louis jordan

「LOUIS JORDAN」(MCA RECORDS VIM−5604)
LOUIS JORDAN AND HIS TYMPANY FIVE

 私にとっての「神」のひとり、ルイ・ジョーダン。なぜ神かというと、その歌うワンフレーズワンフレーズが私にとって「教え」だから。大学のときにこのひとのこのアルバムに出会って以来、ずーーーーーーーーっと聴き続けてきた。フリージャズ一辺倒だった私が、アーネット・コブやイリノイ・ジャケー、カウント・ベイシーの音楽を知り、そこからブルースの重くて分厚い扉をあけるきっかけになったのがこのアルバムである。つまり私にとって、ジャンプブルースやホンカーの音楽は、ジャズとブルースの架け橋(?)になってくれたのだが、結局、今にいたるまで燦然と輝いているのは、ルイ・ジョーダンのこのデッカ吹き込みである。とにかく、全曲、すばらしい。一曲もしょうもない曲がない。一時は、「サタデイ・ナイト・フィッシュ・フライ」を一日でも聴かないとイライラするほど好きだったが、ほかの曲もどれもよい。ジャズファン、演歌ファン、クラシックファン、ヘビメタファン、フォークファン、ポップスファン、民謡ファン……とにかくあらゆる音楽のファンにルイ・ジョーダンの音楽を伝えたい。気に入らないひとがいるとは思えない。それぐらい誰にでもわかりやすく、楽しく、しかもディープな音楽なのだ。アメリカの下町の黒人が生み出した、世界一の音楽だ。こういう伝道師のような気持ちになるのも、ルイの音楽が「教え」だからだろうな。キリスト教だの仏教だの伝えるより、はるかにためになるジャンプの教えである。

「ROCKIN’AND JIVIN’1956/58 VOL.1 1956−57 THE COMPLETE MERCURY RECORDINGS」(BEAR FAMILY RECORDS BFX15201)
LOUIS JORDAN

 デッカを離れたルイ・ジョーダンがマーキュリーに残した音源を二枚にまとめたアルバムで、出たときは狂喜した。一枚目には、あのクインシー・ジョーンズがアレンジし、指揮をしたティンパニー・ファイヴのオーケストラ版(といっても5管だが)が聴ける。これは凄い演奏でありまして、私は学生のときにあるひとに聴かせてもらって狂喜し、どうしても入手したいと探していたけど見つからず、ある日、ついにコンプリートな形でベア・ファミリーからリイシューされてまたまた狂喜したという、すばらしい作品なのであります。曲は、デッカのヒットナンバーばかり。アレンジはクインシーだから言うことなし。メンバーも異常にすごくて、ミッキー・ベイカーのテケテケギターやサム・ザ・マン・テイラー(とバッド・ジョンソン)の重厚なブロウテナーがフィーチュアされて新鮮な驚きを得るし、ラッパがアーニー・ロイヤル、ボントロがクリーブランド、ベースがウェンデル・マーシャル、ドラムがチャーリー・パーシップ……という当時のジャズ系の一流スタジオミュージシャンが勢ぞろいしている。デッカの曲はどれも、元のアレンジを損なわないように配慮しながら、どれも新しい革袋に移されており、デッカ時代のものと比べると、アレンジのせいかメンバーのせいかはたまた時代のせいか、演奏に勢いがあってすごい。これは必聴。ただ、57年録音のコンボの曲はオーケストラものに比べるとおとなしめに聴こえてしまう。

「ROCKIN’AND JIVIN’1956/58 VOL.2 1957−58 THE COMPLETE MERCURY RECORDINGS」(BEAR FAMILY RECORDS BFX15207)
LOUIS JORDAN

 こちらも悪くはないが、だんだんルイ・ジョーダンっぽさが稀薄になっているような気もする。ブルースナンバーも自作ではなく「ガット・マイ・モージョ・ワーキン」や「ルート66」だったり、あとはジャズっぽいスタンダードを歌ったり……でも、歌い方やアルトのブロウはやっぱりええなあ、と思う。そんななかに混じるルイ・ジョーダンっぽいナンバーがうれしい。とはいえ、聴くべきは第一集のほうから。

「GO BLOW YOUR HORN」(SCORE RECORDS SLP−4007)
LOUIS JORDAN AND HIS TYMPANY FIVE

 学生のころ、たぶん、今はなき心斎橋の阪根楽器で買ったと思う。アラジン録音を集めたもので、ダサい、B級のジャケットだが、中身はめっさすばらしい。あまり知られていないのかもしれないが、デッカのものに勝るとも劣らぬ内容で、小気味よい演奏が詰まっている。呑気な印象のデッカにくらべ、畳みかけるような迫力のある感じのものが多く、リズム的にデッカよりも強化されているのかもしれない。どっちも好きだが、とくにA面はよく聴いた。一曲目の「イェー・イェー・ベイビー」からして、もうノリノリの演奏で、あー、買ってよかった、と思った。サックスでのインストスローブルースの極致である「ルイズ・ブルース」や楽しい「ファット・バック・アンド・コーン・リカー」など、デッカ盤のつぎにぜひとも聞くべきアルバム。

