第1章 はじめに

 

 近年の医療技術の進歩に伴い小児白血病は骨髄移植という方法で治癒の可能性のある病気になってきた。しかしそこで新たな問題が起きてくる。そのように医療技術は進歩しても、患児・家族を取り巻く社会・環境・制度はそうした進歩に沿っては、都合良く順次に変わっていかないのである。

 骨髄移植は高度医療を行う数少ない特定機能病院でしか受けることができない。そのために、患児・家族は遠隔地から治療のために長期間にわたってやってくる。治療を受けることができる病院では、基準看護のために家族は付き添いをして泊まることができない。付き添うことができたとしても家族用のベッドがあるわけではなく、ソファーで寝たり患児の横で床に新聞などを敷くなどして寝ることしかできない。そのため長期の付き添いは家族にとって心理的にも身体的にも大変負担になる。そのため遠隔地から来た家族は、患児が入院中の滞在場所を探さなくてはならない。滞在場所として知人や親戚の家で間借りできればいいが、そうした知人が都合良くいるわけでない。多くの家族は安いビジネスホテルやウィークリーマンション、アパートなどを借りて生活するしかない。遠隔地から患児を連れてやってきた家族は、不慣れな土地においてどこに安いビジネスホテルがあるのか判るはずもなく、アパートを借りることになれば家具なども揃えなくてはならなる。付き添いによる二重生活の経済的問題、実家に残してきた患児の兄弟の養育環境の問題、面会時間が終わりホテルに帰る母親は、部屋で患児の状態を悪い方向に考えてしまう。身近に相談者もいないために母親の孤独による不安などの精神的問題や、もし患児に外泊許可がでてもゆっくりと過ごせる場所がないなどの問題がでてくる。

 その問題の解決策の一つとして、遠隔地から治療に来た患児と家族のための滞在施設がある。本論文では、米国で作られて広く人々に知られている難病疾患児付き添い家族滞在施設がマクドナルドハウスと呼ばれているので、総称としてマクドナルドハウスを使う。そこでは、同じ病気と闘う子供を持つ親同士が、情報交換をしたり励まし合ったり相談し合うことができる。そして付き添い家族の経済的負担、精神負担を軽減し、患児と家族が安心して治療に専念できるようになる場所である。日本ではボランティア団体などが篤志家や企業から募金を募り、資金を得て、病院近くのアパートを安い家賃で借り上げている。それを遠隔地から来た家族に1日千円程度で貸している。患児には家族と一緒に過ごすことが大切である。外泊許可が出たときに、マクドナルドハウスを利用し患児と家族が一緒にいることができる。そして入院中は病院食しか食べていなかったところが、マクドナルドハウスでは母親の手料理を食べることができたり、母親の隣で一緒に寝ることができる。そこは我が家にいるように過ごせる場所である。また外来治療の許可が出たときには自宅のように滞在しながら通院できるのである。

  私はマクドナルドハウスの設立過程に関わっていた医療ソーシャルワーカーや、ボランティアの方などから話を聞いた。その話の中で宿泊施設は付き添い家族同士がお互いに自立し、成長することができる場所であることを発見した。そしてマクドナルドハウスにはセルフヘルプ機能があり、その機能を医療ソーシャルワーカーが支えていることを確信した。そこで、マクドナルドハウスを介し、医療ソーシャルワーカーの活動の目的と内容、そして専門性について、分析したいと考える。