benny goodman

「AT CARNEGIE HALL−1938−COMPLETE」(SME RECORDS SRCS 9610〜1)
BENNY GOODMAN

名高いカーネギーホールのライヴだが、よくぞこんな音源が録音されていたものだ。個々の曲に印象を語っていくと、膨大になってしまうので、全体的なハナシにとどめるが、私はベニー・グッドマンのアルバムはこれと「プレイズ・フォー・フレッチャー・ヘンダーソン」しか(たぶん)持っていない。私のような門外漢にとってはそれで十分である。本作は、曲ごとに編成がかわったり、ゲストが加わったりと飽きさせない工夫もほどこされ、しかもどの演奏もほぼ完璧に近い完成度で驚く。というか、あまりに密度が濃くて、とうてい一度には聴き通せない。アンサンブルと即興の双方に力点が置かれ、ソロもグッドマンのテクニカルかつ歌心あふれるクラリネットを中心に、レスター・ヤング、ジョニー・ホッジス、ハリー・カーネイ……といった最高の奏者がつぎつぎとびっくりするぐらいすばらしいソロを披露する。それは、メンバーが豪華で、俺も負けてられない的な「負けじ魂」のような気持ちが少しは働いているからにちがいない。ジーン・クルーパのドラムの推進力もすごくて、このひとはきっと最盛期のベイシーオーケストラに入ってもぴったりはまっただろうと思う。スウィングジャズとしては異例の過激さ、過剰さがある演奏の連続だが、それをそうとは思わせないのがベニー・グッドマンの美学なのだろう。オブラートにたくみに包まれた猛毒である。こういう演奏を聴くと、ベニー・グッドマンのすかんぴんなクラリネット云々と感情のまま書き散らす評論家は信用できないなあと思う。ええやん、すくなくともこのアルバムは。