界1の長寿国となった。その上戦争で死なないこともこの平均寿命を押し上げた。貧富の差も無く(他のアジアは大富豪と貧民の格差大きい),日本食はバランスがとれている。
・ この様にあらゆる面で良い日本だが21世紀はどうだろうか?平等になりすぎて働く人とそうでない人との差がつかず、働く人の意欲を殺いでいる。

今回の外圧に対抗するにはどうしたらよいか。
・ 先ず、大きな政府を改めスリム化する。地方分権を推進し権限を、許認可権を委譲する。これには東北州、近畿州と云った道州制、連邦制はどうだろうか。中央省庁はより少ない許認可権でより多い・大きな仕事が出来る身軽な体制にスリム化する。今のような肥大化した省庁では世界の趨勢に対し身動き出来ない。
・ 規制は緩和し競争をさせる。企業(国営・公営・公的事業者を含む)に倒産出来る自由を与える。消費者に選択の自由を与える。金融機関の護送船団方式は力を付けさせたら取り払うべきであるのに今までそれが無かった。それが今のビッグバンである。消費者は秋葉原で電気製品を選択するように銀行や証券会社を選ぶべきです。2001年になるとペイオフで勝手に選べと放り出されるようになるのです。今からしっかり選ぶ癖をつけるべきです。
・ これからは、政府の指導の無い処が生き残ると考えた方が良い。不動産はインフレ時代のものであり、デフレの時代には不要である。最も、住む所や建物が家賃を生むような生きた土地は良いが資産だけで土地を持っても下がるばかりで税金で赤字になる、さりとて売れないといった袋小路に落ち込む。

今までの戦後50年、日本政府は大成功した。これを捨て切れないでいる。次の時代にソフトランデイグする為にはどうしたら良いか?
・ 土地は捨てなさい。利用しないで保有するのがダメなのは前述の通り。アパートでも建てて貸すのならOK.。土地はインフレ志向。買って家を建ててより高く売る時代は終り。
・ 株は10年スパンでは確実に上がっているので資産としてはOK.。
・ グローバリゼイションとは国境の無い制度のことである。このグローバリゼイションに適応するために各種の犠牲が起きた。今回も「今まで持っていた人」が損をする犠牲を受ける。

・ 年率10%成長と云う異常な40年が終わり正常な成長に戻ったと認識すべきである。
・ ‘60年代から経済指標に狂いが生じている。これが異常な40年の理由である。
先ず、家族であるが、40年前田舎を捨てて都会に出てきた人が定年を迎える。この40年間年寄りは田舎で、親子の核家族は都会に住んでいて親子3代が一緒に暮らすことが極めて少ない異常現象が続いた。  昔は町に「うるさい爺・婆」がいた。家にも年寄りがいて細々と注意をした。  今、これが無いので非行少年が生れる。早く正常に戻すべきだ。

・ 延長線にある学校はどうか?江戸時代の寺子屋は私立であった。  ここが子供の唯一の社交の場であり、先生に誉められるのは勲章だった。  子供は「寺子屋に行かせない」と云われるのが怖さに非行に走らなかった。  今はどうか、公立小学校へ行きたがらない登校拒否が如何に多いことか。  それは碌でもないサラリーマン先生にも学校にも魅力が無いからで、子供は「寺子屋(学校)に行かせない」と云われても平気である。  むしろ私立の小学校の方が魅力があり(企業努力をしているので)そちらへ行きたがる。  所詮、公で役所に守られ何の努力もしないものは企業同様ダメである。

・ 出生率はどうか?現在は夫婦で1.3人。これが2人以上でなければいずれ日本は滅びる。高齢化社会での出生率の低下は、高齢化が先に来てしまっただけにより小子化が大変で年金の問題に利いてくる。小子化の1つの要因は女性の未婚化・晩婚化である。昔のように20代前半で生めば次が可能になるので小子化は解消するが、20代で生んで職場復帰出来るインフラが整っていないことが問題である。男もだらしがなくなった。

・ 土地については、今までは資産として土地を持ち、その上に持ち家を建てる→これが出来たのは日本的な雇用体制があったからである。  終身雇用・年功序列の日本的な雇用体制が安全ネット(サーカスのブランコの下のネット)の役割を果たし持ち家を促進していた。こんな雇用体制を残すのか否かは問題の点である。

終身雇用が崩れ給料も年功で上がらなくなるとローンを組めなくなる。  会社が競争力を持つため、こういった雇用制度の改革をやるのかどうかである。  無能な中高年の給料をより高い失業保険を払うより会社内に保有しカバーしてもらったほうが日本全体としては得策なのだが、会社内に保有しカバーした上で会社が潰れない為にはより良い商品(ソフト商品も含む)を開発するしかないが……。

・ 安全ネットについては企業の安全ネットは切れた。  今は誰も張ってくれていない。下にネットが有ったのでローンで家を買っていたがもう誰も買わないだろう。
・ 新しい安全ネットは企業が張れないのなら誰が張るのか?政府が張るべきだ。  本来、デフレの時代は借家に住むべきだ。  政府は良い場所に借家を沢山作る。今まで自分で良い場所を取るには家を買うしかない……こんな状態を解消するインフラの整備が必要だ。

これからの高齢者はなるべく狭い場所に住むべきだ。  大家族で住んでいた大きな家は年寄り二人で掃除するだけでも大変だ!  自分の資産は自分で使ってしまえば良い。  子孫に美田を残すのは相続争いを起こさせるだけだ。  今云われているリバースモーゲージとは先に家を自治体に売り、死ぬ時まで住み、死んだら所有者が自治体になると云った制度である。  代金は年金に似た形で払われる。約束の時期に死なない場合は……そのへんを工夫すれば良いのではないかと思う。
・ その他のセーフテイネットも整っていない。

・ 年金について云えばこれを基礎年金だけ残して廃止し民間にやってもらう。財源は消費税。消費税は1000万円のベンツを買う人は10%で100万円、80万円の軽を買う人は8万円と貧富に比し公平である。  政府には中央政府と地方政府の間にもう1つ社会保険政府があり、ここにメスを入れなければダメである。
・ 介護保険5兆円も消費税2%で賄える。介護保険料の方が高いと都知事選で力説しても「消費税はNO!」で落ちた。消費税アレルギーと思う。
・ この他老人医療保険の問題もあるが、年金・介護保険・介護保険合わせて消費税10%で賄える計算である。

・ 働かずに失業保険を受け取るのは止めさせる、一生懸命働く人の報酬が少ないことも改める、不平等はやめさせる、更に一番大切なことは政府が干渉を止めることである。  政府も政党も大きすぎる。  小さな政府にスリム化することこそ今大切である。
[完]

('99.07)


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