mette rasmussen

「ALL THE GHOSTS AT ONCE」(RELATIVE PITCH RECORDS RPR1037)
METTE RASMUSSEN CHRIS CORSANO DUO

 先日このふたりのデュオを生で観て、ぶっとばされた。感動した。帰ってからも寝られなかったぐらい興奮した。クリス・コルサノはいろんなCDで聴いていて予備知識があったが、メテ・ラスムセンはまったくなんの情報もなく、女性アルト奏者でユリエ・ケアと同じくデンマーク出身ということしか知らんかったが、いやー、びっくり仰天でした。音がとにかく凄いし、アルトが「轟く」という感じで鳴り響いている。演奏のボキャブラリーがめちゃくちゃ多く、そのひとつひとつは、ああ、これ〇〇がやってたなあ、とかいうものだったりするのだが、それらを集大成的にとっかえひっかえ並べ立てて次々途切れなく出してくるその凄さは筆舌に尽くしがたい。マウスピースを外して、ネックに直接唇をつける、マウスピースだけで吹く、スラップタンギング、フラッタータンギング、フラジオ、オーバートーン、マルチフォニックス、極端なビブラート、太股にベルを押しつけて吹く、楽器のベルのなかにペットボトルや缶コーヒーの缶などを入れる、タンバリンをベルにかぶせて吹く……などなどなど。マウスピースも演奏中にラバーからメタルに換えたり、また戻したりする(どちらも古いセルマーらしい)。微細な音からどでかい音まで自在に操れるし、空間を作り出すのがうまいし、若いけどこういう即興演奏の「手練れ」という感じがびんびん伝わってくる。私が観た翌日のピットインではジム・オルークと坂田明がファーストセットの頭から加わり、全編大音量のノイズミュージックだったそうだし、こないだ見たメールスの実況でもそういうアンプリファイアドした大音量でのノイズを吹きまくる……という側面があることも知ってはいるのだが、やはり本作におけるような、このひとのすばらしい生音が味わえるアコースティックなセッティングのほうが好みである。たぶんほかにもいろいろな顔を持っているのだろう。楽しみ過ぎる。で、本作だが、めちゃくちゃ良い。すばらしい。近頃聴いたなかでは最良のフリーインプロヴァイズドミュージックだと思う。だが……あのライヴを体験したあとで聞くと、やはり、このふたりの凄さは音盤には納まりきらないのだなあとも思った。コルサノも、いろいろ聞いていたつもりで凄いドラマーやなあとは思っていたのだが、実際見るとめちゃくちゃ凄すぎて唖然呆然として口がふさがらなかったもんなあ。とにかく超バカテクで超クレージーで超過激で、しかもダイナミクスや「間」の重要性をよく心得まくっているふたりなのである。本作は傑作だと思うが、ぜひ生で観てほしい、というか俺が観たいと思う本当に凄いデュオ「TO THE ANIMAL KINGDOM」(TROST TR167)
METTE RASMUSSEN TASHI DORJI TYLER DAMON

 ブータン出身のギタリストTASHI DORJI(読み方さっぱりわからん。タシ・ドルジ?)とドラムのタイラー・デイモンはユニット的によく一緒にやっているっぽいが、そこにメテ・ラスムッセンが加わった即興。カナダでのライヴらしい。ギターはかなり個性の強いひとで、ガシャガシャ掻き鳴らし、ノイズをぶちまけ、リズムを怒涛のように発信する奏法はめちゃくちゃ存在感がある。生地ブータンの音楽からの影響もあるらしいが、聴いてみるとまさにそんな感じで民族音楽的なソロが随所に出てきて、これはめちゃくちゃ面白い。ドラムも同様に個性の塊で、ひたすら前を向いて疾走する感じ。爆音で叩きまくる演奏も間をいかしたプレイもかっこいい。このふたりのデュオチームは、たとえばデイヴ・レンピスともアルバムを作っているらしいが聴いたことはない。この、完全にできあがった感のあるデュオに対して、メテ・ラスムッセンがどう加わっていくのかが興味深いが、ラスムッセンは、ここではアコースティックなプレイに専念しており、思い切ったアプローチでぐいぐいと同化していく。2曲目の、緊密なデュエットに割り込むように参加して、次第に溶け込み、途中から3者一体となって互いに刺激しあいながら次のステージへと昂揚していく様は、まるで3つの水柱が絡まりあうように上空へ立ち上がっていくようで、非常にエキサイティングであり、感動的だ。狂ったように全身全霊をかけて楽器を吹き、叩き、掻き鳴らす三人のエネルギーが同調した瞬間から最後まで、あれよあれよという感じでパワーに満ちた即興が展開していく。これはかっこいい。2曲目の途中からはずっとクライマックスが続いているようなものだ。3曲目は間の多い感じの演奏だが、だんだん霧もみ状態に狂っていく。途中でリズムが消え、アルトの重音奏法とスラップタンギングによる無伴奏ソロで流れが変わる。そこにドラムとギターが微細な音で加わっていき、新しい流れがはじまるあたりのわくわく感はすばらしい。最後は余韻を残した叙情でしめくくられる。全体にタシ・ドルジのギターの個性がものすごくて、頭ひとつ抜けて引っ張っている、という印象だ。いやー、このギターには参ったぜよ。3人対等の作品かもしれないが、最初に名前の出ているメテ・ラスムッセンの項に入れた。傑作!
なのです。