lester young

「A PORTRAIT OF LESTER YOUNG 1936−1940」(CBS/SONY 20AP 1448)
LESTER YOUNG

 絶頂期の吹き込みを集めたレスター・ヤングの作品集。なにしろジャケットの絵が大好きなので、こればっかりはLPで持ってるしかないなー。どの曲も、レスター・ヤングの流れるように巧みで、歌心とウィットにあふれ、トリッキーなアイデアにも満ち、かつ、くつろぎとドライヴ感をあわせもつ、信じられないほどの高みに達したすばらしい演奏が聴ける。音が小さいとよくいわれているが、これぐらい芯があって楽器が鳴っていたら、おそらく今の録音技術で録音したら、かなりしっかりした音に聞こえると思われる。これだけの管楽器が一斉に吹いており、マイクも1本〜数本しかなかったと思われるような録音で、くっきりと彼の音は轟いているからだ。劇場にマイクがなかった、あるいは少なかったような時代、ビッグバンドのなかではっきり自分の音を主張するためには、今からは考えられないぐらいのビッグトーンで吹かなければならなかっただろうし、コールマン・ホーキンスやベン・ウエブスター、ハリー・カーネイ……といった人々はその「でかい音」自体を売り物にしていたのだろうが、レスターの音の大きさは、たぶん今だったら「普通」だったのではないかと思う。小さい小さいって言い過ぎなんですよ、みんな。それはホーキンスとかと比較しての話だからな。とにかく全16曲、レスターに関しては悪い曲はゼロ。どれも名演ばかり。しかも、ほかのメンバーも名手ぞろいで泣ける。A−1の「シューシャインボーイ」のソロ(なんと初録音! 天才!)、A−4の「レディー・ビー・グッド」やA−7「フェン・ユー・アー・スマイリング」などでのソロなどを聴くと、知ってるフレーズがあちこちで出てきて、ああ、こういったフレーズの開発者はどれもレスター・ヤングだったんだなあと納得する。コールマン・ホーキンスだと、あんまりそういう感じはしないもんね。つまり、アドリブを「フレーズの連続」としてとらえると、レスターの偉大さがわかるというもんです。ジミー・ラッシングやビリー・ホリディの歌も聴けてお得。B面はカウント・ベイシー・オーケストラでのフィーチュアリング・ソロイストとしての吹き込み。たとえばB−1の「タクシー・ウォー・ダンス」などは冒頭いきなりテーマもなにもなしにレスターのソロがフィーチュアされて、そのあとアンサンブルが出てくるという趣向。ソロを分け合っているバディ・テイトと比較するとたしかに音は軽く、細いが、「小さい」とは思わんなあ。B−2は、珍しくバリトンの名手ジャック・ワシントン、リードアルトのアール・ウォーレン、そしてレスターとテイトとサックスセクション全員がソロをする。B−3「クラップ・ハンズ・ヒア・カムズ・チャーリー」やB−4「ティックル・トゥ」のレスターのドライヴしまくる豪快なソロは本当にかっこいい。これこそ「ブロウしてる」って感じです。B−7の「イージー・ダズ・イット」でのプレスのソロは、低音からはじめるトリッキーなフレーズを積み重ねるというアイデア勝負のもので、その低音の出し方がまた、なんともいい音色なのである。ベニー・ウォレスの先駆的ソロ……なんちゃって。あと、言わなきゃならないのは、バディ・テイトもすごくいいソロをしてるということで、しかも、テイトのソロもどっちかというとレスター・ヤングっぽいものになっているのは、影響されてるということか。ハーシャル・エヴァンスが抜けた(死去)とはいえ、テイトの参加はそれを補っており、この時期のベイシーオケが超充実しきっていたことがわかる。名盤。

