yoshinori yanagawa

「TEXTURE AND FIGURE ’91」(ART UNION RECORDS ART CD−29)
YOSHINORI YANAGAWA

 非常に期待して聴いたのだが、最初の出だしあたりは「おお、これは……」と思ったが、うーん……そのあと、なぜか心が躍らない。こういう音は好きなはずなのだが、なぜだろう。アルトの音は軽いが、よく鳴っており、縦横無尽に吹きまくっている。ちょっと梅津さんを思わせる感じで、けっして嫌いではない、というか好きなはずの音なのに、どういうわけか飽きてしまう。多彩なフレーズも、フリーキーな高音も、濁った音も、フラッタータンギングや複音奏法も、澄んだ音も……なにもかも含めて、予定調和に聞こえるのです。このアルバム一枚で判断するのは危険だし、よくないとは思うが、少なくともこの盤を聴くかぎりでは、古いフリージャズの文脈というか構造にとらわれていて、なにか新しいものを作ろうという意欲を感じなかった。そういうものが伝わってくる演奏は、どんなにつたなくてもわくわくするものだが、このひとはある意味「うますぎる」ような気がする。うますぎて、するするっと耳から落ちていく。きっとフリージャズを知り尽くしているのだろうな、このひと。すいません。私にはあいませんでした。でも、ほかのアルバムや、とくに生で一度聴いてみたいとは強く思った。俺の耳、おかしいんかなあ(ときどきそう思う)。

「邪神不死」(極音舎GO−5)
柳川芳命&早川大

 ちょっと見るとデュオのようだが、じつはライヴの場で早川大という書家のかたが「書」を書き、それを見ながら柳川芳命さんがアルトで即興演奏を行った、というものらしい。つまり、音としてはアルトの音だけなので、CDを聴いているものにはアルトの無伴奏ソロということなる。CD帯に書かれた文章の末尾「聖なる死への悦楽と痙攣の瞬間」という文言は、何度読んでもよくわからない。まず、聴いて感じるのは音色が美しく、芯のあるすばらしい音の持ち主だということだ。演奏は、高音部に激しいビブラートをかけたり、音を強く濁らせたりといった柳川氏の独特の奏法が多く聴かれるが、全体として、音をどう響かせるか、ということにかなりの神経を使っているようだ。そして、その響かせ方がリアルにとらえられた好録音なので、非常に迫力はある。一時間にわたるアルトソロなので、注意深く個々の場面をみれば、さまざまなバリエーションを繰り出していて、おそらく同じことは二度としていないと思うが、アブストラクトなフレージングがほとんどなので、ちょっと単調に思える部分もある。そして、ほぼ全編が全力投球で激しくアルトを鳴らし続けているので(ほんの少しだけピアニシモの箇所もあるのだが)、やってるほうもしんどいだろうが、聴いているほうもへばってくる。緊張感があまりにずーっと持続するというのもたいへんで、たまには力の抜けたところもないと、よほど体調のいいときでないと、向き合って聴くのはたいへんである。それにしても、ド迫力のプレイです。