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★元市民課職員の危ない話★
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誰も教えてくれない戸籍の話
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出 生 (2)

 出生届を受ける側(役所)からしますと、受理する時に一番気をつかうのは、赤ちゃんの名前の字が名前に使える字なのかどうかという点です。
 名前に使える字は、漢字では「常用漢字(1945字)」と「人名漢字(285字)」合わせて2230字。そして「ひらがな」と「カタカナ」も使えますが、アルファベットは使えません。

 「ひらがな」と「カタカナ」はすべて使える字なので、問題はないのですが、問題は「漢字」です。数にして2230字しか使えないのです。2230字といってもピンとこない方も多いでしょう。
 私の家にある漢和辞典には約1万字の漢字が収載されています。極普通の漢和辞典ですから、こんなものなのですが、1万字でもまだまだ全部の漢字が載っているわけではありません。漢字の数は、
5万を超えると言われています。いえ、今、テレビ通販などに登場する電子辞書は8万字登載なんてのもあります。
 
そして、今では、漢字の総数は20万をこえると言われています。意味としては同じでも、ほんの少しずつ形の違う異体字をみんな別の字と考えればたしかにそのくらいの数になるかもしれません。でも、そうなってくると正確な数は誰にもわかりません。
 それら、とにかく数多い漢字の中で、名前に使える字は2230字ということは、名前に使える漢字はごくわずかで、ほとんどの漢字は名前には使えないと思っていたほうが良さそうです。

 辞書に載っていない字は、名前に使えそうもないけれど、辞書に載っているきちんとした字なら名前に使うことはできるはずだ。

 携帯電話のメール機能の漢字変換で出てくる字なら名前にも使えるはずだ。

 いえいえ、名前に使える2230字以外の漢字は使うことができないのです。辞書に載っていても、携帯電話に出てくる漢字や、ワープロで変換することができる漢字でもそれが使える2230字以外の字だったら名前に使うことはできません。名前に使えるのは、辞書に載っている中のごく一部の漢字だけです。すべてが使えるわけではありません。

「ー、ゝ、ゞ、々」も使い方が正しければ使えます。

 名前に使える漢字はごくわずかで、ほとんどの漢字は名前には使えないのでは、名前を考えるときにものすごく制約があり難しいのではという感じがしますが、そうでもないのです。日常、よく使っている常用漢字はすべて使えますし、常用漢字以外にも人名漢字として285文字は使える字なので、普通に考えればこれで充分なはずです。

 さて、名前というのは、その人の名前そのもので、それ以外の意味はありません。にもかかわらずどうして、名前に使う漢字をこのように法律で規制する必要があるのでしょうか。世の中に存在しない漢字を勝手に作って、それを名前にするのはダメなのはわかります。それは「字」としては認められないものですし、そんなことしたら収拾がつきません。
 でも、辞典に載っている(世の中にある字)ならいいのでは? その人の名前なんだからその人(親)の勝手でいいのでは? 制限するのは表現の自由の侵害で憲法違反なのでは? 他人(国家)がとやかく言う問題ではないのでは?

 そうですねぇ。たしかに、上記のような意見を持っている方もいます。

 ただどんな文字でもいいとなると、誰も読めないような、あるいは書けないような名前が世の中にあふれ、印刷物の作成にも支障をきたすことにはなります。文章の中では難しい言葉は必ずしも漢字にする必要はなく、ひらがなで表現してもよいのですが、人の名前はひらがなで表現するわけにはいきません。元々ひらがなの名前ならひらがなですが、漢字の名前はその漢字が名前だからです。
 本人からしても、いつも名前を間違って書かれることが多かったり、正しい名前で呼んでもらえなかったり、その都度、どう読むのか、どういう字なのか説明しなくてはならなかったりするので大変です。
 そして、名前というのは、本人だけのもの(個人的なもの)とはいえないと思うのです。社会に対してといいますか、自分の名前を世の中に示しているという点で、公共的なものという感じがします。たとえ、自分は困らなくても、その人を取り巻く社会が迷惑を被るような名前はよくないと思うのです。
 子の名前を決めるのは親の権利だから、使う字を制限するのは表現の自由の侵害で憲法違反だと、国を相手に裁判を起こした例がありますが、結果として敗れました。「表現の自由は無制限に認められるのではなく、公共の福祉に反しない範囲で認められるのだ」というのが判決の理由です。