「PRES ON KEYNOTE」(MERCURY EVER−1021)
LESTER YOUNG

 ジャケットがいいっすねー。このアルバムはずっと私の部屋に飾ってあるのです。A面がピアノにジョニー・ガルニエリ、ベースにスリム・アンド・スラムのスラム・スチュアートが入ったカルテット、B面はベイシーがピアノを弾いたカンサスシティ7という小編成による演奏ばかりなので、レスター・ヤングのロングソロがたっぷりと聴けてうれしい。ベイシーオケのものだと、いくらいいソロでもちょこっと出てくるだけだからな。昔からの愛聴盤だが、「プレス・オン・キーノート」といえばこの1曲目の「ジャスト・ユー・ジャスト・ミー」(2曲目は別テイク)で、このテーマの吹き方だけでもかっこいいよねー。ソロももちろん最高で、惚れ惚れする。「アイ・ネバー・ニュー」も、無伴奏のイントロからしてすばらしいし、ソロも独特のアイデアをソロの最中にうまく展開していく、というその鮮やかさ、大胆さには舌を巻かざるをえない。3曲目の「アフターヌーン・オブ・ア・ベイシー・アイト」ではホンキングも聴ける。カルテットなので、毎曲スラム・スチュアートのおなじみのアルコ+ハミングみたいなソロがフィーチュアされるのだが、これが嫌だというひともいるかもしれないが、私には邪魔になっているようには聞こえない。A面の演奏はとにかく全部名演。しかも、こうして聴くと、やっぱり音は太いし、大きいと思うけどなー。B面に入ると(じつはあんまりB面は聴いたことない。今回もじつに新鮮でした)いきなりこれはもうベイシーの世界観だ。B−1のレスターのソロは自由自在というか変幻自在というか、低音からはじまるトリッキーなフレーズをはじめ、やりたい放題。しかも、しっかりした構成になっている。B−2も、とにかくひとつのアイデアを即興的にしっかり発展させるやりかたで、一種のアクロバットなのだが、それがじつにうまくはまっていて、聴き惚れる。ラストのテーマでサビ前から出てくるところなどもかーっこいい! B−3のソロもピアノのあとに出てきてからはぐんぐん凄みを増していくし、4曲目のソロもさまざまなアイデアが突っ込まれていて、見事の一言。ついでながらバック・クレイトンもじつにうまい。このころはシンプルでかっこよく、ほんといい。というわけで、これも名盤ですなー。

「LESTER YOUNG AND THE KANSAS CITY 6」(COMMODORE RECORDS GXC3145)
LESTER YOUNG

 このアルバムはレスターのアルバムとしてははじめて買ったもので、大学生のときだ。なにがよいのか最初はさっぱりわからず、そういうときの常として、「しつこく聴く」ということを毎日試みているうちに、なんとなく面白さがわかってきた。今でも(とくにA面)はだいたい覚えているなあ。レスター・ヤングの良さがいまひとつ最初はぴんとこなかったわけは、おそらく本作に入ってる演奏が、スモールコンボとはいえ、3管編成なのでレスターのソロスペースは短く、なんとなく聞き流してしまうためだと思う。「プレス・オン・キーノート」のカルテットとかなら、ひとりでかなりのロングソロをしている曲ばかりなので、さすがに私でも「これはすごい」と気が付いただろう。というわけで、面白さがわかるまでに時間はかかったものの、おかげでこのアルバムに親しむことができてよかった。A面は「カウントレス・ブルース」という曲が入っていることでもわかるように、カウント・ベイシーのいないベイシーコンボで、つまりピアノレスである。その分、フレディ・グリーンのギターが活躍しており、各ソロイストのバッキングでも重要なコードワークを行っている(なお、ギターソロも入っているが、これはトロンボーンのエディ・ダーラムのエレキギター)。しかも、「ゼム・ゼア・アイズ」では歌も歌っていて、これがめちゃめちゃうまい。肝心のレスターはどうかというと、さっきも書いたようにソロスペースが短いのと、クラリネットを吹いている曲が多いのだが、このクラリネットがものすごくいい味を出しているのだ。レスターは晩年のヴァーヴ盤でもクラを吹いており、最期まで愛着を持っていたようだが、このころのレスターのクラリネットは名手というにふさわしい技術と歌心があってすばらしい。一見素朴な感じだが、テクをひけらかさないだけで、じつはテクニックもちゃんとある。A面の最後に入ってる「ベギン・ザ・デヴィル」というブルースはいかにもカンサスシティのブルースといった雰囲気で、あの「カンサスシティジャズの侍たち」の全編を通して感じられる空気がここにもあって最高です。B面はフレディのギターが抜けて、ジョー・ブシュキンのピアノが入るが、おんなじような雰囲気。ただし、年代はA面の6年後でありバップ全盛のころの吹き込みだが、リラックスした演奏ばかりで美味しい。レスターのテナーはまったく快調そのもの。B−4のトリッキーなフレーズなど、思わず耳をそばだてる効果がある。たいしたおっさんやで、こいつは。カンサスシティ的なリフの曲が多いが、3管でビッグバンドっぽい迫力を出している。B−5と6は「アイ・ガット・リズム」で、レスターはテーマも吹かず無伴奏からいきなり奔放なアドリブを吹きまくり、きっとライヴではこういう風に一晩中吹きまくってたんだろうなと思わせる。ほかのメンバーもやや荒いが、魅力的な演奏を繰り広げていて楽しい。結局テーマは出てこない。B−7,8は「4時のドラッグ」というなんだかヤバそうな曲名。トロンボーンがワンホーンで奏でるテーマ(というかアドリブ)は物憂げで、ブルージー。ピアノソロを挟んでこれまたダルい感じのレスターのソロが現れる。ええ感じやなあ。バラードのようでブルースで……。これはつまりテーマなしのスローブルースなのだが、こういったアンニュイな表現はいかにもカンサスシティの深夜の酒場で煙草の煙と非合法(?)ウイスキーの匂いのなかで奏でられているようですばらしいです。