「COLE SLOW」(JUKE BOX LIL JB−605)
LOUIS JORDAN AND HIS TYMPANY FIVE 1947・52

 たぶんエアチェック。あまり知られていない曲も入っているのがいい。でも、ルイ・ジョーダンの場合、スタジオ録音もライヴもたいしてかわりはない。おそらく曲が短く、ソロも含めてだいたいルーティーンが決まっているからだろうと思うが、知らない曲が聞けるという楽しみはある。

「LOUIS JORDAN & FRIENDS」(MCL1807)
LOUIS JORDAN

 ルイ・ジョーダン晩年の、ビング・クロスビー、エラ・フィッツジェラルド、ルイ・アームストロングらと共演した、ジャズボーカルアルバム。もちろんこのアルバムでのルイは、本来の持ち味であるジャンプミュージックを演奏していないし、本領発揮にはほど遠いものではあるが、飄々としたボーカルデュエットはけっして悪くないし、ルイの芸風の広さ、深さがわかる。ときどき取り出して楽しむのには適している。でももちろん、過去の傑作ジャンプミュージックを全部聴いてからにしてほしいけど。

「LIVE!」(JSP RECORDS JSP3008)
LOUIS JORDAN

 ルイ・ジョーダン最晩年のカリフォルニアでのライヴ。亡くなる一年まえだが、私はルイ・ジョーダンに関してはめちゃくちゃ好きではあるが、晩年のサッチモとやってるやつとか、エイシズとやってるやつはどうでもいいと思っていた。やはりいちばん凄いのはデッカのヴィンテージ録音であって、あとはアラディンのやつとベアファミリーが復刻したマーキュリーのクインシー・ジョーンズが仕切ってて、ミッキー・ベイカーとかサム・テイラーが入ってるやつがあれば十分だと思っていたのだが、まあそれ以外のエアチェックとかもぼちぼち持ってはいる。でも、ほぼ聞くことはなく、普段聞くのは上記の3種類だ。しかし、このアルバムはルイ・ジョーダンが死ぬ1年弱まえのライヴで(1974年)、事実上のラストレコーディングだというのでただちに購入。そしたら、JSPの「ジャンプ・ウィズ・ジャイヴ」と内容一緒やないかい! だまされた! と思ったらなんとCDのレーベルがJSPだった。まあ、CDで持ってるのも悪くはないからいいんだけどね。というわけで久々に聴くことになったこの音源、とてもじゃないが一年以内に死ぬような感じはない。正直言って、これがデッカ時代のライヴだと言われてもまったく信じただろう。それぐらい声も張りがあって、アルトもでかい音でびゅんびゅん鳴っている。しかも、バンドがすばらしく、とくにテナーのアイヴィ・コックスとピアノのデューク・バレルは最高である。バンドがいいからルイもめちゃくちゃノリまくっていて、スウィングしジャンプしていて聴いているとついつい笑ってしまう。要するにブラック・アンド・ブルーのやつのライヴバージョンなわけで、メンバーも一緒だし、選曲も2曲ほどかぶっている。「レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール」にはじまり「エイント・ノーバディ・ヒア・バット・アス・チキンズ」と大ヒット曲が続く。ライヴでもいつも同じソロしかしないと揶揄されることもあるルイだがこの「レット・ザ……」ではものすごいロングソロをしていて、アルト奏者としての実力を存分に聴かせる。それに続くバレルのピアノも炸裂しまくっていてすばらしい。そして、テナーのコックスが太い音色でうねるようなノリのブルース魂爆発のソロをブロウしまくり、このあたりでもう涙腺ちょちょぎれそうになる。それぐらいかっこいい。このひとはジェファーソン・スターシップにもいたらしい。そうなのだ。このアルバムを聴く楽しみのひとつがこのテナーのアイヴィ・コックスなのだ。めちゃくちゃすごいテナーマンだと思う。つづく「エイント・ノーバディ……」は「やあっ!」の掛け声からはじまる。ルイのボーカルに絶妙の合いの手をいれるコックスがいいね。ルイのアルトソロもリフ主体に4コーラスを聴かせる。そのあとのピアノのホンキートンクぶりといったらないっすね。興奮しまくり。そしてコックスのテナーソロ。フレーズとフレーズを独特のつなぎかたで聴かせる。かなり個性的だが、一方で美味しいフレーズばかりでもある。ホンク、グロウル、スクリーム、倍テン……などブロウテナーの基本をしっかり押さえたすばらしい演奏。最後はルイ・ジョーダンがなにごとか叫んでいる。3曲目はスローブルースで「ハード・ヘッド・ワイフ」。ルイ・ジョーダンは歌わずに語る。トーキングブルースというかラップというか……全部は聞き取れないのだが、発音がはっきりしているのでなんとかわかる。途中でシャウトしてブルースになり、コックスのテナーも最高のオブリガードをつける。ジャンプはやっぱりストーリーだねえ。4曲目は「ヘルプ・ミー・メイク・イット・スルー・ザ・ナイト」という小唄(?)でボーカルはピアノのデューク・バレル。キャブ・キャロウェイというか、ちょっとジャイヴっぽい歌い方。コックスのテナーソロはめちゃくちゃ上手くて聞き惚れる。5曲目はこの時期のルイの重要レパートリーと思われる「アイ・ビリービン・イン・ミュージック」。いろんなひとがカバーしているが、ルイのバージョンは軽快でジャンピンで音楽への愛にあふれていてすばらしい。アルトソロも輝かしいし、ピアノもガンガン弾きまくるし、テナーもかっこいいフレーズをキメまくるし、それらのソロにルイが喜んでいるのが伝わってくるし、とにかく楽しい演奏。最後はバンドみんなで合唱。6曲目は「セント・ルイス・ブルース・ブギ」。アレンジが楽しい。なぜかアルトソロの出だしは「ブルース・ウォーク」になる。ルイ・ジョーダンが軽快で軽妙洒脱だが迫力もあるソロをかますと、ピアノも三連符を渾身の力で弾きまくり、テナーは熱いブロウを展開する。最後に出てくる歌詞はたぶん「セントルイスブルース」とは関係ないような気がする。アルトとテナーでリフを交互に吹き合って盛り上げるという宴会のような技で大団円。すばらしい。ルイのライヴ盤としては最上の一枚だと思う。しかも、ラストレコーディングとは信じられないよ。7曲目以降はマイティ・フリー・コモンズというトロンボーン〜ボーカルのひとのバンド。録音場所もロンドンでなんでここに収録されているのかよくわからない。じつはかなり上手いし、面白い(テナーのひとも上手い)のだが、アルバムとしての統一感は残念ながら相当損なわれたなあ。まあ、ええけど。ルイ・ジョーダンの部分に関しては大傑作です。

