willis jackson

「WILLIS JACKSON WITH PAT MARTINO」(PRESTIGE PRCD−24161−2)
WILLIS JACKSON WITH PAT MARTINO

「JACKSON’S ACTION」と「LIVE ACTION」のカップリングお得盤。もともと同じ日のライヴ音源を2枚に分けて発売したものなので、こうして1枚にまとめてもとくに違和感はないはず。それにしても、ウィリス・ジャクソンがめちゃめちゃ好きで、こんなにもアルバムを持っているのに、一枚もレビューしていなかったとは。そして、はじめてのレビューがこのカップリングアルバムになるとは。でも、中身はすばらしいですよ。パット・マルティーノがギターという点だけがジャズファン的にはクローズアップされるが、オルガンのカール・ウィルソンというひともドラムのジョー・ハドリックというひともちゃんとバックアップしている。トランペットはこの時期のウィリス・ジャクソンの相方フランク・ロビンソン(ハイノートもばりばりだし、ソロもがんばってますよ)。基本的にはウィリス・ジャクソンの濁ったテナーの音さえ聞こえていればいい、という客相手なので、ほかのメンバーはとにかくウィリスのテナーをひたすら盛り立てる。それでいいのだ。かならずロッキンなブルースがあり、エロいバラードがあり(「アイム・ア・フール・ト・ウォンチュー」のいやらしさは素晴らしいとしか言いようがない)、ポップチューンがあり、ファンクというかジャズロック的な曲があり、スタンダードがあり……という、聴衆を絶対に楽しませるお手本のような選曲である。この2枚でも、たとえば「ジャイヴ・サンバ」とか「ハロー・ドーリー」「アニー・ローリー」……なんか聴きたいと思いませんか? ウィリス・ジャクソンは、テナーの狂人などと言われることもあるし、たしかにフリークトーンを連発したり、ダーティートーンをひたすらぶちかましたりすることも多いが(もちろんそこが好きなのだが)、じつはものすごくテクニックのあるひとで、よく聞くと流暢なフィンガリングとアーティキュレイションで自由自在に吹きまくっているのだ。サム・テイラーやキング・カーティスなどは、ビッグジェイやジョー・ヒューストン、フランク・カリーといった、ただひたすら暴力的にスクリームするホンカーとはまったくちがい、ものすごい技術力と音楽性を持ち、こんな具合にホンクすることぐらい朝飯前なので、完全な確信犯としての営業ホンカーなのだと思うが、そこがいいんです。上手いにこしたことはない! めちゃくちゃ上手くて、なおかつズブズブのブルースフィーリングにまみれたタフなテナーとしては最右翼なのが、このウィリス・ジャクソンだと思う。しかもフレージングの引き出しがものすごく多いので、ワンパターンに陥ったり、ソロがダレたりすることがない。よく出るストックフレーズのほか、引用フレーズも多彩だ(16分のフレーズなんかはだいたい同じことを吹いているような気もする)。ひとのアルバムは安直な造りに見えてもしっかりした演奏であることが多いし、がっかりすることはまずない。本作も、ライヴなのにどの曲も隅々にまで気持ちが行き届き、きっちり盛り上げてくれる。それに、(これはまあ個人的な話だが)こういったブルーステナー、R&Bテナー、ホンカー系はベルグラーセンを使うひとが多いが、ウィリス・ジャクソンはリンクメタルなのだ。リンクのメタルでこの濁った太い音! うれしいじゃあーりませんか。二枚目の「ブロイン・ライク・ヘル」という怖いタイトルの曲は、ようするに「フライング・ホーム」なのだが、このホンカー必修曲でウィリス・ジャクソンはジャケーのお鉢を奪う猛烈なブローを展開して凄い(基本的にはジャケーマナーだが、それをもっとエグい感じでテンション高く吹きまくる)。このソロをコピーすれば今日からあなたもセッションでスターになれます(そんな「フライング・ホーム」とかやるセッションがあれば、だが)。とにかくなんでもできるひとだが、シンプルなロッキンブルースをやらせればこのひとの右に出るものはいないような気がする。この時期のウィリスのステージをそのまんま収めたようなアルバム。お買い得! パット・マルティーノも数は少ないが、目を見張るようなすばらしいソロを弾いている(とくに「ゲイター・テイル」でのロングソロは驚きだ。これもギターのひとがコピーしたら今日からセッションでのブルースはもうばっちり、みたいなソロです。つづく「サテン・ドール」のソロもめちゃくちゃすごい)。「レベルが高くてイキのいいブロウテナーが聴きたければ、迷わずこいつ、ウィリス・ジャクソン!」という惹句を考えたが、いかがでしょうか。

「LIVE ON STAGE」(BLACK & BLUE BB957.2)
WILLIS JACKSON/RICHARD”GROOVE”HOLMES

 フランスでの1980年のライヴ。私は(何度も言うようだが)ウィリス・ジャクソンのファンだが、こうして聴くと、たしかに同じフレーズばかり連発しており(とくに16分の速吹きのときはほぼ一緒かも)、気になりはじめるとものすごーく気になるとは思うが、じつは私はあまりそういうことにはこだわらないのであって、だって、ウィリス・ジャクソンって即興演奏に命をかける……とかそういうのとは全然ちがったところで勝負しているテナー奏者ですからね。80年代という、すでにこういう音楽が「リバイバル」として評価されかけている時期にあって、本物中の本物が、ここまでタイトに引き締まった音、リズム、フレーズでブロウしてくれたら、ほかになにを要求することがあろう。多くのホンカーが晩年は音もリズムもフレーズも音程もよれよれになっていったなか、ウィリス・ジャクソンはたいしたものではないか(といっても、このライヴ時はまだ50歳なのだからあたりまえかもしれないけど。とにかくええ音、ぶっとい音、濁った音で、しかも下品ではない芯のあるしっかりした音でたくましく吹きまくるウィリス・ジャクソンの(ほぼ最後の)雄姿がここにとらえられている。正反対に、ほとんど息の音だけの「マイ・ワン……」も秀逸。もちろんコ・リーダーのリチャード・ホルムズも元気はつらつで、すばらしい演奏。ギターのスティーヴ・ジョルダーノ(と読むのか?)は根っからのジャズのひとらしくて、延々と速弾きを披露したり、リズムをずらしたり、アウトしたり……ということをするので、どうもこのコテコテのカルテットにはあわないような気がするが、最近もずっとオルガンと演ってるひとらしくて、よくわからん。このひとにとってはジャズオルガン+ウエス・モンゴメリー、もしくはパット・マルティーノ、ジョージ・ベンソン、ケニー・バレル的なものを考えているのかもしれない(ジャズギタリストとしては、よく歌うし、わかりやすいし、とても上手いと思うけどね)。「ザ・マン・アイ・ラヴ」のこの途中で速くなるアレンジは、たしかヴォン・フリーマンと2テナーでやってるライヴ盤でもやってたような気がする。ラストの「バー・ウォーズ」ではとにかく異常に盛り上がる。ブロウ! ゲイター・ブロウ! というわけで、ウィリス・ジャクソンファンなら買っても絶対損はしないアルバム。みんなでウィリス・ジャクソンの最後の雄姿を拝もう!