多くの人がこの歌を訳すとき
But it wouldn't be make believe if you believed in me
という箇所を「あなたが私を信じてくれれば本物になる」というふうに訳しています。
意味としては同じなのですけど「にせものなんかじゃない!」といいきるkaokiさんに
私は共鳴しました。
そう、信じればにせものなんかじゃないのです。
ただ最後の「人生はにせものなんかじゃない」という表現は
日本語としてちょっと通じないかもしれないと思い
ご本人の承諾を得て「人生は本物になる」とさせてもらいました。
それから恋の歌であると同時に、あの大恐慌の時代に人々の心を慰めたこの歌の役割をkaokiさんは
感じ取っていられたのだと思います。
ヴァースの部分の訳にそれがよく表れています。
そう、バブルの中には虹があるのです。
その虹を追いかけてハッと気づいたら、バブルがはじけて昨日の貯金が今日の借金になっていた
昨日の恋人が今日は他人の恋人になっていた
まるでウソのような話……。
「相手の微笑みは虹となって私に微笑みかける
そばにいてくれないと人生が味気ない」
まさにいつの時代も恋も儲け話もシャボン玉と同じ。
人を夢中にさせておいてあるときパッと消えてしまう!
でもね、私だけは信じてね。
私だけは真実だからね。
あなたを裏切ることはない
あなたの夢は本当になるんだよ!
さて今度の恋は本物でしょうか?
それとも……
―junさんの作品―
誤訳というのはないのですがホンキー・トンク・パレードや
バーナム&ベイリーをもう少し分かりやすく日本語に開いて欲しかったです。
でも「it's a melody played in a penny arcade」を「祭りの屋台から聞こえてくるメロディー」
という訳にしたのは工夫を感じましたし、まさに情景が浮かんでくる訳だと思います。
それから読む人にもう少しjunさんなりのテーマの押しつけが欲しかったような気がします。
誤訳ギリギリのところで「この歌を自分はこうとらえているんだ」という訳者のこだわりの
ようなものが欲しかった。リスクをおかす勇気というのは大事だと思います。
―おけいこさんの作品―
おけいこさんは失恋という立場でこの歌を解釈してくれたのですね。
なるほど……。
「はかないこの世に身をよせて」という言い方で淋しさがつたわってきます。
ただ時制の問題があります。
ヴァースの部分で過去形が使われていればおけいこさんの解釈は成り立ちますが
全部現在形なんです。
従って「私」は現在そう感じている、つまり相手の一挙一動に振り回されている
のではないでしょうか?
それと原曲を聞いていただければ分かりますがあまり失恋調のメロディではないのです。
junさんやkaokiさんのように現在恋愛中と捉えたほうが無理がないように思えます。
―みちこさんの作品―
解釈は正しくされていると思いますが「信頼」という言葉が
少々堅い感じがします。
「本物のつもり」という言葉も雰囲気は分かるけれど
ちょっと漠然としすぎているような気がします。
誤訳というものはないのですがもう少し一般的に分かりやすい言葉を選んで
欲しかったと思います。
でもThe world's a temporary parking placeを
「かりそめの宿」と訳されたのはとてもよい意訳だと思います。
―SEINFELDさんの作品―
この世に無常感を感じている人の歌なんですね(笑)
ちょっとセンチメンタルに訳されすぎているような気がします。
特にヴァースの訳でそう感じさせてしまいます。
先ほども書きましたが原曲は明るいメロディなのです。
しかも大恐慌時代に人の心を救った歌なのです。
ステージに飾られた紙のお月様とボール紙の海は
観客の目から見れば本物にも見えるのです。
たとえそれが「お芝居」と分かっていても!
ゆっぽんさんは大胆な方です(爆)
誤訳を怖れず自分の感覚を信じて訳されていますね。
だから説得力があります!
あたったときはすごい名訳になると思います。
ある意味でkaokiさんとゆっぽんさんは似ているタイプなんだな、と
思いました。
ただ仮定法の使い方のところで解釈が違う方向に
行ってしまったような気がします。
あそこは「もしあなたが○○○なら×××なのに」と
素直に訳されたほうが良かったと思います。
これは恋を手に入れてハッピーな歌というより
「私のこの気持ちを信じて欲しい」という求愛の歌として
捉えたほうがヴァースの部分の訳ともピッタリくるのではないでしょうか?
ヴァースの訳は基本的に私は好きです(^O^)
以上が今回の訳詞コンテストにご応募くださった方々の作品です.
選考させていただいた側の感想としてものすごく選考が大変だったこと。
私なんかがおこがましくも講評させていただいていいのかという不安。
それから真摯にこの歌と取り組んでくださったことへの感謝です。
仕事やお勉強の合間をぬって本当に貴重な時間を割いてくださってありがとうございました。
心からの感謝とともに皆さんのこの経験がいつか大きく花を咲かせる一歩となることを
信じています。
今後ともよろしくお願い致します。
なお、最優秀になられたkaokiさんの作品は
私の1stCD「Jazz Bird ―いつか聴いたうた―」に掲載させていただきます。