  

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 漢字については、制限がありますが、読み方に関しての制限はありません。字については、いわゆる「当て字」でいいわけです。

 現在、実際に、出生届をお受けしていて感じるのは、「名前の読み方が難しい!」ものにしばしば遭遇します。出生届には、ふりがなを記入するところがありますから、その名前の読み方はすぐわかるのですが、

「これ、読めないよなぁー」

「へぇー、これで「○○」って読むんだぁ、考えたねぇ!」

ってなぐあいです。

 これは、その漢字が名に使える漢字だったら、出生届を受理する段階では問題ありません。受理するときに問題なのは読み方ではなく、「字」そのものが使える字か使えない字なのかという点です。(「悪魔」は、使える字だけど、ダメという例もありますが)
 ところが、名付けの専門家が言うには、あまり他人に読めないような名前は、やっぱりよくない名前だそうです。

 名前は、本人が社会で活動するほど、見えない所で、知らない人に読まれることが多く、名前はそういう社会的なものであり、つねに社会の視野で考えることが必要で、 読み方のわからない名前は、社会にとって迷惑でしかなく、「インパクトがあってすばらしい」ことにはならないんですって。

 う〜ん。なるほど・・・。

 常用漢字は、社会生活のために必要だとされる漢字で、特別に名前用として選ばれたものではないので、毒、死、悪、災、鼻、壁、板、歯、など、普通に考えれば、名前に使いようのない字もたくさんあります。
 また、人名漢字は、はじめから人の名前に使える字ということで選ばれたものですから、確かに名前に使われているものが多いです。何を隠そう私の本名は漢字一字なのですが、この、人名漢字の中にしっかり載っています。(よかった・・・)
 でも、けっこう難しい字が多く、「えーっ!こんな字があるんだ?」というような見たことも聞いたこともない字もあれば、「なんとなく見たことのある字だけど、読めない。」という字もたくさんあります。

 こうしてみると、常用漢字、人名漢字の2230字の中で、現在の時点で実際に名前に向く字は半分にも満たない、1000字以下ともいわれています。私が漢字を知らないだけかもしれませんが、名に使える2230字という数は、けして少ない数ではないという気もします。

 たとえば、英語のアルファベットは26文字しかありません。英語を使っている国の人達はこの26文字の中で名前をつけているのです。それに較べたら、日本の2230字プラスひらがな、カタカナという文字数は、もう、較べるまでもなく莫大な数です。凄すぎます。

ところが・・・・、

名に使えない漢字の例

庵 珈 珂 牙 竿 庚 柴 雫 雀 璋 逍 壬 浚 惺 湊 綴 兎 沓 橙 祢 芭 碼 阪 豹 苺 戊 茗 椛 俐 悧 哩 梁 憐 檸 煉 萠 遙 堯

 上記の漢字は、常用漢字にも人名漢字にも入ってない字なので、現在、上の漢字を使って名前を付けることはできません。これらの字と、人名漢字との違いはいったいなんなのか、私にはよくわかりません。どちらにしても、ハッキリとした線引きは必要だとは思いますが・・・・・。

 私、個人的には、名前に使うことのできる漢字はこれ以上増やして欲しくないというのが本音です。ん? いや、3000字ぐらいまで増やしてもいいんじゃないかという思いもあります。これ、条件付きですけど。

 近い将来、名に使える漢字は大幅に増えるということらしいです。

 はい。それでは、いよいよ、常用漢字とはどういう字なのか、人名漢字とはどういう字なのか、実際にお見せしましょう。(べつに私が「見せましょう」といわなくても辞典には載っています。はい。)

  

常用漢字(1945字)

人名漢字(285字)

  

  

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