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★元市民課職員の危ない話★
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誰も教えてくれない戸籍の話
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分 籍
(ぶんせき)

 分籍とは、文字通り戸籍を分けることで、筆頭者とその配偶者以外の20歳以上の人なら今までの戸籍から分かれて、1人で新しい戸籍を作ることができます。自分1人だけの戸籍なので、筆頭者はその人本人になります。新本籍地も転籍と同じように日本全国好きなところを選べます。
 一度分籍すると元の親の戸籍に戻ることはできません。これは、分籍だけでなく、婚姻で自分が筆頭者になった人も、たとえ離婚したからといって親の戸籍に戻れないのと一緒です。

 分籍しても、それは単に戸籍を分けるだけですので、氏が変わるとか、親との縁が切れるということはありませんし、親から独立したということにもなりませんし、自立したことにもなりません。戸籍法上の両親との関係は全然希薄にはなりません。「自立」と「分籍」はまったく関係ありません。大人になったということでもありません。兄弟と縁を切ることにもなりません。親兄弟(祖父母などもすべて)との関係は、分籍してもしなくてもそのまま何も変わりません。
 また、相続権を失うわけでもありません。相続と分籍は全く関係がないので、分籍によって相続の関係に変化が生じることは一切ないのです。身分関係すべてにわたってまったく影響がないです。本当に何も変わらないのです。変わるのは、分籍した本人の「本籍」と「筆頭者」だけです。分籍すると、本人が筆頭者になるわけですが、筆頭者になったからといって何か他に影響することは、通常あり得ません。
 
納税、家族手当、住宅手当、扶養控除、年金、国民健康保険、社会保険、就職、入学、国家試験、借金返済、その他すべて、分籍とは関係ありません。

 ただ、世の中広いですから、たとえば「筆頭者でなければ入社することができない」という会社があるかもしれません。その会社に入社するためには筆頭者にならなければならないので、分籍するという方法が考えられますが、通常、そういう会社はないと思いますので、上記のような理由から分籍をしようと考えている人にとっては、分籍はメリットもなければデメリットもないです。実質的に何も変化していないのですから。

 いや、デメリットはあるかもしれません。分籍すると、分籍した本人が筆頭者になるわけで、筆頭者というと結婚している人、結婚したことがある人、あるいは子供を産んだことがある人が圧倒的に多いことから、そう想像されてしまう可能性もあります。まぁ、だからどうしたというようなことかもしれませんが、気にする人は気にするでしょう。
 そう考えるとメリットとしては、逆にまだ結婚していないのに、結婚したことがある(子供を産んだことがある)と思われたい人にとっては、分籍することによって筆頭者になれるので、そう思われる可能性もないとはいえません。どちらにしてもなんか虚しいですね。

 このように分籍自体は、あまり意味のない届出ですが、分籍は、戸籍に対する古い考え方というか、上記のような理由と戸籍が何かしら関係しているのではないかというように戸籍制度を必要以上に重んじているというか、あるいはどちらかというと戸籍に興味がある人が届出する場合が多い気がするんです。

  

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 世の中、いろいろな人がいるもので、分籍したことによって「自立する」っていうことを(勝手に?)実感して、とてもすがすがく晴れやかな気分になったという人もいるようです。大人になったと実感して感激したのでしょう。これ、ウソのようなホントの話みたいです。その人がどう感じようと自由なので、とやかくいう筋合いはありませんが、それほどまでに戸籍に「思い入れ」がある人は、現代社会ではやっぱり珍しいと思います。というか、実際に何も変わっていないのにそういう気分になれるというのはある意味で幸せなことで、私なんかその人がちょっぴりうらやましかったです。

 ホントに勝手な思い込みですが、それでも幸せな気分を味わえるということは悪いことではありませんから、そういう気分だけでも味わいたい人にはお勧めの届出です。ただし、そういう気分になれるという補償はどこにもありませんよ。よく考えてからでも遅くはないです。

