地蔵峠からの眺め
群馬県民は、鬼石町の下久保ダムで三波石峡を失い、 今また、倉渕ダムで烏川渓谷を失おうとしている。
県が倉渕村の烏川に計画している倉渕ダムの建設予定地に絶滅危惧(きぐ)種に指 定されているイヌワシが飛来していることが17日、分かった。 日本野鳥の会県支部が幼鳥を含む3羽を確認した。イヌワシの生息が確認されたこ とで、林道工事などが中止に追い込まれた例もあり、県自然環境課は「早急に事実関 係を確かめたい」としている。 県支部によると、飛来が確認されたのは今年7月中旬から。建設予定地周辺で支部 の複数の会員が成鳥2羽、幼鳥1羽を確認した。 日本イヌワシ研究会(事務局・長野県)の浅川千佳夫会長=高崎市在住=による と、建設予定地の周辺では93年まで繁殖が確認されていた。 しかし、95年度に営巣地のごく近くで同ダムの付け替え県道工事が始まり、それ 以降に繁殖や飛来を確認した記録はないという。 卯木達朗県支部長は「2年前に休猟区になって周辺にえさとなる小動物が増えたた め、他地区から戻ってきたのではないか」とみている。 幼鳥は親鳥と目立った大きさの違いはない。親鳥に比べて羽根の色が黒く、両翼と 腰に白い部分があるのが特徴。通常6月に巣立つが、数カ月は親鳥のそばにいるとい う。 これまでの調査では、以前の営巣地付近で繁殖は確認できなかったが、同支部は 「(目撃地から)比較的近いところで営巣している可能性が高い」(卯木支部長)と みている。 「他地域の個体がえさ場にしている可能性もある」という意見もあり、同支部は営 巣の有無を確認するために、11月から来年1月にかけて周辺を観測調査するとい う。 県自然環境課によると、これまでに県内で確認されているイヌワシは10つがい。 同課は今年から保護対策委員会を設けるなど生息環境の整備を進めている。 森山脩一課長は「(イヌワシの確認は)聞いていなかった。非常に貴重な個体であ り、早急に関係者から状況を確認したい」と話す。 公共事業をめぐっては、イヌワシ、クマタカなど猛きん類の生息が各地で工事とぶ つかっている。ダムや河川改修、道路、公園など影響は多岐に及び、企業団地や林道 などの計画が中止に追い込まれた例も出ている。 イヌワシは本州に生息する鳥類では最大。環境省は全国で600羽程度しか生息し ていないとして、極めて絶滅の危険性の高い「絶滅危惧種」に指定している。 「倉渕ダム建設凍結をめざす市民の会」(武井謙司代表)は17日、イヌワシなど について早急な調査と環境アセスメントを実施するよう知事あてに要望した。