「I BELIEVE IN MUSIC」(EVIDENCE MUSIC ECD26006−2)
LOUIS JORDAN

 ブラック・アンド・ブルー原盤でルイの晩年の作品。ふたつのセッションから成り立っていて、テナーにアイヴィ・コックス、ピアノにデューク・バレルを擁した晩年のレギュラーバンドでの録音(悪いわけがない! 選曲的には往年のヒット曲も入ってる)と、シカゴブルースの超有名グループエイシズをバックにしたセッションである。タイトル曲はこの時期の十八番らしく、人生を音楽に捧げたルイがこの曲を歌うと、聴いている我々もぐっと来てしまう。イントロと途中のアルトソロもええなあ。「ビリーブ・イン……」もそうだが、つづく「エヴリ・ノック・イズ・ア・ブースト」というのはルイ・ジョーダン流のポップロックなのかな。そして、往年の大ヒット「カルドニア」(完全に「しゃべり」のための曲と化している)、「サタデイ・ナイト・フィッシュ・フライ}などのブギウギをやらせるとこのひとの独壇場だし(アレンジも強力になっている)、「イズ・ユー・イズ・オア・イズ・ユー……」とか「アイム・ゴナ・ムーブ……」などもすばらしい。このアルバムはスタジオ録音なので、この時期のライヴほどの奔放さはなく、アイヴィ・コックスに関してはライヴのほうが圧倒的にすばらしいのだが(本作は主役のルイが歌だけでなくほとんどのソロを吹いているので、コックスの出番が少ないのです)、ルイのレコードとして考えると、まとまりもよく、曲も粒ぞろいで、エイシズを聴けるというお得感もあって、名盤といえるのではないでしょうか。ルイのアルトソロも長尺で、音も艶やかでスピード感と張りがあってめちゃくちゃかっこいい。エイシズとの4曲は、ほんまにぶっつけ本番っぽいブルースオンリーのセッションで、正直言って、ルイのジャンプサウンドとシカゴのシャッフル王たちが合うわけがない、と私が勝手に思い込んでいたせいもあって、ずいぶんまえにレコードで聴いたときも、ふーん、という感想だったのだが、今聞くとびっくりするほどナイスマッチングで、やっぱり先入観というのは徹底的に捨てなきゃダメだと思った。やはりエイシズはさまざまに個性がちがうブルースマンのバックを職人的にこなしてきているから、その適応力はダテではないのだった。ルイス・マイヤーズのブルースギター(めちゃくちゃ上手い)が炸裂するインストを聴いていると、もしかしたら私のように本作を長いあいだ聴かず嫌いにしているひとがいるかもしれないけど、それはとてももったいないことだと言いたいです。ルイの即興演奏家としての技量も十分にわかる。結局、ルイは死ぬまでルイだったということと、ルイ・ジョーダンに駄作なし、ということにつきるのでは。