michael brecker

「LIVE IN HELSINI 1995」(RANDOM ACT RECORDS RAR1018CD)
UMO JAZZ ORCHESTRA WITH MICHAEL BRECKER

 だれがなんといっても傑作だ。みんな聴け! 言うことはそれしかない。でも、まあ一応中身について書いてみると、私はブレッカーはめちゃめちゃ好きだが(私が「ブレッカー」と書くとき、それはマイケルのことを示している。ランディではない)、87年のインパルスの「マイケル・ブレッカー」以降のリーダーアルバムは、たしかにすばらしいものが多くて(二枚目が一番好きかも)、メンバーもとびきりゴージャスだし、音楽性もぶっ飛んでるし、曲からなにから文句のつけようがないし、グラミーも取ったし……ではあるのだが、唯一物足りないのはブレッカーのソロ部分で、全体の音楽性に注意がいくあまりか、かつてのような人間とは思えないほどキレッキレのソロをぶちかまして、これは常人ではない! とか、頭がおかしい! とか、凄すぎる! とかスピーカーのまえで叫ぶ……という体験はなかなかできなかった。リーダー作だけでなく、ゲストでフィーチュアされる作品でも、いろいろ考えて吹いてるんだろうなあ的な演奏が多いように(私には)思えていた。なんというか「深み」が出てきたのである。私が「かつてのような」というのは、たとえばブレッカーブラザーズとかステップスとかオーレックスとかスリーカルテッツとかスピークウィズシングルボイスとか……ああいうやつのことで、それは若さがやらせた、深みのないオーバーブロウであって円熟期になったブレッカーはいつまでもそういうのじゃダメだから全体に気を配る音楽家へと成長したわけじゃよ、と言われたらハイそうですねと言うしかないのだが、どこかもやもやしたものが残っていたのです。ところが、1995年という時期に吹き込まれたこのビッグバンドアルバムで、ブレッカーはほぼ全曲でテーマを吹き、ソロを吹きまくっているが、そのソロがすべてキレッキレなのである。いやー、これは凄いなあ。UMOジャズオーケストラというオランダのバンドで、全員相当上手いプロフェッショナルなグループだが、アレンジもいいし、メンバーのやる気も凄くて、ブレッカーはそれに応えて、とにかく鳥肌ものの圧倒的な演奏を繰り広げている。ひゃー、こういうのを聴きたかったんだよなー。1曲目の「インヴィテイション」の冒頭のアレンジからして、もうたまらんなあと思うのだが、それに続くブレッカーのソロをちらっと聴いて、わしゃ涙涙。あの「スラング」も、かっこええビッグバンドジャズになっとるでー。「ニカズ・ドリーム」や「ナットビル」といった(かつてのボス)ホレス・シルヴァーがらみの曲もええなあ。「GINARE」という曲で、オランダの若いテナー奏者マニュエル・デュンカーというひととバトルをするのだが、ライナーでリーダーのRICH SHEMARIAが書いているように、「想像してほしい。あなたのアイドルがあなたの町に来て、テナーバトルをしなきゃならないのだ。デュンカーは怖かっただろうけど、見事にやりきったよ」的な状態だったようだ。その熱気も伝わってくる。いいライヴなのだ。2曲目でフィーチュアされるトランペットソロなど、ブレッカー以外のソロもよく、バンドの質の高さがよくわかる。リズムセクションもすごくいい。とにかくブレッカーファンは絶対聞き逃したらダメなアルバム。ジョー・ザヴィヌルの「ブラウンストリート」(だっけ?)を連想した。あれもよかったよなー。ライナーには、「リハのあいだずっとマイケルはマウスピースを調整していて、なにをしてるんですか、楽器がおかしいのですか、と問うと、いや、新しいマウスピースを手に入れたのでね、もっとダークな音色が出せないかと思って……と答えたので、どうしてですかと重ねてきくと、私はずっと、音がブライトすぎると批判されてきたからねえ、と答えた。なにを言うとるんですか! あなたはマイケル・ブレッカーなのに!と私は言った」というリーダーの文章が載っていて、なるほどと思った。音楽や楽器に誠実な、ええひとやったんやなあ。なお、ライナーにはランディ・ブレッカーやさっき触れたマニュエル・デュンカーの文章も載っていて、それらも感慨深い。ビッグバンドとしても、マイケル・ブレッカーの作品としても傑作。

「THE BOTTOM LINE ARCHIVE」(THE BOTTOM LINE RECORD COMPANY BFD/BLRCD011)
THE BRECKER BROTHERS

 ボトムラインでのライブ録音。ランディとマイケルのブレッカー兄弟に、ゲストとして3曲デヴィッド・サンボーンが加わっている。キーボードにドン・グロルニック、ギターはスティーヴ・カーン、ベースはウィル・リー、ドラムにクリス・パーカー、パーカッションにサミー・フィゲロアというひと。今にして思えば超豪華な顔ぶれだが、たぶん当時はみんな友達感覚だったんだろうなあ。ライヴとは思えないほどぴったりの驚愕のアンサンブルだが、このバンドはインストフュージョンバンドという顔以外にファンクバンドであり、豪華ホーンセクションのついた歌入りロックバンドであり……といったコマーシャルな成功を目指す側面もあり、そういう意味でもめちゃくちゃ楽しく、おもろいやろ、かっこええやろ、楽しんでや、どやっ、どやっ……とぐいぐい来る感じである。だから、ランディやマイケルの作る変態的でかっちょいい曲とそこでのエグいソロの数々だけに目を向けるのではなく、ボーカル曲やらなにやら全部丸ごと楽しむのが正しい聴き方だと思う。たしかに「ロックス」とか「ナイト・フライト」とかはかっこいいが、ほかもどれもこれも面白いよ。とはいえ、ドラムとのデュオで炸裂するブレッカーの強力なソロには目が点になるし、エフェクターをかけてのアグレッシヴなソロも凄い(途中でエフェクターを突然切るので、急に普通の音色になってびっくりする)。マイケルは曲のエンディングでハーモニクスを使ったギャーッという音を何度か出しているが、その運指を覚えたてで喜んでるのか? というわけで、ブレッカーブラザーズ好き(とくにマイケル好き)にはたまらん発掘でした。