(EARLY AUTUMN )     November 11, 2006 
   

ストーリー
 離婚した夫から息子を取り戻してほしいと母親に依頼される。連れ戻してから3ヶ月後、再び母親から、一緒にいて、自分と息子ポールを守って欲しいと依頼される。元夫が雇った二人組がポールを奪いに家に侵入したが失敗。次は母親が誘拐される。母親を助け出し、テレビしか興味のないポールを自立させる。


初登場する、シリーズ中の重要人物
 パティ・ジャコミン(Patty Giacomin)・・・ポールの母親、『晩秋(第18作)』にも登場する。
 ポール・ジャコミン(Paul Giacomin)・・・『拡がる環(第10作)』『告別(第11作)』『キャッツキルの鷲(第12作)』『晩秋(第18作)』『悪党(第24作)』『真相(第30作)』にも登場する。
 スペンサーのオフィスの向かいのビルの広告代理店に勤める女性(a young black-haired woman in high-waisted gray trousers)


初秋・メモ

 Name's Spenser with an S, like the poet. I'm in the Boston book, under Tough.
 「名前はスペンサー、詩人のスペンサーと同じserのサー。ボストンの電話帳に載っている。“タフ”のページだ。」

 1981年発表のシリーズ7作目『初秋』は、『ユダの山羊(第5作)』から3年だから、1979年の設定。

 4作目の『約束の地』から使って来た、マサチューセッツ・アベニューとボイルストン・ストリートの角にあったスペンサーのオフィスは、都市再開発により、バークリー・ストリートとボイルストン・ストリートの角に引っ越した。今度は銀行の2階、向かいのビルには広告代理店。
スペンサーのオフィスからバークリー・ストリートを半ブロック行けばブルックス・ブラザーズがあり、その向かいにボンウィット・テラーが見える。『晩秋(第18作)』によれば、2ブロック先にはボストン警察署。
実際に、バークリーとボイルストンの角に CITIZENS BANK という銀行が存在する。この建物の2階でパーカーは以前働いていたことがあったらしい。広告代理店のある場所に立つビルの1、2階は現在 FAOシュウォルツの売場となっている。
ボンウィット・テラーは現在ルイス・ボストン( LouisBoston )に変わっている。

 前作の『レイチェル・ウォレスを捜せ』で1日200ドルになったのに、今回、ポールとの会話で、100ドルを1日分の支払いと言っている。

 今回は、仕事の依頼者に対する態度が良いとは言えない。引き受ける際、「あまり楽しそうな仕事には思えない。」と言っているし、アイスホッケーのゴールキーパーの名前を知らなかった、初対面の依頼人が「スポーツのことは得意じゃないの。」と言ったのに対して、「きちんと育てられなかったということだ。」と言うのはユーモアを超えている。

 途中で、ホークの手助けを必要として、スペンサーはホークに200ドル請求される。その200ドルの大半は、スーザンの家にいく時に買ったシャンペインとビールに消えた。買ったシャンペインはテタンジェ(ブラン・ド・ブラン)。1本45ドルを3本、そのうちの1本は車の中で飲んでいる。ビールはスペンサー用で、Beck's。スペンサーはホークに言われる。「お前にシャンペインはもったいない。お前はビールを飲むために生まれ、ビールを飲んで死んでいくんだ。」
"You born beer, you gonna die beer."

 スペンサーは、ビールをグラスに移して飲むより、直接飲むのを好んでいる。

 最後にポールと飲むのがモエ・エ・シャンドンのシャンペイン。

 スーザンとNBAの試合を見に行った。『失投(第3作)』の時のブレンダ・ローリングと違って、スーザンは退屈している。そのブレンダから結婚式の招待状が届く。しばらくスペンサーの視線は招待状から離れなかった。

 ポールを連れ戻した時、自分はボーイフレンドと夕食に出かけるからと、ポールを食事に連れて行ってくれないかと頼まれる。承諾するが、差し出された20ドルは受け取らなかった。その理由が、「あなたは、お願いがあるのと言ったのであって、雇うとは言わなかった。」

 母親から依頼されて、ポールを預かるが、母親が連れに来た時、行きたがらないポールを渡さなかったことで怒らせ、これに関しては無報酬となった。

 預かっている間に、スペンサーはポールに大工仕事や料理、ボクシングを教える。スペンサーの父親の仕事は大工だった。

 「お父さんは料理なんかしなかった。」
 「私の父はしたよ。」
 「お父さんは料理は女がするんだと言ってた。」
 「半分正しい。」
 「えっ?」
 「女もすれば、男もする。だから、君のお父さんの言ったことは、半分正しい。」
   "My father never cooked. " Paul said.
   "Mine did. " I said.
   "He said girls cook. "
   "He was half right, " I said.
   "Huh?"
   "Girls cook, so do boys. So do women, so do men. You know. He was only half right. "

 詩の一節を教える場面、
   "Only when love and need are one, you know?"
   "What's that mean?" he said.
   "It's a poem, I'll let you read it after supper."
この詩は、『失投』の献呈の辞の後にも出てくる、ロバート・フロストの詩の一節
   Only love and need are one,
   And the work is play for mortal stakes,
   In the deed ever really done
   For Heaven and the future's sakes.
失投』の原題 "MORTAL STAKES" はこの詩から。

 メイン州の湖の近くにポールと建てたキャビンは、5月に始まり、秋に完成した。

 ダンキン・ドーナツに夢中なんだ、と言って、スペンサーはポールにドーナツを買いに行かせた。ポールが自分用に買って来たボストン・クリーム・ドーナツにスペンサーの感想は、disgusting 。

 スペンサーの乗っていたシボレー.コンバーチブルは12万マイル走ってお釈迦になった( bought the farm )ので、スーザンのMGを使っている。スーザンはフォード・ブロンコを買った。このブロンコもスペンサーは使っている。
ホークの車はシルバーグレイのジャガー XJ 12。

 Chapter 13で、ポールを預かることを承諾する時にスペンサーが言う、
"He ain't heavy. He's my brother." これは、昔、レコードの時代、オズモンズの45回転EP『ワン・バッド・アップル』B面の曲のタイトルがこれだった。

 Chapter 14で、スーザンがスペンサーに、"You ain't seen nothing yet." 「まだ序の口よ」(菊池光訳)
このセリフは、ジャズ・シンガーのアル・ジョルスンのセリフ "You ain't heard nothin' yet."「お楽しみはこれからだ。」 の引用。

Spenser the Corrector

 "You unnerstand?" と言われて。
"Understand, Harry. With a D. Un-der-stand. Watch my lips." (Chapter 25)

IT'S TOUGH TO BE A TRANSLATOR:

 1)「誰かが言ったように、歌も踊りもできないからだ」(第4章、菊池光氏訳)
"Like the man said, because I can't sing or dance."(原文)
映画「ロッキー」でロッキーがエイドリアンに言った台詞。定冠詞の the もあるし、「ロッキーが言ってたように、歌も踊りもできないからだ」。

   Adrian : Why do you wanna fight?
   Rocky : 'Cause I can't dance or sing.

 2)「あら、そう、禁欲期間が長すぎたので、自分の遺骨の処分をしてもらいにきたのかと思ったわ」(第23章、菊池光氏訳)
"Oh, really. I thought perhaps you'd been celibrate too long and stopped by to get your ashes hauled."
get one's ashes hauled というイディオムをそのまま英語にすると、このような訳になり、読者も困ってしまう。

    
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