 「婚姻」「離婚」「養子縁組」「認知」「出生」「死亡」「転籍」など、戸籍の届出は、届出する側がその届出の意味をわかって届出するのに対して、分籍届は、分籍の意味がわからなくて届出してしまうケースも多いのではないでしょうか。分籍の手続は、転籍と同じように簡単なものです。分籍するときに、その理由を明らかにする必要もありません。こちらとすれば、添付書類があり正式に届けられたものは受理してしまいます。後になって「なーんだ、何にも変わらないじゃないか」と言っても遅いです。初めにも言いましたが、分籍後はもとの戸籍にもどることはできませんから、そこだけ注意して下さい。
 「分籍した時に、そんな説明聞いてなかったぞ」という苦情が聞こえてきそうです。

 ただ、すべての分籍が意味のないものというわけではないのです。それなら分籍という制度そのものの価値がありません。分籍が意味のあるケースとして、筆頭者もその配偶者も除籍になっていて、その戸籍に残っている人が本籍を移したいという場合は、転籍はできませんから(転籍の届出人は、筆頭者と配偶者)、その残っている人が本籍を移したい時は、分籍すれば本籍を移すことが可能になるのです。
 また、本人は本籍を変更したいのに、親はどうしても本籍を動かしたくないという時、本人だけ分籍して本籍を移すということも可能ですし、逆に、分籍した本人以外の人が転籍するということも可能です。
 そして、家庭裁判所の許可をとって氏を変更したいというとき、氏の変更はその戸籍に入っている全員になってしまいますので、氏の変更をしたいのは全員ではないという場合、分籍することによって、分籍した人だけが氏の変更をしたりとか、分籍した人を除いて氏の変更をしたりすることができます
(裁判所で許可されれば)
 またまた、親の戸籍には婚姻相手の氏名の記載を避けたいなど、人にはそれぞれ事情がありますから、「それなら分籍しか手はない」という人もいることでしょう。手続き自体は転籍と同じように簡単なものです。上記のとおり、手続きする時に、分籍する理由をなどを明らかにする必要はありません。

 届出用紙に必要事項を記入して戸籍謄本を添附して届け出るだけです。届出用紙を見ればわかるとおり、記入するのは、分籍する本人の「氏名」「生年月日」「住所」「世帯主」「本籍」「筆頭者」「新本籍地」「父母の氏名とその続柄」だけです。最後に署名して印鑑を押してできあがり。印鑑は認め印で大丈夫です。

 転籍届と同じように、今までの戸籍には、いつどこへ新本籍地を定めたのかが記載され、新戸籍にはいつどこから分籍してきたのかが記載されます。
 突然ですが、もしこれらの記載がなかったらどうなるでしょうか。考えただけでゾッとします。ありえない話ですね。

  

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 分籍届の届出人は、分籍しようとする本人なので、子供が20歳を過ぎているからといって、親が勝手に子供の分籍をすることはできません。子供の代わりに役所に手続に行くことはできますが、届出人の欄は子供本人の署名と押印が必要です。
 これは、婚姻届なんかと一緒です。まだ結婚したくないという子供の婚姻届を親が勝手に出すことはできないですから、そう考えればわかりやすいですね。
 親もそうですし、兄弟でもそうです。弟とは縁を切りたい、弟の籍を抜いてしまいたいということで、兄が弟の分籍届を届け出ることもできません。分籍も婚姻も、分籍する人、婚姻する人が、本人の意思で自ら届け出るものなのです。

  

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 「分籍」を広い意味で考えると「戸籍を分ける」ということになり、たとえば、婚姻のとき、親の戸籍から抜けて夫婦2人で新しい戸籍を作った場合に、婚姻した2人は親の戸籍から分かれたことになります。また、離婚のときは、筆頭者ではない人が今までの戸籍から分かれることになります。でも、戸籍の世界では婚姻や離婚で戸籍が分かれたことを「分籍」とはいいません。
 「婚姻」はあくまで「婚姻」で、「離婚」は「離婚」です。婚姻届や離婚届によって結果として戸籍が分かれただけで、メインは「婚姻」であり「離婚」なわけです。
 このページで言うところの「分籍」は、分籍(戸籍を分ける)そのものがメインで、分籍届によって、当然ながらその結果として戸籍が分かれるのです。

 この「分籍」だけでなく、「入籍」「除籍」なども、国語的に考えると意味がくいちがってしまう場合があります。日本語って難しい?!

   

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